双葉社文芸WEBマガジンカラフル

双葉社ホーム

ホラベンチャー! 竹内真


第 1 回


「いよう、リストラされたんだって?」
 百畳くらいありそうな座敷の片隅で、陽気な声をかけられた。
 洞山真作はつい周りを気にした。大勢の親戚が集まった法事の宴席である。酒がすすんで賑やかになってきたとはいえ、あまり聞かれたくない話題だった。
 尋ねてきたのは笑顔の鉄二郎叔父だった。いい人なのだが、この手の話題に遠慮はないらしい。
「いいねえ、ドラマチックな人生じゃねえか。男はそうでなくちゃ面白くねえよ」
「そりゃ、傍から見れば面白いでしょうけど」真作は肩をすくめた。「三十路で無職なんて洒落になりませんよ」
 ビールの大瓶を手にとった。叔父のグラスに注いだら泡がこぼれそうになったが、叔父は一息で飲み干した。
「なあに、人生いたるところ青山だ。どうだ、ひとつ大型免許でもとってうちの五トン車でも転がすか?」
 適当なことを言っているようで、彼の発言には重みがあった。なにしろ高校を出てすぐトラック運転手になり、二十歳になった記念に競馬に行ったら大穴が当たり、それを元手に自ら運送会社を興したという人なのである。真作も学生時代、積み下ろし助手として雇われたことがあった。
「俺、普通免許も持ってないですよ」真作は次の一杯を注いだ。「東京じゃ車に乗る用もないし」
「なんだよ、この際白笹に戻ってくるんじゃねえのか?」
「いやー、実家暮らしよりは東京の一人暮らしの方が気楽ですから」
 東京から白笹市まで、新幹線なら一時間ちょっとである。用事があればすぐ帰ってこれるし、真作には東京を離れる気持ちなどなかった。実家に戻ったところで畑仕事に駆り出されるだけである。
 第一、真作にも意地がある。リストラされて都落ちなんてまっぴらだ。このまま終わるつもりはなかった。
「それに、東京でもいろいろありまして、ちょっと離れらんないですよ」
「ほう、東京で何やらかすんだ?」
「それは――」
 咄嗟には答えられなかった。やることなんて特にないのだ。このまま終わるつもりはないが、かといって何を始めるかは決まってないのである。
 大学を出て、食品系の商社に八年勤めた。脇目も振らず、とまではいわないが、それなりに真面目に働いたつもりだ。しかし折からの業績不振に加えて増税による消費の落ち込みや円安による為替差損で経営が傾き、会社は大規模な人員削減を打ち出した。中高年層から始まったリストラ候補選びは三十代にまで及び、三十歳になったばかりの真作まで崖っぷちに立たされたのだ。
 退職金をもらって自ら出ていくか、地方の営業所に飛ばされて出世の道を断たれるか。突きつけられた二者択一に、真作は早期退職の道を選んだ。平社員なりの意地で、飼い殺しにされるくらいなら自分で道を切り拓いてやると思ったのだが――問題は、この先のあてはないということだった。
 とりあえず、夏の間にのんびり考えるつもりだった。盆の法事に合わせて帰省して、実家の両親に退職のことを打ち明け、一夜明けたところである。それがもう鉄二郎叔父の耳に届いているということは、きっと噂の出元は父か母だろう。この分では親戚じゅうに広まるのも時間の問題だ。
 幸い、そこでほろ酔い機嫌の喜晴叔父が通りかかって話題が逸れた。――正確には叔父ではなく大叔父にあたる人だが、歳はまだ六十前である。なにしろ親戚が多い家系なので、親の世代の親族はみんな叔父さん叔母さんと呼ぶのが習慣だった。
「なあ、真作って、今年でいくつになる?」
 喜晴叔父はここまでの話は聞いていなかったらしい。何かにつけて自分の話ばかりする人だが、今はそれがありがたかった。
「こないだ三十になったばっかりです」
「三十歳かあ」叔父は顔をしかめた。「うちの娘と結婚したいって言ってきた奴と、同い年だよ」
「あ、アキ姉ちゃん、結婚ですか? おめでとうございます」
 明恵は真作より二つ年上の勝気な美人である。たしか外資系の証券会社で働いていたはずで、仕事が忙しいということで今日の集まりには顔を見せていない。
「そりゃまあ」喜晴叔父はうなずいた。「三十過ぎのじゃじゃ馬が片付いたのはめでたいけどな」
「おっ、何かありそうだね」鉄二郎叔父が口を挟んだ。「娘を嫁にやるとなりゃあ、喜晴さんも複雑ってわけだ」
「それがお前、嫁にくださいって挨拶に来たのが、まあ生意気な野郎でな」
 そこからは真作を挟んで喜晴叔父と鉄二郎叔父のやり取りになった。真作としては他人の話に相槌を打つ方が気楽である。二人の掛け合いを肴に手酌でビールを飲んでいった。

