双葉社web文芸マガジン[カラフル]

恋する失恋バスツアー / 森沢明夫・著

© たなかみか

第 16 回



◇   ◇   ◇
 夕食を終えたら、校庭の朝礼台の前に集まってもらった。
 五月の山あいの夜は、暑くも寒くもなく、しっとりとなまめかしい初夏の夜風が襟元を撫でる。ふと夜空を見上げたら、思わず「おお」と声を上げそうになった。頭上には「星空」というより、むしろ「宇宙」と言いたくなるようなきらめきが広がっていたのだ。
 校庭のすぐ近くを流れる清流からは、さわさわと耳にやさしい瀬音が聞こえてくる。ルルルル、と歌うカエルたちの合唱は、無数の音符となって校庭の闇をふわふわ漂っていた。
 いい夜だ――。
 そう思った俺は、無意識に小雪の姿を探してしまう。
 小雪は、少し離れたところで、ヒロミンさんと桜子さん、そしてジャックさんと静かに会話をしていた。
 声をかけようかどうか躊躇していると、管理人の山田さんが用務員室から現れた。両手には水を張った金属のバケツを持っている。それを見た俺は、気持ちを切り替えて仕事に取り掛かった。お客さん一人ひとりに線香花火の束とライターを配って回ったのだ。
「はい、小泉先生も」
 さりげなくそう言って、小雪にも花火を渡した。
「あ、どうも」
 と、やや素っ気ない小雪の横で、ジャックさんがニヒルに笑う。
「五月に花火かよ。こういう風流なのは、悪くねえよな」
 小雪が、その台詞に頷いたのを見て、俺はすっと目を背けた。
 背後でるいるいさんの声が上がった。
「わーっ、わたし、花火だーいすき!」
 キンキン声の衝撃で、天空の星たちがバラバラと落ちてくるのではないかと心配になる。
「あの、すみません、るいるいさん」
「ん、なぁに?」
「夜なので、もう少し静かにお願いしますね。これから線香花火でわびしい雰囲気を味わって頂きますから」
 俺は、なるべくやさしく諭す。
 しかし、陳さん同様、るいるいさんにも俺の思いは通じない。
「うん、オッケー、じゃあ、静かにするね!」
 その声がすでに静かじゃないのである。しかし、その美しすぎる笑顔で「うふふ」とやられると、なんだかもういいや、という気分にさせられてしまう。美人というのは、つくづく得だ。
 全員に線香花火とライターを配り終えると、俺はツアー客たちに向かって言った。
「それでは、みなさん、これから線香花火を愉しんでいただくのですが、その前に、線香花火に関するちょっとした雑学をお話しさせて頂こうと思います」
 まさか花火の前に講釈があろうとは思っていなかったようで、お客たちは、なんとなく間延びしたような顔でこちらを見た。しかし、俺は構わずしゃべり出した。
「じつは、この線香花火、着火してから消えるまでのあいだを四段階に分けられておりまして、それぞれに風流な呼び名があるのをご存知でしょうか?」
「なにそれ、知らなーい」
 と言ったのは、もちろんるいるいさんだ。
「ですよね。では、簡単に解説させて頂きますね。まず最初の段階、先端に火の玉ができてジュクジュクしている状態を《牡丹》と言います。洋服のボタンじゃなくて、花の牡丹ですね。そして、その玉からパサパサと勢いよく火花が出はじめたら、それが《松葉》です。たしかに枝ぶりのいい松の葉のように見えますよね。それからしばらくして、火花の勢いが弱まると、ひゅっ、ひゅっ、と小さな柳の葉っぱみたいな火花を出しますが、その状態を《柳》と呼びます。そして最後、火が消える直前を《散り菊》と呼ぶのだそうです」
「知らなかったなぁ。線香花火に、そんな風流な呼び方があったんですね」
