双葉社web文芸マガジン[カラフル]

週末、死にたくなるあなたへ。(蝶々)

アルフォンス・ミュシャ 1897

第6回

 こんにちは。こよみの上では<大寒だいかん>も過ぎ、朝晩の冷え込みもキツイですね。
 毎日の通勤や通学も、そろそろつらくなってきてる人もいるのかも………って、私だってイヤだよ~この真冬の朝のつらさ!!
 ご近所さんからしたら、きっとわけのわからない自由業をしているとはいえ、子は幼稚園があるもので。世のお母さん方やOLさんたちと同じく、平日は私も7時前には起床。朝ごはんやらお弁当やらなんだかんだ準備をし、着替えと食事をさせ、昨晩用意しておいたリュックを持って、園バスが来るところまでダッシュで連れていってます。ノーメーク率、ごめん90%! そして、子の乗ったバスを笑顔で見送れば、とりあえずは一安心。
 でも最近は、この連載を始めたせいもあり、(ああ、今頃から、多くのお勤めの女性たちは、外での戦いがはじまるのね!)と、今朝のあなた、に想いを馳せたり、心の中でとっても応援してしまう。日々、園でいろいろ新しい挑戦や活動をしている娘のことと、かわるがわる想像しつつ、「おかんもいろいろ頑張るから、おねえさんたちも頑張ってー!」と想いを飛ばしたりしてる。勝手に想いを馳せられて気味悪いかもしれないけれど。近年、おかん的マインドが、私の中にどんどん広がっているからかな~。
 私はいつもただ、自分の本能や直感がそう思ったように動き、しゃべり、生きていて。
 もともと、自分がそう思わないことを言えないし、したくない。人の顔色や空気を読んだようなことをそれでも頑張って言ってみたところで、後々自分の気分や具合が悪くなるだけ。そんな風にうまいこと言ったり、その場を取りつくろってみたって、結局はお互いのためにならないことが多く、ごまかした分だけ余計に後で嫌な思いをする。なるべく本音で生きていたい。空気を読むとかソンタクの努力ではなく、好きな場所で好きなように生きられるように時間と頭と体を使う。だから、世間的にはちょっと変わった作家兼お母さんでも、私はストレスがたまりづらいのかもしれない。

ズルいオヤジとの取引や恋もどき。行き着く先は……!?