 なんでも、明恵の相手は為替ディーラーをしているらしい。単なる勤め人ではなく自分の資産運用でも儲けているということで、年収を尋ねたら、毎年だいたい二千万から三千万の間という答えが返ってきた。実直な魚屋商売を四十年近く続けてきた喜晴叔父としては面白くない。ちょっと稼いでると思って鼻にかけやがってと反感を抱き、酒の勢いで相手に絡んだ。そんなに稼いでるなら貯金はどのくらいあるのか、預金通帳を見せてみろと迫ったのだ。
 相手はネットバンクでよければと、タブレット端末を操作して残高照会をしてみせた。やたらと桁が多くて老眼の喜晴叔父には咄嗟に判読できないほどの数字が表示されたが、こうなると引っ込みがつかない。「こんな画面の数字はいくらでも偽造できる。男なら一千万や二千万の札束をここに積んでみせろ」とやり返した。その程度のこともできない男に大事な娘を嫁にやれるかと、勝手な理屈で凄んでみせたのだ。
 仮にも結婚の申し込みにきたのだから、そこで相手も折れて下手に出るかと思ったのだが、話はそこで終わらなかった。相手も負けず嫌いだったようで、翌日には実際に二千万円分の札束が入った鞄を抱えて現れたのだ。そして再び「お嬢さんと結婚させてください」と迫ってきたものだから、喜晴叔父も困ってしまった。
 行きがかり上、結婚を認めないといけない立場である。叔父だって絶対に反対というわけでもなく、むしろ娘が落ち着いてくれてほっとする気持ちもあったのだが――ここで負けを認めるのは癪だった。そこで一計を案じ、婿となる男に一発かましてやることにした。
「分かった。ここまでしてもらっては仕方ない、その心意気に応えて、この金は受け取っておこう」
 相手は別に、その金を献上するとは言ってない。見せてみろと言われて従っただけである。その大金を丸ごともらってしまおうというのだから、喜晴叔父も無茶な人であった。
「俺がそう言ってやった時の奴の顔、見せてやりたかったね」喜晴叔父は朗らかに笑った。「鳩が豆鉄砲食らったっつうか、鶴が足元をすくわれたっつうか、とにかくパキーンと表情が固まっちまってなあ」
「そりゃそうだ」鉄二郎叔父も笑い声を響かせた。「今さら返せとも言えないやね。嫁をもらいにきたら、その代金が二千万ってなもんだ」
「なあに、手塩にかけた娘だ、二千万でも安いくらいだ」喜晴叔父は語気を荒らげた。「金返せなんて言ったが最後、俺は『そんなケチな野郎に娘をやれるか!』って卓袱台ひっくり返してやろうってつもりは満々よ。野郎もそれが分かるもんだから何も言えねえし、またうちの明恵も、横からとりなしゃあいいものを、俺と野郎の顔を見比べて面白がってんだから大した玉よ」
「明恵ちゃんは昔からしっかりしてるもの」
 口を挟んだのは由紀子叔母だった。鉄二郎叔父の妻で、彼女自身もトラックドライバーである。――叔父二人の声が大きいものだから、周りの親戚たちも自然とその話に引き込まれていた。
「なんだかんだいっても、最後は大丈夫って分かってたんじゃないの? 喜晴さんなら悪いようにはしないって」
「まあ俺も、娘にゃ甘いからなあ」喜晴叔父は照れ笑いを浮かべた。「その二千万は結局、娘にくれてやったんだ。新生活を始める足しにしろってな」
「そりゃあいい」鉄二郎叔父が手を打った。「それで夫婦の財布の紐は明恵ちゃんが握るようになって、婿さんは嫁にも舅にも頭が上がらなくなるってもんだ」
「だろ? 我ながらうまいことやったって思ってんだ」
 最後は自慢話のようにしめくくられたが――それでも、「結納が済んだら、こういう集まりにも連れてくるからよろしく頼むよ」と頭を下げているのだから、喜晴叔父なりに娘婿を認めてはいるのだろう。誰からともなく拍手がわいて、真作もその輪に加わった。

「さて、話を戻すか」
 鉄二郎叔父が真作に向き直った。忘れてくれてはいなかったのだ。
「東京で何かやらかすって話だったが、何をやろうってんだ?」
「……実は、ベンチャーを考えてるんです」
「ほう。俺みたいに自前の会社を持とうってのか」
「まあ小さい会社でも、でっかく儲けてみようかなって」
 嘘だった。しかし、そうやって言葉にしたことで、そこから先に話が続く。
「今の時代、雇用も不安定だし、企業自体の寿命も短くなってるでしょ? 下手にブラック企業に雇われてワーキングプアで食い物にされるくらいなら、自ら事業を興すべきだってことで、前から仲間と勉強会みたいなことをしてるんですよ」
 真作自身の話ではない。大学時代のサークル仲間、芦田の話の受け売りだ。よく聞かされる話なので淀みなく喋ることができた。
