双葉社web文芸マガジン[カラフル]

恋する失恋バスツアー / 森沢明夫・著

© たなかみか

第 7 回



 空色のバスが走り出して少しすると、ようやく車内に充満していた肉まんの匂いが薄れてきた。
 隣の小雪は、いつもこのツアーに持ってくる小さなショルダーバッグのなかから、レモン味のタブレットを取り出して、それをひと粒口に入れた。いつもなら「龍ちゃんも、食べる?」と小首を傾げるようにしてこちらを見上げるところだが、今日はそんな素振りのかけらもない。ただ黙って奥歯でカリカリとタブレットを噛んでいるだけだ。強めの酸味と爽やかなレモンの香りがするこの清涼菓子は、ここ最近、小雪のお気に入りだった。
「あのさ」
 俺は、小雪の横顔に声をかけた。
 すると小雪は、ちょっと面倒臭そうな顔をして、「ん」と、タブレットの入ったケースをこちらに差し出した。
「え? 違うよ」
「じゃあ、なに?」
「なにって……。ちょっと、話しておきたいことがあるんだよ。仕事の話なんだけど」
「ふうん」
 小雪はタブレットのケースをショルダーバッグにしまった。あまりにも素っ気ないその態度に、俺はひとこと言っておくことにした。
「仕事の話の前に、ちょっと頼みがあるんだけど」
「…………」
「とりあえず、このツアーの間は休戦ってことにしない?」
「休戦?」
「そう。べつに停戦でもいいけど」
「わたし、そもそも、添乗員さんと戦っていませんけど?」
 俺はため息をついた。
「だ~か~ら~、そういうのをやめようってこと。このツアーの間だけでいいから、いつも通りにしてくれないかな。ツアーは俺たちにとっては仕事なんだし。お互いにプロだろ。こんな状況じゃ、いい仕事ができないじゃん。それに、なんか、もう、面倒臭いよ」
「…………」
「な、そうしよう。お互いにプロとして」
 小雪は、少しの間、前を向いたまま黙っていたけれど、プロとして、という言葉には異論を挟めないようで、「まあ……、じゃあ、分かった」と、やや不満げにつぶやいた。
 ホッとした俺は、小雪の気持ちが変わらないよう、念のため「よかった。ありがとうな」とだめ押しをしておいた。ありがとう、と感謝されて気分の悪い人間はいない。
「で、なに?」
「え?」
「わたしに話しておきたいことがあるんでしょ?」
「あ、うん、そうだった」俺は、小雪の耳元に少し顔を寄せて、小さな声で言った。「参加者のモモちゃんって娘のことなんだけどさ」
 すると小雪は、すぐに「ああ、それね。分かってるよ」と言って、小さく頷いた。「彼女、リスカしてるもんね」
 この反応には、正直、驚いた。
「え、気づいてたの?」
「当たり前でしょ。わたし、一応、プロですから」ちょっと誇らしげに言って、小雪は続けた。「っていうか、その話の前に、やることがあるから、わたし」
「やること?」
 小雪は言葉を発せずに頷くと、俺にだけ見えるよう、後ろの席を指差した。
「桜子さん?」
 俺はひそひそ声で訊いた。
 黙って頷いた小雪は、「ちょっと待ってて」と言ってショルダーバッグを手に立ち上がると、すぐ後ろにいる桜子さんの隣の席へと移動していった。
 いったい何をするつもりだろう――。
 かなり気にはなったけれど、俺は後ろを振り返るようなことはせず、シートに背中をあずけたまま、じっと耳をそばだてていた。しかし、オンボロバスの音がうるさいせいで、小声でしゃべっている二人の会話は、断片的にしか拾えなかった。それでも、二人して、ちょっぴり楽しそうな雰囲気で話しているということだけは分かった。時折、ふふふ、と桜子さんの上品な笑い声が洩れ聞こえてくるのだ。
 数分後、小雪が俺の隣に戻ってきた。ショルダーバッグを太ももの上に載せると、中からレモン味のタブレットを取り出して、またひと粒口に入れ、「ふう」と息をつく。