 サブローさんが、感慨深げに頷いてくれた。
「ほう、添乗員、なかなか勉強してるだろう。悪くないね」
 なぜか陳さんが上から目線の発言をする。
「それは、どうも」苦笑して、俺は続けた。「ええと――、線香花火の玉というのは、科学の冷めた目で見れば、単に硫黄や各種の不純物が熱で溶けて、それが表面張力で丸くなっただけのものなんです。でも、こんな風に美しい呼び名を付けてやると、その見え方や味わいがいっそう深くなりますよね。つまり、やがて散りゆく儚い時間のなかに、私たち日本人は《美》を見てきたわけです。日本人が桜の花が好きなのも、すぐに散ってしまう儚さゆえですよね」
「おい、私は中国人ね。でも、桜は好きだろう」
「陳さん、ありがとうございます」またしても話の腰を折られた俺は、嘆息しそうになったが、そこはなんとか堪えた。「ええと、線香花火と同様、私たちの人生もきっと、宇宙から見たらほんの一瞬の、星の瞬きにも満たないはずです。でも、そんな短い時のなかにも、美しい出会いがあって、そして、必ず別れが付いてきます。出会いと別れというのは、例外なく、いつもセット売りなんですね。出会えた人とは、いつか必ず別れるんです。必ず、です。どうせいつかは別れる出会い――それなら、せめて、出会っている間のひとときだけでも、美しい名前を付けるような気持ちで過ごしていたいですよね? さて、今回のこのツアーに参加されたみなさんは、そんな儚い時間のなかで、つらい失恋をされてきたわけですが、今夜はそれぞれの出会いから別れまでの日々に、あえて、そっと想いを馳せてみて下さい。そして、儚い花火の美しさと、ご自分の過去を重ね合わせながら、線香花火の情緒を味わって頂ければと思います」
 お客たちは、そろって神妙な面持ちでこちらを見ていた。
「では、みなさん、くれぐれも火傷と火災には注意しつつ、お好きな場所でお楽しみ下さい。それと、使用後の花火は、こちらの水を張ったバケツのなかにお願いします」
 俺の能書きが終わると、お客たちは思い思いの場所へと散っていった。管理人の山田さんは、サブローさんと連れ立って闇のなかへと歩いていく。この二人は年齢が近いせいか、互いに気心が知れたようだ。
 いつの間にか俺の隣に立っていた小雪が、肘でこちらの脇腹を突いた。
「わ、びっくりした」
「龍ちゃん、トーク、ずいぶんと上手くなったじゃん」
 手にした線香花火の束を見下ろしながら、小雪は小さな声で言った。
「そう、かな?」
「みんな、真剣な顔で聞いてたよ」
「まあ、いままで何度もやってるしね」
 照れ隠しにそう答えたら、清流の方から涼しい風が吹いて、小雪の髪をさらりと揺らした。
「出会いがあれば、必ず別れがある、か……」
「え?」
「龍ちゃん、そんなネタを話したのって、今日がはじめてじゃない?」
「まあ……、うん。そうかもな。思いつきだけど」
「ふうん、思いつきね」
 小雪は、かすかにため息をついたように見えた。そして、俺の方を見て口元だけで小さく微笑むと、そのまま夜空を見上げた。釣られて俺も広大な「宇宙」を見上げて――ゆっくりと視線を小雪に戻した。
「あのさ、小雪」
 俺が声をかけるのと同時に、小雪も口を開いていた。
「あ、流れ星」
「え?」
「見えた?」
 小雪が夜空を指差す。
「いや……、見えなかった」
「そう」
「うん」
「残念」
「だね」
「じゃあ、わたし――」
「え……」
「ちょっと巡回してくるね」
「え……」
「じゃ」
 ひらりと小さく手を振って、小雪は暗い校庭のなかへと歩き出した。
「あ、うん……」
 ――俺たちも一緒に線香花火、やらない?