「そりゃあ前の会社は辞めましたけど、ただのニートじゃなくて、今はベンチャー企業の設立準備中なんですよ。まあ僕が主宰者ではあるんですけど、他の参加者は勤め人ばっかりなんで、出勤前の時間に集まってるんですけどね。貸会議室で勉強会を開いてるんです」
「おー、いわゆる朝活ってやつだな」
 鉄二郎叔父は平然と相槌を打った。――真作としては小難しい話だと敬遠してくれるのを期待したのだが、甘かったらしい。事務所でもトラックの中でもAMラジオをつけっぱなしにしているせいか、ごつい見かけのわりに博識なのである。
「僕も何年か前、友達に教わったんですけどね」真作は続けた。「IT業界では盛んに開かれてるっていうんで、最初はそのノウハウを真似させてもらって、だんだん自分たちなりの朝活セミナーができてきたって感じですね」
 さりげなく、友達の真似という言葉を入れた。嘘をついている意識から、どこかに予防線を張っておきたくなったのだ。
「あら、真作くんってIT業界だったの?」
 由紀子叔母が話に入ってきた。周りの親戚たちも、今度は真作の話に耳を傾けている。
「うちの経理のパソコン、最近調子悪いのよ。今度見てくれない?」
「いや、僕は流通業界でしたから……パソコンは通り一遍の知識くらいしか」
 そう言いながら芦田の話を思い出した。芦田の勤め先は外資系のネット関連企業で、業界の話も聞かせてくれたのだ。
「でもネット業界とかIT業界ってのは、この十年二十年で一気に大きくなったでしょ? ヤフーとかアップルとかも最初は小さなベンチャー企業だったわけだし、今でも小さな企業が切りこむ余地がいっぱいあるんですよ。初期投資は少なく始められるし、一発当てれば億単位の仕事になるってことで、新事業を立ち上げるにはうってつけなんです」
「おっ、喜晴さんが二千万なら、真作は億ときたか」
 鉄二郎叔父が手を叩き、周りの親戚たちも笑い声を響かせる。どうもまずい展開になってきた。
「で、どんな事業で億単位に稼ごうってんだ?」
 鉄二郎叔父が尋ねてくる。真作は内心の動揺を押し殺し、ここぞとばかりに微笑んでみせた。
「いやあ、それは教えられませんよ。ベンチャーってのはビジネスモデルが命ですからね。事業内容は企業秘密です」
 そう返せば、いかな鉄二郎叔父でもこれ以上は尋ねづらくなるはずだ。そのままこの場を切り抜けようと狙ったのだが、そこでまた声をかけられた。
「いいねえ。大言壮語は洞山の男の甲斐性だよ」
 大伯母のキヨ子だった。末弟の喜晴叔父とは三十歳も年が違うというから、八十はとうに超えて九十歳くらいのはずだが、いまだに背すじのぴんと伸びた、声の大きな老婆である。夫を三年前に亡くし、今では洞山一族の最長老でもあった。
 そのキヨ子大伯母が、老眼鏡の奥で目を細めている。もともとが皺深い顔なので、皺の中に目が隠れたみたいになったが、その眼光は鋭かった。
「そもそも洞山って苗字は、ご先祖様が吹いたホラ話から生まれたんだよ。むかしむかし――」
 彼女が語り始めた途端、ふっと座敷じゅうが静かになった。その直後、親戚たちから芝居見物のような掛け声が上がる。
「待ってました、『白笹と黒川の山比べ』」
「ホラ吹いて山を高くする話だよね!」
「やっぱりこういう席じゃあ洞山太一郎の昔話を聞かないとねえ」
 なにしろ親戚一同、物心ついた頃から何度となく聞かされたお馴染みの昔話なのである。大伯母より先に話の続きを語ろうとする者もいるし、茶々を入れる者や話を大きくする者もいる。そうやって皆で盛り上がるのもいつものことで、真作はそっとため息をついた。
「まあとにかく」大伯母はいつもの口調に戻った。「真作は昔から愚図だったが、あたしはどっか器の大きいとこがあると見込んでた。その愚図が億万円の仕事をやるって吹いたんだ。一族あげて応援しなきゃ、ご先祖様に叱られるよ!」
 周りから拍手が沸き起こった。――大言壮語を尊ぶのはキヨ子大伯母だけではないのだ。大伯母の号令に酒の勢いが加わって、あっという間に一族の総意みたいなものができていた。
「よーし、それじゃあ俺は真作の事業に出資してやる」
「うちは金はないが、東京で公認会計士やってる友達がいる。今度紹介してやろう」
 鉄二郎叔父と喜晴叔父が、張り合うように声を上げた。それを皮切りに何人もの親戚が口を開き、会社設立の相談にのるだの司法書士を紹介してやるだのと言い始めた。
 真作としてはありがた迷惑な状況である。この場を切り抜けるどころか、逃げ場を失った格好だ。
 もう引っ込みがつかない。言われるままに連絡先の交換などをしつつ、どうしてみんな真に受けるんだと思わずにはいられなかった。