「何してたの?」
 当然、俺は訊いた。
「桜子さんの、あの大きな白いハット」
「うん」
「脱げるようにしてあげたの」
「え?」
「ようするにね――」
 それから小雪は、後ろの桜子さんに聞こえないよう、とても、とても、小さな声でしゃべりはじめた。
 いわく、さっきのトイレ休憩のときに、小雪はさりげなく桜子さんに訊いたらしいのだ。「どうしてバスのなかでもハットをかぶっているの?」と。すると桜子さんは、ちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめながら、「(失恋の)ストレスで髪の毛が抜けてしまったので……」と答えたのだという。いわゆる十円ハゲというやつだった。そこで小雪は、バスの走行中、さりげなく桜子さんの隣に座って、軽い雑談を交わしながら、まさにその脱毛部分に結び目をぴったり合わせたポニーテールを結ってあげたのだった。
「後頭部のちょっと右上あたりにね、けっこう目立つのがあったから」
「なるほど。そっか……」
「ま、そりゃあ女の子としては、隠したいじゃない?」
「だろうね。で、あのハットは?」
「桜子さんが、自分で網棚に載せた」
 なんでもない顔で、小雪は言う。
「なあ、小雪」
「ん?」
「さすがだな」
「え?」
「敏腕だよ」
 俺は、心の声をそのまま口にした。
「べつに、ふつうだけど」
「ううん。敏腕だと思うよ。それに、そういう気の利かせ方って、男には、ちょっとできないからさ」
 俺がまっすぐに褒めたら、小雪は少し照れくさかったのだろう、またレモン味のタブレットを黙ってこちらに差し出してきた。
「ああ、サンキュ」
 ここで断るのもなんだから、ひと粒もらっておいた。口に放り込むと、顔をしかめたくなるような酸っぱさが舌の上で弾ける。
「これ、こんなに酸っぱかったっけ?」
「え、美味しいじゃん」小雪はそう言って、もうひと粒を口に入れ、カリカリと噛みはじめた。そして、俺がいちばん気になっていることに話題を戻した。「さっきの話だけど、モモちゃんのことは心配しないでいいよ。わたし、さりげなく探っておくから」
「うん。俺も注意しておくけど、念のため、頼むわ」
「まかしといて。この敏腕に」
 小雪は自分の腕を軽くポンポンと叩いて、口角をきゅっと上げてみせた。
 それは久しぶりに見る小雪の素の笑顔だった。
◇   ◇   ◇
 山あいの廃村に、時折、ゆるやかな風が吹いた。
 風はひんやりとして湿っぽく、少し不快に感じるほど首筋にまとわりついてくる。
 俺たちのツアー一行はいま、初日のランチを摂るため、山奥に捨て置かれたような無人の公園の跡地にそれぞれ散らばっていた。
 バスから降りるときに俺が参加者に配ったのは、梅干しのおにぎり三つと、ペットボトルのお茶。それと、百円ショップで売られている一人用の小さなレジャーシート一枚のみ。こういう安上がりなメニューでランチを済ませられるから、「失恋バスツアー」の利幅は大きくなる。つまり、社長に喜ばれるのだ。
 それにしても――。
 この公園跡地は、いつ来てもうら寂しい空気を漂わせていた。
 村がゴーストタウン化して久しいせいだろう、まったくもって整備も手入れもなされていないのだ。赤土の地面のあちこちには雑草の草むらが点在しているし、いくつかある遊具もすっかり錆びついて薄気味悪く、まるで何かの墓標を思わせた。
 とりわけブランコの傷みはひどい。片方の鎖がぷっつりと上の方で切れていて、斜めにぶら下がった座面が地面に引きずられているのだ。座面の落ちた側からは、錆びた鎖が茶色い蛇のようにうねうねと地面を這っている。夜だったら「うら寂しい」を通り越して「不気味」と言いたくなるだろう。