 でも、昨夜は、そんな私にとって、なんとも言えないやるせなさやストレスを感じる夜で!
 というのは、銀座の某寿司屋でお友達と遅めの新年会をしたんだけどさ。おいしい江戸前寿司や数の子なんかのつまみをいただきつつ、そこの大将といろいろお話ししていたら、「いやぁ、僕はもう結婚はこりごりですね!」。聞けば、元嫁さんと性格の不一致で3年前に離婚されており、40代前半の独身貴族生活満喫中、という。
「そうなんですね。でもお子さんは?」とつい、つっこんで尋ねると、「いないですし、いらないですね!」。イヤにきっぱりと言う。「え、どうしてですか?」「だって、自分の生活やエネルギーが半分になるじゃないですか、子供は持っていくでしょう」「うーん、それは………」そうかなぁ………。
 物理的に時間や体力が取られるようでも、自分の中から湧いてくる生きるエネルギーや幸福や希望の選択肢は、10倍くらいに増えるけど。私の場合、結婚の魅力はいまだよくわかっていないけれど、子供はそう。大将もいつかチャンスがきたらGO! と威勢よく右腕でも上げときたい気分だったけれど、熱燗あつかんがいい感じにまわってだるくなってたし、いくら本音で生きてると言っても(笑)、そもそも、寿司屋の大将にそんなセクハラ的なハッパをかけるのもね。
 お寿司はとっても素晴らしかったものの、(彼も、そこまで言うには、それなりのご事情もあるんだろうね。いろんな愛を信じられなくなるような。それとも仕事が超忙しくて重責も多いから?)(でも、そういえば、そういう企業戦士的な東京独身男子たち、けっこういるよなぁ………)といろんな知り合いの顔を浮かべつつも、どこかスッキリしないまま、行きつけのホテルのラウンジに移動。
 友人はお茶とケーキ、私は季節のいちごのカクテルを飲んだりしていたら………お次は、隣のソファ席に、かなりご年配で身なりの良い企業の社長らしき人と、大柄で巻き髪をした秘書風の30がらみの女性が登場。
(仕事の打ち合わせとかパーティーの続きかしらん?)となんとなく思いつつも、お友達と盛り上がっていたら、「男っていうのは。だから、そういうのがイヤだって言ってるのよ!」。まるでドラマの安ゼリフのような声が聞こえてくるじゃないですか。
 えっ? とつい横顔でチラリ振り返ると、秘書、マスカラを落としつつ泣いてるし……。
 よく見たら、社長さんは頭髪スケスケで初見の想像より年いってる感じ。秘書はグラマラスというか肉感的で、濃いめの化粧をしているせいもあり、怒ってるお顔がすごく老けて見える。そして、聞きたくなくても聞こえてくる、彼女のモロ不倫クレーム! 苛立いらだち! いきどおり! これが、痴話ちわげんかレベルではなく、公共の場で本気で相手を責め、怒っていらっしゃるので、こちらも心拍数が上がってくる。社長さんのほうは、「そうか、わかった、そうだな………」。エレガントなラウンジや周りの客の雰囲気を気にしつつ、なだめすかすのみ。
 ひどいようだけど、私はなんだかじわじわと嫌な気分に。(ごめんね、事情は知らないのだけど、あなたはすごくいやしくみじめに見える。そのエルメスのバッグも、何の対価かと疑ってしまう。そういう女性を見ていたら、何でだろう、あっちもこっちもベトついたり窒息するような気分で、こっちも生きる気力失せてくるんだよな~・・・)と。
 もちろん余計なお世話でしょうが、『オンナの自由』という著書でも熱く語っているように、私は、女性が不当な条件下でいいように扱われていたり、その気はなくとも、結果的にはずるいオヤジの恋愛ごっこのコマだったり奴隷どれい的な存在におとしめられている状況が、本当につらく悲しく、「しっかりしろ!」と思わずビンタかましたくなる性質なのです(しかも、私がつい発奮? を期待しがちな女性のほうに(笑))。
 目先、いい気がする? 不倫でも、すごく大人とつきあうと、売り上げだったり社内や仕事のごひいきだったり、何かもらえる気がする? イヤ、10倍オンナの幸せ運気と人間の徳を吸い取られているのよ。取引や恋もどきをしているつもりで、オヤジに手玉にとられてるだけ。仕事周りでも銀座でも、そんな愛人金太郎アメみたいなの、いっぱい見てきたけれど、<仕事(兼愛人)ばかりしていて、こんな人生になっちゃったわ………>と40や50を過ぎて、皆さんたそがれているよ。だいたい、あなたがどう生きるのも自由だけどさ、私たち楽しく新年会のシメしてるんだけど。あなたいくつよ。そんな恥をまき散らすのは、お家かどっか日陰ひかげでやってくれないかな~。。
 と、これまた、いろんな愛人さんたちのお顔(いろんな意味で、あまり美しくはない)を思い出し、本当にこっちまで物悲しい気分になっちゃったわけ。
 ついでに、(ほかのお客さんたちは大丈夫?)とふと見渡すと、そのラウンジで楽し気に歓談していた他の客は、タレントと芸能プロのマネージャー風の男性、あとは有名美容家とそのお弟子さんたちのような方々。
「華やかで素敵な場所だけど。ここはビジネスの世界で、心があったかくなるような愛は、どこにもないなぁ………」。そもそも場所選びを間違ったのかも、と後悔しつつ、私は妙にしょぼん。
 さらには、友人にホテルの玄関まで送ってもらい、別れたあと、エレベータに乗り若い男と目が合ったら………上のバーにいきませんか? とナンパされ、私はもうしゃっくりが出そう。(こんな夜中に、おかんが知らない男についてって飲むわけないでしょ)(っていうか、調子に乗って遅くまで遊んで、今夜は私が悪かったのね。早くおうちに帰りたい!)と、適当にまきつつも、がらにもなく、なんだか泣き出しそうになってしまって。いいトシして。
 そんなことも、ああいう色情地獄なのか魔界にはまってるような男も女も、銀座クラブや遊んでた時代に、さんざんっぱら見て慣れていたつもりなのに。(皆さん、人生ご自由に☆)と思うタイプで、そこまで野暮やぼでもなかったはずなのに。
 そして、思ったのです。(ああ、この過剰な拒否反応は、自分が毎日、愛の世界でほのぼの暮らしているからだ)。そして、(私でもこうなんだもん。東京砂漠で頑張る女子たち、家族や愛がそばにないとハードだなぁ、こりゃキツイ。すさむよなぁ………)と。