 この場にい続けたらさらに話が大きくなりそうである。適当なところで宴席を抜けることにしたが、それを目ざとく見つけた親戚たちが声をかけてくる。
「なんだ真作、もう帰っちまうのか?」
「うちに泊まって、朝まで飲んでけよ」
「いやあ……実は明日も朝活セミナーなんですよ。主宰者としては準備とかいろいろありまして」
 もう一つ嘘を重ねて誘いを振り切った。なんとか座敷を脱出することはできたものの、去り際には万歳三唱で見送られることとなってしまった。
Δ
「白笹と黒川の山比べ」  むかしむかし、このあたりに。
 白湯村の太一郎という男がいた。苗字はなかった。
 そのあたりの村々を治めていたのは白笹城の殿様だった。その殿様がある時、国じゅうにお触れを出した。
「剣山を高くする策のある者は名乗り出よ。身分にかかわらず白笹城への登城を許す。名案には褒美をとらす」
 高くそびえる剣山は、昔から白笹の国の自慢だった。しかしお隣の黒川の国にも同じくらい高い赤峰という山があり、どちらが高いのかは誰も知らなかった。
 なにしろ離れたところにあるから、山同士を並べて比べるわけにはいかない。それぞれの山の高さを測る方法もない。だから余計に、白笹の者も黒川の者も、互いに自分の国の山の方が高いと言ってゆずらなかった。何かといがみあっては度々戦に及ぶ間柄だったので、戦以外のことでも相手に負けたくなかったのだ。
 ところがこの年、白笹の国に都からの噂が流れてきた。都には偉い学者がいて、月や星や太陽の位置を手掛かりに、田畑の広さはもちろん山の高さまで正しく測ることができるらしい。都のあたりを治める偉い殿様がその学者に命じ、諸国をめぐって田畑の広さや山の高さを隈なく調べさせているのだという。
 それを知った白笹の殿様は慌てた。都の殿様はえらく強いらしいから、逆らっても勝ち目はない。田畑の広さを調べられるのは仕方ないし、税を納めろというなら応じもしよう。――しかし。
「山比べだけは、負けるわけにはいかんのだ!」
 黒川の国とは長年の因縁がある。山比べは今や、両国の意地の張り合いの象徴だった。戦乱の世の趨勢がほぼ決まり、白笹も黒川も天下人の傘下に下ることが決まりかけた今、山比べだけは譲れない。何がなんでも黒川の赤峰に負けるわけにはいかないと、殿様は国をあげてこの勝負に勝とうと決めたのだった。
 とはいえ、都から偉い学者が来るまでは、剣山の高さも赤峰の高さも知ることができない。ならば今のうちに、少しでも剣山を高くしておいた方がいい。
 城では侍たちが知恵を絞り、連日話し合いが続いたが、名案は出なかった。そこで民の力も結集しようということになり、国じゅうから策を募ることに決まった。黒川の殿様には知られぬよう、内密のうちに村々の長たちにお達しが回され、村おさたちが山を高くする策を持った者を探すことになった。
 そこで名乗り出たのが、白湯村の太一郎という男であった。
「そんじゃあひとつ、おらが殿様のところに行って来よう」
 太一郎は気楽な顔で言い放った。村おさもこれには驚いた。
「なんと、お主がお山を高くできるというのか?」
「他でもねえ剣山じゃ。お山を高くしろといわれたら、麓に住んどる我らが引っ込んどるわけにはいかん」
 しかし周りの者たちはこぞって心配した。なにしろ太一郎ときたら、山仕事に行けば半日は岩のぼりなどして遊び、川仕事に行けば半日は石を投げて遊んでいるような男だったのである。
 誰よりもそれを知っていた女房のお道は、涙を浮かべて太一郎にすがった。
「村一番ののんびり屋のお前様が殿様にお目見えなんて、考えただけで怖ろしいわ」
 太一郎は心配しすぎだと笑ったが、両親も友達もお道の意見に味方した。
「お前のことだ、殿様の前でとんでもない失敗をしでかすに違いない」
「うっかり口を滑らせたら牢屋行きじゃぞ」
「牢屋ならまだましじゃ。下手すると首と胴とが離れて帰ってくることになる」
 みんな口々に止めたが、太一郎は引かなかった。この時ばかりは決意が固く、のんきな口調で言い張った。
「なあに、心配ばかりしてても仕方ない。とにかく始めてみるのが一番じゃ」
 朗らかに笑って、太一郎は白笹城へと旅立った。それを見送る村人たちは、互いに心配顔を見合わせたのだった。
 東京へ戻った洞山真作は、本物の朝活セミナーの主宰者に会いに行った。一応ことの経緯を話しておくことにしたのだ。
「俺の話で万歳三唱とは光栄だ」
 東京駅のスターバックスで、芦田俊介は声を上げて笑った。芦田は今夜もまだ仕事があるとかで、二人してアイスコーヒーを飲んでいる。