 しかも、今日はうっすらと霧が出ていた。
 弱い風が吹くと、まるでドライアイスの白煙のように、霧が音もなく地面の上をゆっくりと移動していく。
 公園の入り口は舗装道路に面しているが、奥の方は暗い雑木林に面していた。その樹々が霧で淡く霞んでいるせいで、やたらと幽玄な雰囲気を醸し出している。ふと見たら、雑木林の縁に足のない女でも浮かんでいそうな気さえしてくる。
 また、すうっと不気味な風が吹いた。
 霧がゆっくりと動き、さやさやと葉擦れの音が頭上を漂う。
 それ以外の音は、まったくと言っていいほど聞こえてこない。
 とても、とても、静かで、うそ寒いような公園なのだ。まさに「失恋バスツアー」にはもってこいの場所である。
「わー、やっぱり、なんか、雨が降りそうな匂いがするぅ。いただきまーす。あ、このおにぎり、めっちゃ美味しい」
 公園の右側、朽ち果てたベンチの傍で、るいるいさんのキンキン声が弾けた。無邪気すぎるこの声が響くと、幽静だった公園の風情が一気に吹き飛ばされて、霧まで晴れてきそうだった。
 しかし、それでも他の参加者たちは、一人ひとり適当な場所にレジャーシートを敷いて、黙って静かにおにぎりを口に運んでいた。
 じつは、ここに到着するまでのバスのなかで、俺はお客さんたちにいっそう落ち込んでもらおうと、ツアー恒例のちょっとしたゲームを催したのだった。
 その名も「ネガティブ言葉ゲーム」。
 やり方は単純だ。ようするに最初の人が「ネガティブ」と言ったら、次の人からは、前の人が口にした単語から連想されるネガティブな響きを持つ言葉を口にする、というシンプルな言葉遊びである。もちろん、同じ言葉でも、人によって受け取り方も違えば、意味合いも、響き方も違ってくる。だから、このゲームでは勝敗はつけない。大切なのは、各人が口にした鬱々とするような単語の意味をいちいち自分の心に染み込ませ、その言葉の持つネガティブな影響力によってしっかり落ち込むことなのだ。
 ちなみに、さっきのバスのなかでは、こんな具合でゲームが進んだ。まずマイクを持った俺が「ネガティブ」と口火を切ると、席順ですぐ後ろの桜子さんにマイクを回す。そして桜子さんは「淋しい」と言い、その後ろのヒロミンさんにマイクが回り「不幸」、その後ろのモモちゃんが「裏切り……」、そしてるいるいさんが「嘘つきっ!」、教授が「憎しみ」、ジャックさんが「月のない夜」、ここで一部に失笑が起きたが、陳さんが「独りぼっち」と続け、サブローさんが「不治の病」、入道さんが「藁人形」、そして小雪が淡々と「永遠の別れ」と言った。
 永遠の別れ――。
 その小雪の言葉に、一瞬、胸を詰まらせた俺は、思わず「復縁」とポジティブな単語を口にしそうになったけれど、でも、その想いをぐっと飲み込んで「惨め」と言い、また後ろの席の桜子さんへとバトン(実際はマイクだけど)タッチしたのだった。
 朝からバスのなかを延々と流れ続ける鬱々とした失恋ソングをBGMに、こんな地味で気分の悪いゲームをやってきただけあって、この公園に着く頃には、失恋したてのお客さんたちのテンションはドヨヨ~ンと音が聞こえてきそうなくらいに下がっていた。つまり、このツアーとしては、とてもいい傾向なのだった。だからこそ、るいるいさんの能天気な声を聞いても、誰一人として反応しなかったのだろう。
 俺は、公園の入り口のすぐ脇にある草むらの上にレジャーシートを敷いていた。あぐらをかいて、ひとり空を見上げる。空といっても、霧のせいで、ただの白い広がりなのだが、それでもたしかにるいるいさんの言うとおり、雨を予感させるような湿った埃っぽい匂いが園内に満ちている気がした。