 喉元まで出かけていた台詞を飲み込んだとき、パサパサ、パサパサ、と校庭のあちこちの暗がりにオレンジ色の淡い光が明滅しはじめた。
 流れ星、か。
 なんだろう、このタイミングの悪さは。
「ふう」
 飲み込んだばかりの台詞を、俺は小さなため息に変えた。そして、何気なく、小雪が見上げたあたりの夜空に視線を送ると――、
 つつーっ。
 いまになって、針先のような小さな星がこぼれ落ちた。
 朝礼台の前にひとり取り残された俺は、なんとなく手持ち無沙汰になり、ぶらぶらと夜の校庭を歩きはじめた。
 お客たちは、いま、それぞれの想いにひたっているから、不用意に話しかけない方がいい。しかも、巡回は小雪に任せてある。
 俺は、少し歩いては立ち止まり、夜空を見上げた。
 何度かそれを繰り返していると、校舎の裏手へと続くフェンス沿いの暗がりに、しゃがんで丸くなったるいるいさんの姿を見つけた。線香花火のセンチメンタルな光が、「絶世の」と冠したくなるようなハーフの美しい横顔をチカチカと淡く照らしていた。
 この娘、珍しく静かにしているな――と思いつつ、近くをそっと通り過ぎようとしたら、るいるいさんが顔を上げた。そして、こちらを見て「あっ!」と開きかけた口の前に、慌てて自分の人差し指を押し当て、「しー」とやった。
 ほとんど少女のようなその仕草に、思わず頬を緩めた俺は、「線香花火、いかがですか?」と小声で問いかけてみた。
「うん、いい感じだよ」
 るいるいさんは、しゃがんだまま返事をした。
「龍ちゃんもやる?」
「え……」
 いつの間にか「ちゃん」付けになっていたけれど、まあ、それは気にしないことにして、俺はるいるいさんの隣にしゃがんだ。
「じゃあ、一本だけお付き合いさせて頂きます」
「うふふ。はい、じゃあ、これ」
 るいるいさんが線香花火を一本こちらに差し出し、ライターで着火してくれた。
 シューと音を立てながら火薬が燃え、すぐにジュクジュクの火の玉が出来上がる。
「子供の頃からこの匂いが好きなんです」
「あ、分かる。わたしも好きっ!」
 星が落ちそうなキンキン声。
 今度は、俺が口の前に人差し指を立てて「しー」とやった。
「あ、ごめーん」るいるいさんは、指の代わりにライターを口の前に立てて微笑んだ。「わたしも花火やろっと」
 俺の線香花火の火球が、旺盛な「松葉」になった頃、るいるいさんの線香花火にも火がつき、「牡丹」になる。
 それから、しばらくの間、線香花火のパサパサと乾いた音が闇夜を漂った。
「あっ」
 前触れもなく、俺の火球が地面に落ちた。
「うふふ。ざんねーん」
 るいるいさんが屈託のない顔で笑う。
「ぼくが子供の頃って、線香花火の火球を最後まで落とさなかったら、願い事が叶うって言われてたんですよね」
「わたしのところもそうだったよ」
 るいるいさんの火花が小さくなり、やわらかな「柳」になった。
「そうですか。じゃあ、るいるいさん、あと少しで願い事が叶いますね。落とさないよう、頑張って下さい」
 火花の量がさらに減り、「柳」から「散り菊」へ。
 と、そのとき、形のいいるいるいさんの唇が小さく動いた。
「叶わないよ」
 唐突な言葉に、俺は「え?」と一文字で返していた。
「線香花火はね、頑張って成功させても、願い事は叶わないの」
「…………」
 清流の方から、ふわっと艶かしい夜風が吹いてくる。
 その風が、るいるいさんの花火をかすかに揺らした。
 まさにいま閉じかけていた「菊」が、ぽとり、と落ちてしまった。
 るいるいさんは「あー」とため息みたいな声をこぼして、火球の落ちた地面を見つめていた。
「叶わないんですか?」
 俺は、その横顔に問いかけた。
「うん。叶わなかったの」
「叶わな、かった――」
 るいるいさんは、過去形で言った。
「そうだよ。わたし、ちっちゃい頃ね、家族みんなでディズニーランドに行けますようにって、線香花火にお願い事をしたことがあるの。小学二年生の夏休み。はっきり覚えてるよ。でね、そのとき、線香花火は成功したのに、ディズニーランドには行けなかった」