 仕立てのよさそうな麻のスーツの芦田に対し、真作はショートパンツにポロシャツという格好である。駅の雑踏を行き交う人々の目には、仕事仲間とは映らないだろう。学生時代の友人と見られればいいが、失業者が職の斡旋を頼んでいるようには見られたくないなと思った。
「俺が出資者を募る時には、洞山家の集まりに顔を出すといいかもな」芦田は真作の内心も知らずに呟いた。「『真作くんの話してたのは僕のことです、出資なら僕にしてください』なんて」
「やめてくれ、俺の立場がなくなる」
 真作は真顔で首を振った。――芦田は学生時代、サークル旅行で真作の実家に泊まったことがある。両親とはそれなりに顔馴染みになったから、ちょっと近況など話せばネタ元だとばれてしまうことだろう。
 二人が知り合ったのは探検同好会というサークルだった。山登りついでに洞窟を歩いたり夜中に廃墟となった建物に入ってみたりという、物好きなアウトドアサークルだ。実家の裏山に洞窟があるという真作の話を聞いて、芦田がそこを探検しようと言い出した。宿泊代を浮かせるために洞山家に泊まってしまおうという企画で、仲間と派手に飲んだくれたせいで真作は後々まで親から文句をいわれたものだった。
「前から聞きたかったんだ」芦田はカップの蓋を外した。「ホラ山一族って、吹いたホラが嘘だってばれたらどうなるんだ?」
「別に、どうって決まっちゃいないけど……」真作はストローをくわえたまま答えた。「とりあえず、あいつの話は駄法螺だったって話が広がる。そんでみんな面白がって、さらに話に尾ヒレを付けて吹聴する」
「なるほどね」芦田はアイスコーヒーを大きくあおった。「でも、親戚なんて大概そんなもんじゃないか?」
「そう思うのは、うちの親戚を知らないからだ」真作はため息をついた。「今回でいえば――俺が投資詐欺で会社をクビになった、くらいの話にはなるだろうし、親戚が出資するって言ってた金額がそのまま詐欺の被害額ってことになりかねない」
「じゃあこの際」芦田はカップに残った氷を噛み砕いた。「親戚に言った通りに実行したらどうだ?」
「実行?」
「朝活だよ。俺のやってる朝活セミナー、参加費無料で資料代と会議室代だけ頭割りする気楽な集まりだし、いっぺん出てみろよ」
「でもさ、真面目にベンチャー目指してる奴らの集まりなんだろ? 俺なんか出ても場違いじゃないか?」
「いやいや、レクチャーの後で軽食とドリンク出して、異業種交流の朝食会みたいな面もあるんだ。参加メンバーが固定しちゃうとマンネリ化するから、真作みたいのが来てくれればこっちもありがたい」
 芦田は昔から、人を巻き込むのがうまい。こういう時、真作だったら「どうせ暇だろ?」などと誘ってしまうところだが、芦田はさりげなく相手をおだててその気にさせる。吊り目で鉤鼻という見かけのわりに女にもてるのも、その話術のせいじゃないか――というのが真作の密かな憶測である。
「それに」芦田はにっこり笑った。「お前がそこで人脈作って、実際に起業してくれたりしても面白いよ。朝飯ついでの見物って気分で来てみな」
 そうやって朗らかに誘ってくれるのも、芦田の親切心みたいなものだろう。真作への期待というより、単なる性格的傾向だ。――それは分かっているけれど、誘われるとその気になってしまうというのも、真作の性格的傾向というものだった。

 自分なんか場違いではないか。
 真作のそんな懸念を芦田は笑い飛ばした。しかし蓋を開けてみたら思った通りの展開となった。
 だいたい会場の貸会議室からして六本木ヒルズにあるのだ。サラリーマンの中でも景気のいい連中の縄張りだ。ジーンズとサンダルという格好で来た真作は、受付の段階で思い切り浮いていた。
 気楽な集まりだというわりに、室内にはスーツやネクタイ姿の者ばかり集まっているようだ。中にはチノパンにポロシャツみたいなカジュアルな服装もいるけれど、それでも靴下と靴くらいは履いている。素足にサンダルというのは真作だけだった。
 まあ当然といえば当然だ。朝活セミナーという以上、出勤前のサラリーマンやOLたちが集まっているのだろう。比較的カジュアルなのは、服装の縛りが薄いIT業界や外資系の参加者だろうか。会議室には二十人か三十人くらい集まっていたが、なんとなく服装の似た者同士で固まって、いくつか談笑の輪ができている。
 そんな彼らは一様に、ちらりと真作を見てから視線を逸らす。浮いた格好の男に目を向けるものの、知り合いじゃないから関わらないということだろう。――真作の方でも、自分から彼らの輪に加わろうとは思わなかった。