旬が過ぎた「買われた女の子」に残るモノ

 なぜなら、IT社長と若手女優さんの恋愛ニュースがちょっとしたブームであることも一つの象徴のように思うけれど、特に東京にいると、本当に<世の中金しだい、女は若さと美貌しだい>がむき出しかつ、加速しているように感じる。それも、仕事やプライベートが思うようにうまくいっていない女性を、(私は本当にダメ………)と余計に落ち込ませてしまう空気になっているのかもしれない。
 最近、仕事で対談した中小企業の若手社長さんも言っていた。「Facebookをしている人がつながって、ふとしたことから学生時代の同窓会をひらくことになったんです。すると、この年になってもFacebookをしているような人たちは、社会的にいわゆる成功をしていたり、リア充と呼ばれるような大人たちばかりで。学生時代のような人種の多様性はなかったのです。俺は医師で、俺は弁護士で、というような何故なぜかギラついた感じの会になり、正直、こんな同窓会では………と辟易へきえきしてしまいました」と。「普通の方々はなぜ来なかったの? どうされているのですか?」と尋ねたら、「生活するのに精いっぱいで、SNSで私生活など発信していないか、同窓会をやること自体は知っていても、盛り上がってる人たちの種類や様子がわかるので、来ないのでしょう」と。確かにイヤに寂しい、逆にケチくさいような話だ。でも、今の社会をあらわしているエピソードだな~と私は思って。ついでに、世間は貧困で苦しむ若者や家庭が増えているのに、広告代理店のおじさんたちは東京オリンピックで<これで、2025年まではうるおいます♪>とほくほくしてる、という話も各所から時々聞く。そこまでの潤いが確約されるって、よく知らないけど、すごいオリンピックの経済効果システムなんですね。

 私たち女性の世界の身近な例でも、世の中のシビアな現実のほうは、貧困児童の激増やら深刻な格差社会が問題になっているのに、(それって同じ世界の話?)と言わんばかりに、華やかな場所には華やかに装った人々が集まり、惜しげもなく贅沢ぜいたくや遊びを楽しみつつ過ごしている。
 美容院で女性誌をパラパラと読んでいても、ファッション誌ほど、なんだかそんな基準に基づいた話ばかりのように思えてしまう。私はトシもあり、(ほうか。今のトレンドやあおりは、こんなことになっているのね~)と思うだけだけど、こういうの、真面目に読みこんで「私もこんな大人のイイ女コーデしなくちゃ!」「部屋着もイイ女じゃなきゃ!」(←これ、本当にあって、吹き出してしまった)とか「いつかはエルメス! ごほうびシャネル!」とか「こんな彼氏や旦那をなんとかゲットしなくちゃ!」とか、一人お部屋で焦っちゃってる女子、いるのかな~。
 もしくは逆に、「ああ、私はこんなに買えないし、イイ女風に格好ついてない。ダメな女だわ」とか思っちゃう女子はいないかしら。いなけりゃいいんだけど。それで焦って、あほな女学生のマネをして<パパ活>とか愛人契約みたいな、要は身売りなんか、しないように。老婆心百点満点ながら、前述のようにそれは結局はバカしか見ないから。
 だいたい、こういうのつくってる雑誌の方々もけっこう知っている気がするけれど、皆さん、尋常じゃない忙しさに追われていることに加え、たけに合わないものやら流行のものやらで常に自分を固めなきゃならない空気に縛られ、気の毒なほどストレスがたまっていたり、くたびれていらっしゃる。「でも、お仕事だもんね………おつかれさまです!」という感じ。

 女の子たちに夢や憧れを売っているけれど、それをそのように買える人はごくごくわずかで、売ってる人もくたくたで疲れ切ってて………って、本当に、誰トク?
 わるいけど、以前書いたホストの話とそう変わらないシステムなのでは? 資本主義社会だからそういうものだ、受験戦争も就活だって同じ、と言われればそれまでだけど………<買える人、買えない人>からの、<勝ち組、負け組>風に、ざっくり分けられてしまいがちな東京的なルールの世界って、つきつめるほど、ホリエモンさん的な<稼ぐが勝ち!>に自然、なる。そして、稼いでさえいれば、仮に人品じんぴん卑しくとも、人として当たり前の思いやりや細やかな感性がなくても、物質的には豊かな生活が送れ、<勝ち組>風になれたり、もしかしたら、そう利口じゃない女の子が買える、のかもしれない。それって、なんか最先端でも人間界でさえもなく、人身売買の世界とか畜生界ちくしようかいのようだと思うんだけどね?
 しかし、その時は買われた女の子だって、やがて、鮮度が落ちたり旬が過ぎたら、死にたくなってしまうかもしれない。そういうお金の世界のやからは、必ずまた、人より早いサイクルで、新しい車や時計や女が欲しくなるだろうから。そして、その時、その子には<身の丈じゃない世界を見せてもらった代わりに、すごいスピードで消費された>という喪失感とひどいみじめさが残るだろうから。あの女優さんは大丈夫かな。