「だから?」
「うん。叶わないの」
「あ、でも、そのときは行けなくても、これから行けば――」
 俺が浅はかなフォローを口にしたとき、顔を上げたるいるいさんが言葉をかぶせてきた。
「ううん。行けないよ」
「どうして?」
「死んじゃったから」
「え……」
「お父さんとお母さん、死んじゃったから」
 るいるいさんは淡々とした口調で言うと、「もう一本やろっと」と微笑んで、俺の方を見た。
「龍ちゃんも、やる?」
「あ、ぼくは、もう大丈夫です」
「オッケー」
 るいるいさんが線香花火に着火した。
 そして、どんどん姿形を変えていく火花を見つめながら、口元にやわらかな笑みを溜めた。その口が、過去をぽろり、ぽろりと語りはじめる。
「わたしのお父さんは日本人なの。ハンサムでね、いつもニコニコしてたの――」
 しかし、るいるいさんが小学二年生のときの秋に、ビルの工事現場で落下した資材の下敷きとなり、事故死してしまったのだそうだ。さらに、ルーマニア人のお母さんも、その年の冬に病死してしまったらしい。両親を失い、ひとりぼっちになったるいるいさんは、日本に住んでいる父方の祖父母に育てられた。そして、その祖父母もまた、とてもやさしい人たちなのだという。
「おじいちゃんとおばあちゃんね、いつも、わたしの花嫁衣装を見るのが夢だって言うの。だから、早く叶えてあげたいなぁって思ってたんだけど、わたし、フラれちゃった。だから、このツアーに来たの。あ……、また花火の玉、落ちちゃった。次、やろっと」
 るいるいさんは、続けざまに線香花火に火をつけた。
 シューッと火薬が燃えて、鼻をつくような匂いがしたと思うと、オレンジ色の火球「牡丹」ができた。
「るいるいさんみたいな美人がフラれるなんて、ぼくには想像がつかないなぁ」
 俺は、毒にも薬にもならないような台詞を口にした。
「うふふ。龍ちゃん、ありがとう」
 お礼を言われたとき、はじめてるいるいさんの淋しそうな微笑を見た気がした。
「わたしね、いじめられっ子だったの」
「…………」
「顔が日本人じゃないって言われて、みんなにハブられてたのね。幼稚園の頃から、ずっとだよ。友達がいなくて、淋しいから、大人しい子になっちゃった。でもね、小学校のとき、思い切って先生に相談したことがあるの。いじめられるのがつらいって。どうしようって。そしたら、その女の先生、いじめられるのはわたしのせいだって言ったの」
「え……」
「あなたが、はっきりモノを言わない子だから駄目なんだって」
「そんな」
「これからは、思ったことを大きな声で、はっきり相手に伝えなさいって叱られたの」
「それ、なんていうか……、きびしい先生ですね」
 俺は、言葉を選んだ。
 るいるいさんの線香花火が「松」になり、パサパサと火花を散らす。
 風向きが変わり、また火薬の匂いが鼻をついた。
「うん、きびしかったから、泣いちゃった。それから、わたし、ちゃんと大きな声で話すようにしようって思って、頑張りはじめたときに、お父さんが死んじゃったの。お母さんもね、病気でもうすぐ死んじゃうって分かってたから――、それからわたし、なるべくはっきり大きな声を出すようにしたの」
「いじめられないように、ですね」
「うーん……、それもあるけど、お母さんが生きてるうちに、わたしの気持ちをちゃんと全部、伝えたいなって思ったからかも」
 俺は、るいるいさんの横顔を見ながら、ごくり、と唾を飲み込んだ。
 線香花火の勢いが失われていく。
 俺の声も、勢いががれて、かすれたようになった。
「で、伝えられたんですか、お母さんに」
「うふふ。全部を伝えられたかどうかはね、いまでも分かんないの。でもね、よくお見舞いに行ったときに、病院のお母さんのベッドに潜り込んだりして、いっぱい甘えさせてもらった」
 るいるいさんの横顔の目元が少しやわらかくなった気がした。「柳」になった線香花火の光のなかに、当時のやさしい思い出を見ているのだろうか。
「そうですか」