 朝、出発した頃は晴れていたのだが、おんぼろバスが九十九折つづらおりの山道を登っていくにつれ、天候がどんどん変わってきたのだ。
 このあたりは山の天気だから、もしかすると今後、突然の雨があるかも知れない。しかし、それでも、どうってことはない。雨に降られたら、ただ、お客さんたちにバスのなかへと移動してもらい、それぞれの座席で食事をしてもらえばいいだけなのだ。もっと言えば、そういうマイナスの出来事は、このツアーにもってこいの侘しい演出となるのである。
 俺は、参加者と同じおにぎりを頬張った。腐らないよう、朝からクーラーボックスに入れてあったから、まだ少しひんやりしていた。それでも、よく噛んで食べれば、米の甘みがしっかりと感じられて、なかなか美味しいおにぎりだった。
 梅干しの酸っぱさに顔をしかめつつ、うっすら白く霞む公園を見渡した。
 右手奥にある壊れたブランコの近くには、モモちゃんと小雪の姿があった。二人は一枚の小さなレジャーシートの上で、互いに肩を寄せ合うように腰を下ろし、おにぎりを頬張っていた。
 小雪は、さっそくモモちゃんの心の様子を探っているのだ。
 小雪いわく、一緒にご飯を食べるというのは、互いの心の距離を近くするのにもってこいの行為らしい。しかも、肩を並べて同じ方向を見ながら会話をしていると、不思議と同じ未来を見つめる「同志」のような錯覚に陥りやすくなるという。まさにいま小雪は、二人のあいだにそういう状況を作り出すことで、モモちゃんの心の扉を開こうとしているに違いない。そして、おそらく、あの二人はまもなく、やさしい信頼関係で結ばれた「仲良し」になってしまうのだろう。小雪は、人と仲良くなることにかけては、いつだって天才的なのだ。
 いちばん仲良くしたいのは、俺なんだけどな――。
 ふう、と嘆息して、俺は小雪とモモちゃんから視線を逸らした。
 公園のいちばん奥の砂場のあたりには、顔中ピアスだらけのパンクロッカー(予定)のジャックさんの姿があった。その少し左手には、酒屋を引退した好々爺、サブローさんの痩せた背中が見えている。さらに視線を移すと、白いハットを脱いだポニーテールの桜子さんがシートの上で正座していて、その近くにはまるで瞑想でもしているように細い目をした教授の姿があった。入道さんや陳さん、フォトグラファーのヒロミンさんたちも、各人各様にレジャーシートを広げ、静かなランチタイムを過ごしている。
 運転手のまどかさんは、あまり遠くには行かず、公園の入り口に近い植え込みのコンクリートの縁に浅く腰掛けていた。すでにおにぎりはたいらげてしまったようで、さっそくぷかぷかと紫煙をくゆらせている。
 俺は二つ目のおにぎりにとりかかりつつ、ちらりと腕時計を見た。自由時間を兼ねたランチタイムは、まだたっぷり残されている。
 過去のこのツアーでは、食後にのんびり昼寝をする人もいれば、失恋したときのショックを思い出して鬱々と考え込む人もいた。ひとり静かに『人間失格』を読む人もいたし、廃村をとぼとぼと背中をまるめて散歩する人もいた。そして毎回、必ずといっていいほどいるのが、淋しさのあまり俺や小雪に話しかけてくる人だ。
 さて、あのイヤミ課長が選りすぐった今回のツアー参加者たちは、いったいどんな食後を過ごすのだろうか……。
 俺は、ぼんやりと、そんなことを思いながら、おにぎりを咀嚼していた。
 と、そのとき――。
 公園の奥の方で妙な声が上がった。
「う、うわあっ、うわっ、ちょっ――、うわあああぁ!」
 男の悲鳴だった。
 俺は反射的に顔を上げ、声の方を見た。
 声の主は、ジャックさんだった。寝かせた金色のモヒカンを振り乱し、つんのめって転びそうになりながら、公園の真ん中に向かって必死に走っていた。
 何かから、逃げているようだ。
 まさか、幽霊じゃないよな?