 フォーマルな格好をしてこなかったのは、リストラされて無職になった者の意地である。朝活セミナーに新しく加わるからといって、周りに迎合する気はない。
 それに、東京は今日も朝から蒸し暑い。速乾Tシャツに薄手のデニムにサンダルという服装は、この場で一番涼しいはずだ。一番合理的で、一番自由な服装だと威張りたいくらいだった。
 うまい具合に、この日の朝食も真作に味方した。――やがて主宰者の芦田が会議室に入ってきて仕切りを入れたのだ。
「皆さん、おはようございます! いつもはレクチャーの後で朝食会って段取りですが、今朝は段取りを変えたいと思います。今日の講師の山形先生のご厚意で、茹でたての讃岐うどんをみんなでいただきますんで、窓側から一列に並んでもらえますか?」
 芦田が合図すると、うどんだの鍋だのが載ったワゴンが運ばれてきた。押しているのはさっきまでスーツ姿だったスタッフたちで、エプロンや割烹着を身につけている。真作は小学校の給食を思い出した。
「うどんを茹でザルに入れまして、熱湯にくぐらせます。茹で時間は三十秒くらいだそうですが、そのへんはお好みで」芦田は丼を手に実演してみせた。「茹でザルの端を鍋の縁にひっかけられますんで、熱かったら手は離してタイマーを見ててください。それでうどんを丼に戻したら、こちらのテーブルでダシ汁と薬味を好きなだけどうぞ」
 会議室は空調がきいていたが、煮立った鍋が持ち込まれたら急に室温が上がった。こういうセルフシステムのための調理器具なのか、おでん鍋を一回り大きくしたような四角い鍋が盛大に湯気を上げている。
 その前に立って自分で麺を茹で、熱いダシ汁をかけて食べるので、当然体は熱くなる。みんな上着を脱いだりシャツの袖をまくったりしていたし、汗を拭き拭き食べている者も多い。そうやって朝の六本木の会議室で大勢がうどんをすすっている光景というのも、なんだか不思議なものであった。
 
「さて、では改めてご紹介いたします。本日の講師は、躍進いちじるしいセルフうどん屋チェーン『でんでけ』の仕掛け人、株式会社松ヶ枝製麺代表取締役社長の山形歩さんです!」
 みんなが食べ終わった頃、ネクタイに割烹着の男が食器を片付け、芦田がホワイトボードの前に立った。招かれて進み出たのは、四十代くらいの肌の浅黒い男だった。
「どうも、山形です!」威勢のいい声が響いた。「セルフうどんの朝食、楽しんでいただけましたか? 美味しかったでしょ。丹精込めた手打ちうどんなんですよ」
 問いかける口調に、参加者から返事や拍手が生まれる。朝食の後で和やかな雰囲気となっていて、誰かが「ごちそうさまでした!」などと声を上げると笑い声も広がった。
「ありがとうございます! 気に入ってもらえてよかったです」山形社長はにっこり笑った。「でも実は、手打ちってのは嘘です」
 そこからもう、彼の講義が始まっていた。――彼の実家はもともと四国の製麺所だったが、子供の頃から機械いじりが好きな弟と共に、手打ちと遜色ない製麺機や能率のいい麺茹で鍋を造ろうと思い立った。「実のところ家の手伝いでなるべく楽をしたくて」という動機だったが、その機械の開発が成功の糸口となった。機械をうまく活用すれば、製麺所より利益の大きいうどん店を経営できると思いついたのだ。
 電気加熱の茹で鍋は小型な上に配置も工夫できるので、小規模店舗でセルフうどん店を開くのにぴったりだった。うどんの風味を損なわない冷凍技術は既に存在していたので、製麺所から直営店に冷凍麺を卸すセントラルキッチン方式を採用した。「おまけにセルフにすれば、店側の手間がお客様の楽しみに変わります」ということで、店のランニングコストを極限まで効率化してうどんの単価を安くおさえた。おかげで地元で始めたチェーン店の経営も軌道にのり、讃岐うどんブームにのって今や全国に広がるまでになっている。
 山形社長はこういう講演にも慣れているようだった。歯切れよく喋りつつ、背後のホワイトボードに「家業から企業へ」とか「技術革新と経営革新」といったキーワードを板書していった。参加者たちはそれを熱心にノートに書きとったりしていて――筆記用具など持参してこなかった真作はいささか手持ち無沙汰な思いで社長の立志伝を聞いていた。
 それなりに興味深い講義ではあったが、全国展開に際してフランチャイズ経営に乗り出した苦労話になってくると、ベンチャーの勉強会には関係ないんじゃないかと思えた。「食の欧米化が進んだ現代こそ、日本人は和食の懐かしさを求めている。和の心こそ、これからのビジネスチャンス」という主張には、一概にはいえないだろうと首を傾げたくなる。