「うん。お母さんが死んじゃってからはね、みんな、わたしのこと、可哀想って思ったみたいで、あんまりいじめられなくなってきたんだけど、でもね、声の大きな変わった子みたいに言われて、結局、お友達は出来なかったよ。うふふ」
 どこか空虚な感じで笑った拍子に、花火をつまんでいたるいるいさんの手がわずかに揺れた。
 ぽと。
 火球が落ちた。
 でも、るいるいさんはそのまま動かず、光のない花火の先端を見つめ続けた。
「おじいちゃんね、癌なの」
「え……」
「お母さんと、同じ病気だって」
 るいるいさんが、ゆっくりと顔をあげた。軽く頭を振って、ブロンドの髪を背中に流す。
「あんまり時間がないかも知れないから、わたしこのツアーから帰ったら、レンタル衣装のお店に行って花嫁衣装を借りようかなって思ってるんだ」
「花嫁衣装を着た姿を……」
「うん。見てもらうの。ついさっき、ひらめいたアイデア。龍ちゃん、いいと思わない?」
 いいのかどうか、俺には判断がつかない。
 小雪だったら、こんなとき、どんな言葉をかけてあげるのだろう?
「なるほど。そうですか」
 結局、俺はどっちつかずの台詞に逃げた。
 と、そのとき、るいるいさんの携帯電話が鳴った。
「あ、電話だ。龍ちゃん、これ、ちょっと持ってて」
 るいるいさんは、俺に線香花火とライターを押し付けると、ズボンのヒップポケットからスマートフォンを取り出した。そのまま液晶画面を確認する。
「あっ」
 相手の名前を見て短い声をあげたるいるいさんは、ただでさえ大きな目を、いっそう見開いていた。そして、少し慌てた様子で通話ボタンを押すと、スマートフォンを耳に押し当てた。
「もしもし?」
 久しぶりのキンキン声を出したと思ったら、るいるいさんはその声の大きさに気づいたのか、すぐに小声に戻した。
「うん、そう。いまね、ええと――、旅行中」
 しゃべりながら立ち上がると、るいるいさんは俺に向かって小さく手を振った。バイバイとやったのだ。そして、そのまますたすたと足早に歩き去っていく。
 どうやら、俺には聞かれたくない会話らしい。
「うん、そう。わたし、めっちゃ落ち込んでた」
 るいるいさんにしては抑えられた声が、闇に溶け入るように少しずつ小さくなっていく。
「え、うそ、ホントに? いま、車なの?」
 そこまで聞いて、俺も立ち上がった。
 押し付けられた線香花火のなかに、一本だけ未使用のものがあった。
 もったいないから、どこかでやろうかな。
 俺は、るいるいさんとは逆方向へと歩き出した。
 ふと、小雪の姿を目で探してしまう。
 校庭には、いくつかの人影と、線香花火の明かりが見えた。でも、どれが小雪のものなのかは判別がつかない。
 るいるいさんの声が、俺からどんどん遠ざかっていく。
 なんだかなぁ……。
 ぽつりと胸裏でつぶやいたとき、俺の足が止まった。
 またひとつ、小さな星がこぼれ落ちたのだ。
 流れ星は、誰かと一緒に見るのがいい。
 ひとりで見ると、むしろ淋しくなる。

(第17回につづく)

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森沢明夫Akio Morisawa

1969年千葉県生まれ。早稲田大学卒業。『津軽百年食堂』が2011年に映画化。2012年『あなたへ』が高倉健主演映画の小説版としてヒットする。『虹の岬の喫茶店』は2014年『虹の岬の物語』(主演・吉永小百合)として映画化され、話題に。2015年には『ライアの祈り』が映画化、『癒し屋キリコの約束』が連続ドラマに。他の著書に『夏美のホタル』『大事なことほど小声でささやく』『ミーコの宝箱』『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』、エッセイ『あおぞらビール』、カラフル連載が2016年1月に単行本刊行された『きらきら眼鏡』などがある。近著に『たまちゃんのおつかい便』。

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