 お金はもちろん生活に必要。お金があればできること、救える誰かも事実あるでしょう。それでも、お金至上やそれが基準の世界って、やっぱり、だいたいの人が楽しくなれない仕組みだなぁ………あまり真面目には関わりたくないな、女性たちにもそんな世界にあおられたり踊らされてほしくない、と私は時々考えてしまう。みんながそれぞれの身の丈で満足し、楽しく暮らせる世界って、もはや夢物語なのかしら。それはどこにあり、どうしたらいいんだろう? と考えてしまう。

「お金がすべて!」「今さえよければ!」は悪魔のトラップ

 結局は、自分自身が、器に見合った毎日を生き、今の自分にふさわしい人々とつきあったりつながったりしながら人生を学び、堅実に人生を選択していくことしかできないな、という結論になる。住む場所、買うもの、日々食べるものひとつとっても、自分の身の丈を心に留めつつ、ハレとケそして理想と現実の収支バランスをしっかり考えながら、選んだり行動していく。それって、どこにも無理がないし、人としても着実に成長していける実感があり、じつは、真に生きがいがあり楽しいことなんだけどね。
 一見合理的だったり、目先得なようであっても、お金至上や成功するが勝ち!のような価値観や空気に押されて、女の子たち、あなたらしくないやり方や大事な人に胸を張って言えないような世界に、流されてしまいませんように。そして、そんなことで(例えば、役割が華やかであるナシだったり、稼いでる稼いでない、旦那や子供がいるいない、のような基準で)、どうか自分を卑下ひげしたり死にたくなったりしませんように。
 こんなに過酷で忙しい現代の中で、頑張ってお勤めや主婦をしたりして、他人様ひとさまにたいした迷惑もかけずに生きてる、ってすごいと思う。いち社会人として、気分がいい日も悪い日もあれば喜怒哀楽もある、人間らしい一人の女性として生きているだけで、あなたも私も上等なんだよ。でもそれを、誰もハッキリ言わなかったり、わからなくなりがちな世の中の空気のほうがヘン。
 もっともっと! お金がすべて! 今だけよければ! という価値観や考えは、ネットの世界や本屋に行っても、近年はあふれているような気がするけれど………どこまで行っても、そのやり方では、本当の愛と自信、人間性の成熟は得られない気がする。乱暴にくくれば、それは悪魔のトラップみたいなもんだと思う。ほっとけばいい。物欲しげに憧れたりあがめたりする必要もまったくない(蛇足だそくかもだけど、仕事や家庭で頑張って、結果、お金がついてきた、とか、頑張ってお金を貯めて憧れていたものを買った! みたいな話とは別ですよ)。
 人間的な心や<本当にこれってアリ?>と胸の内に生まれる違和感を殺してまで合理的に生きて、たとえお金は得られたとしても、どこか渇望感かつぼうかん寂寥感せきりようかんを抱えてさまよい続ける人生を目指すのは、女性には特におすすめしない。私が知る国内外の超お金持ちの方々は、驚くほどにそういう人が多かったし、例外なく、見た目がなんだかモンスターみたいな仕上がりになってるぞ。

 昨夜、私がすごくストレスを感じてしまったのは、たぶん、そういう世界の犠牲者たちを垣間かいま見させられたような気がしたんだろうな。
 家に帰ったら、ばぁばと一緒に私を待ちわびていた娘が、折り紙でつくったリボンをいっぱいくっつけた自作の封筒を渡しながら、ドスッと抱きついてきた。せかされつつ封を開けたら、お手紙と、彼女のとっておきのガラスのハートが入ってて、「ママにあげる!」って。娘はあげたがりなのだ。私もあなたも、小さな頃は、みんなそんな女の子だったかもしれないのにね。オチがないようで悪いけど、今週は、なんかそんなことが言いたくなったのよね。
 明日もなんとか正気で頑張ろうね~!
(第7回へつづく)

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蝶々Chocho

作家・エッセイスト。コピーライター兼銀座ホステス時代に綴っていたブログが人気を呼び、2002年『銀座小悪魔日記』(宙出版)でデビュー。『小悪魔な女になる方法』(大和出版)がベストセラーとなり、幅広い世代の女性から絶大な支持を得る。単なるモテ指南とは一線を画した、真に幸福で自由な人生を送るためのテクニックを、聖俗両面から愛をもって発信中。著書多数。
公式ブログ;chochoママしぼり
http://blog.goo.ne.jp/chochochan
会員サイト;chocho女神クラブ
https://chocho-u.com/megamiclub2018

 

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