「それじゃそろそろお時間ですんで、私の話はここでおしまいです。フランチャイズ話に興味を持った皆さん、詳しい資料も用意してあります。私と一緒に一旗あげてみませんか?」
 そんな風に話をしめくくられた時、ようやく思い当った。結局これは、講義に名を借りた勧誘だったのだ。参加費無料の集まりだし、主宰者の芦田は山形社長に講師料など払っていないだろう。無料で講演してもらうのと引き換えに、起業したがっている人間の集まる場所で勧誘し放題ということではなかろうか。
 仮にこの場で勧誘できなくたって、社長にすれば宣伝費無料で人脈作りができる。それはそれで収穫だろうし、フランチャイズに名乗りを上げた者からは加盟料だの指導料だのをごっそり取る仕組みができているはずだ。早起きして喋るだけの見返りはあるのだろう。人を集める手間がいらないだけ得なのだろうし、今日が初参加の真作あたりは、格好のうどん屋候補かもしれない。
 そんな風に考えると癪だった。芦田がちゃっかりしているのは昔からだが、のこのこやってきた自分がえらく間抜けに思えた。最後に質疑応答ということになったので、一発かましてやることにした。
 真っ先に挙手した。指名され、開口一番で「うどん、ごちそうさまでした」と挨拶して笑いをとった。
「うどんは美味しかったんですが、お話を聞いて疑問がわきました」真作はとぼけた顔で切りこんだ。「うどんは和の心っていっても……材料はアメリカ産ですよね?」
 参加者たちの間に怪訝そうな空気がたちこめたが、山形社長の笑顔はぴくりと揺らいだ。どうやら核心をつけたらしい。真作は内心でほくそえんだ。
「実は私、先日まで小麦粉も扱う商社で働いておりまして……このうどんの小売価格と原価率を考えれば、アメリカ産の輸入小麦粉を使うしかないって分かるんです」
 軽いどよめきが起こった。このツッコミに納得している参加者も多いようだ。真作は気をよくして続けた。
「それに、さっきは手打ちかと思わせて機械製麺って意外性で話に引き込まれましたが、客の立場で真相を知ったら、逆に騙されたみたいでマイナス要素ですよね。――和食といいつつ輸入原料、手打ちに見せかけた製麺機っていうビジネスモデルの弱点って気がするんですが、そのあたりどうお考えですか?」
 質問を終える頃には、明らかに山形社長の笑顔が強張っていた。これでは真作からフランチャイズ加入を申し込んでも断られるかもしれない。
「鋭いご指摘ですが……我々は輸入元や製麺方法を売ってるわけじゃないんです。一杯のうどんと、その背景のイメージを売ってるのであって……」
 社長はどうにか態勢を立て直して説明していった。――しかし真作としては、いささか言い訳めいた回答に興味はない。鋭い指摘と言われて満足だったし、むしろ隣の芦田の方に意識が向いた。
 ほんの一瞬、芦田は笑みを浮かべかけた。面白い指摘だとは思ってくれたのだろう。しかしその表情はすぐに消え、かわりに困惑の色が浮かんだ。講師の顔色をうかがうように視線を向けているのは進行役としての気づかいだろう。
 集まりをマンネリ化させないようにと誘われた真作だったが、今みたいな質問をすることも芦田の想定にあったのだろうか。それとも流れを壊して迷惑だったのか、後で尋ねてみようと思った。
Δ
「櫓と石垣と湯垢」  お城へとのんびり旅をした白湯村の太一郎は、指定された日にお城の門をくぐった。
 山を高くする策があると申し出た者は、まずは正門前の広場に集められ、献策吟味係の下級武士から調べられた。見どころありとされた者は二の丸に進み、そこで担当奉行から査問を受ける。そうやって二の丸から本丸へと進んで、最後には重役が居並び、御簾の向こうに殿様が座る大広間へと通された。
 殿様の御前で献策を許されたのはたった三人だった。まずは裃をつけた田舎侍が平伏して考えを述べた。
「拙者、剣山の周辺の森にて樵たちの監督のお役目を仰せつかってございます。されば、その樵たちに命じ、剣山の頂近くまで木材を運ばせ、ご城下の優秀な宮大工たちに櫓を築かせたいと存じまする。山頂より少し下から築き上げれば、山頂は十間ほども高くできようかと」
 田舎侍は懐から一巻の巻物を取り出した。それは木材の伐採から運搬の計画、そして櫓の骨組みまで描かれた絵図面であった。しかしそれをつぶさに見るまでもなく、重役の一人が告げた。
「剣山の頂は古来より常に大風の吹く岩場。櫓など何度建てても倒れるばかりじゃったわ。――ええい、この者を城外に叩き出せい!」
 気の毒な田舎侍は両脇を抱えられ連れ出されていった。
 続いて進言したのは、行者姿もいかめしい山伏だった。大柄な体通りの大音声で進言した。