 そう思ったのとほぼ同時に、俺もまた声を出していた。
「あっ!」
 公園に面した薄暗い雑木林から、黒っぽい獣のようなものが飛び出してきたのだ。
 一瞬、俺は自分の目を疑った。
 しかし、それは疑いようのないくらいに身体が大きく、インパクトのある、紛れもないイノシシだった。
 う、嘘だろ――。
 弾かれるように俺は立ち上がった。と、そのとき、うっかり口のなかの米粒をひとつ気管に吸い込んでしまい、げほげほと激しくむせてしまった。
 呼吸が、苦しい。
 こんなときに、なんてこった!
 心中で悪態をつきながらも公園内をざっと見渡す。
 お客さんたちはすでに突然のイノシシの乱入に気づき、みな一様に慌てた様子で立ち上がっていた。しかし、立つには立ったものの、その先の行動までは思考が展開していないようだった。皆、ただ呆然と突っ立っていたのだ。
 バフゥ。
 バフゥ。
 イノシシは荒ぶった呼吸音を響かせつつ、公園の中央へと小走りで入ってきた。前方に突き出した焦げ茶色の鼻の脇に、反り返った鋭い牙が見えていた。動物園でも見たことのないような、非常に大きな雄のイノシシだった。
「おっ、おいっ! みんな、逃げろ! 高いところに登れる奴は、登るんだ!」
 野太い声が園内に響き渡った。入道さんの声だった。
 俺は相変わらず激しくむせたまま、それでも小雪の方を見た。
 小雪は、恐怖にすくみ上がったモモちゃんの肩を、横から抱きしめてかばうような格好をしていた。
 その小雪が、こちらを振り向いた。
 俺と目が合った。
「おい、添乗員なんだから、何とかしろよ」
 すぐ後ろで声がした。
 振り返らなくても分かる。まどかさんだ。
 イノシシは公園の中央あたりまでくると、ぐるぐると小さな円を描くように小走りを続けた。
 風が吹き、園内にかかっている淡い霧がゆっくりと動いていく。
 ふいにイノシシは足を止めた。
 そして、次の瞬間、前脚で、ゴリ、ゴリ、と地面を削るような動作をして見せた。周囲にいる人間たちを威嚇しているのだ。
 イノシシは、その鼻先を小雪とモモちゃんの方に向けた。二人を攻撃対象としているのは、誰の目にも明らかだった。
 ま、まずい――。
 俺は相変わらず咳き込みながらも、よろよろと歩きだした。
 本当は、猛ダッシュをしたかったのだが、経験したことのない恐怖が俺の膝から力を奪い、まともに走れなかったのだ。
 モモちゃんを必死に抱きしめた小雪が、イノシシの殺気に気圧されて後ずさりする。
 また、俺を見た。
 その目が、「龍ちゃん、助けて」と言っている。
 俺は、小さく頷いて見せて、
「こ、こ……」
 小雪!
 と叫ぼうとしたその刹那――、視界の端で何かが動いた。
 え?
 そのとき、俺の目は、あまりにも想定外な光景を捉えていた。
 痩せぎすの老人がひょこひょこと現れたと思ったら、小雪とイノシシの間に割って入ったのだ。
 老人は小雪たちを背にして、イノシシと対峙した。
 サ、サブローさん……。
 咳き込んだままの俺は、声にならない声をもらしていた。

(第8回につづく)

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森沢明夫Akio Morisawa

1969年千葉県生まれ。早稲田大学卒業。『津軽百年食堂』が2011年に映画化。2012年『あなたへ』が高倉健主演映画の小説版としてヒットする。『虹の岬の喫茶店』は2014年『虹の岬の物語』(主演・吉永小百合)として映画化され、話題に。2015年には『ライアの祈り』が映画化、『癒し屋キリコの約束』が連続ドラマに。他の著書に『夏美のホタル』『大事なことほど小声でささやく』『ミーコの宝箱』『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』、エッセイ『あおぞらビール』、カラフル連載が2016年1月に単行本刊行された『きらきら眼鏡』などがある。近著に『たまちゃんのおつかい便』。

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