「我らは常日頃より山にて心身を鍛練しております。されば配下の力自慢どもに、頂まで重き岩を運ばせまする。これを積みあげ、隙間をしっくいで固めて石垣とすれば、山は二十間も高くなろうかと」
 しかし、重役たちはこの意見も一蹴した。
「剣山の頂は軽石のごとくもろき地盤。重き岩など積み上げても崩れることくらい、何度も試してきたわ。この者を牢にぶち込めい!」
 気の毒な山伏も、引っ立てられてその場を去った。最後に残ったのは、いかにも貧乏そうな旅姿の若者――白湯村の太一郎である。
 太一郎は、すっかり硬くなっていた。なにしろお城に上がるのも生まれて初めてだったし、村おさからは下手な言葉を使うと首が飛ぶと脅かされた。まさか命までは奪われまいと思ってここまで来たものの、実際に樵役人が叩き出され、山伏が牢屋行きになるのを見てしまった今、喋るだけでも命懸けだった。
 それでも喋り出さなければ始まらない。太一郎は考えてきた策を口にした。
「おらの住んどる白湯村っちゅうとこは、その名の通り白いお湯が涌きます。しかし裸になってつかる者はおりません。入ると体に染みて痛え上、湯垢でかえって汚れるほどで、肌もがっさがさに荒れるのでございます」
 お城までの道中何度も練習してきた口上だった。お城に来てからも何べんも説明させられたので、緊張していても滑らかに喋ることができた。
「第一、湯をためる湯船っちゅうもんが立ち行きません。湯が冷えると湯垢が白く固まって、湯船じゅうにこびりついてしまうのです。固まった湯垢はなかなか溶けませんので、湯を抜く穴まで湯垢で詰まるほどです」
 湯垢のせいで、一晩も置いておくと湯船が台無しになってしまうのだ。せっかくの温泉だが、村人は栗や卵を茹でるのに使うくらいで、あとは川に流している。川の水と混ざれば薄まって固まらなくなるからだったが、それでも川底が白く見えるほどだった。
「この白い湯を、剣山のてっぺんに持って上がり、地面にまけばいかがでしょう」
 とんでもない進言であった。これまでさんざん山を高くする方策を吟味してきた家臣たちも、湯垢を使うなどとは考えてもみなかった。
 それは殿様も同様だった。そして思わず、御簾の向こうから太一郎に声をかけていた。
「なんと、湯垢にて山を高くすると申すか!」
「一人や二人の力では、湯垢も一寸にも達しませぬ。しかし百人千人でかかれば一尺には達しましょう。それにこの湯垢、岩場で固まると水にも溶けず叩いても割れぬほど頑丈になります。必ずや山を高くできましょう」
 これを聞かされた家臣たちは顔を見合わせた。――ついに妙案が出たかもしれぬと思う者もいたが、逆にこれまでで一番ひどい策だと思う者もいた。家臣たちにも判断がつかないものだから、誰も口を開けずに、互いの顔色をうかがってばかりなのだった。
 そんな中、殿様が再び口を開いた。
「よかろう、やってみようではないか。試したところで剣山が縮むこともあるまい」
 それを聞くと、家臣一同も名案じゃ名案じゃと声を上げた。半信半疑の者も多かったが、とりあえずの結論がなければこの評定の始末がつかない。それを承知していた殿様も、太一郎の献策を取り上げて仕事を終えようと思ったのだった。
「その者が申すことが正しいか、試してみれば分かること。ちょうど合戦もなく兵たちも調練に身が入っておらぬところじゃ。白湯村から剣山まで、全軍に駆けさせれば心身の鍛練にもなろうぞ」
 そんなわけで、太一郎は白湯村へ帰ることを許された。首と胴はつながったままだったし、褒美の小判までもらっていた。――献策を認められただけではない。この先、白笹の全軍が涌き出る湯を汲んで運べるよう、白湯村で手配しておく役目まで仰せつかっていたのだった。

(つづく)




プロフィール

竹内 真
(たけうち まこと)

1971年生まれ。慶應義塾大学卒業。95年に三田文学新人賞、98年「神楽坂ファミリー」で第66回小説現代新人賞、99年『粗忽拳銃』で第12回小説すばる新人賞を受賞する。著書に『カレーライフ』『じーさん武勇伝』『自転車少年記』『ビールボーイズ』『自転車冒険記 12歳の助走』『イン・ザ・ルーツ』『図書室のキリギリス』『ぱらっぱフーガ』などがある。

有人と風香は中学の吹奏楽部でアルトサックスを吹く恋人同士。高校でも共に全国を目指そうと、名門・旺華高校を揃って受験した。が、有人がまさかの不合格、吹奏楽部がない羽修館学園に進学する羽目に。一方、風香は全国大会金賞常連の名門の洗礼を早速浴びてしまう。どうなる? ふたりの恋と音楽!