双葉社web文芸マガジン[カラフル]

週末、死にたくなるあなたへ。(蝶々)

アルフォンス・ミュシャ 1897

第4回

 こんにちは。Xmas、そしてこれから年末年始ですね。
 ひとまずは、この一年もがんばってきたあなたと私、おつかれさまでした♡

 先日、都心の電車内で、子供と座ってる私の前に立ちながら、専門学校生とおぼしき若い娘さんたちが、学校の友達や就活、そして人生を語り合っていて。
「ってか、あの人やばくない?」「超やばい」「授業だるいよね」「超絶だるい」。みたいなノリで、あれこれを延々と真剣な顔でうれいあっており………私は思わず笑ってました。
(ヒマでいいな。あんたらめっちゃ可愛いね)と。
 ――というのも、その前、私は長年お世話になっている銀座のひろこママという70歳のちゃきちゃき江戸っ子・名人母さんのヘッド・マッサージを受けていて。私の頭をぐいぐいとほぐしつつ、彼女、「蝶々さん。今年はどんな一年でした? 私の今年の一字はね………“激”だったわ」と言うもんだから、私はもう爆笑。「吹き出しちゃってすみません。でも私、70歳の時に、そんなに熱く生きている自信ないかも~、ゲキって!」と正直に言いました。
 ひろこママいわく、50歳の時に大手化粧品メーカーから独立し、借金を抱えながらのスタート以来、何十年と立ちっぱなしで、女性の美と健康に向き合い、人生をかけてきた仕事。
 けれど、年齢的な問題もあり、悩みに悩んで、2019年春での引退を決めた最後の一年だったので………激烈に精魂込めて仕事され、激烈に取捨選択し、結果、激烈に本当のプロになった一年だった! というのです。70にして点と線がつながった! と。
 ――ね、あなたも、30やそこらで週末死にたくなってる場合じゃないわけよ。
 というのは半分冗談で(半分は本気)。
 確かに、前述の専門学生さんたちじゃないけれど、女もハタチ超えたら、年々いろいろあるし、若いゆえに感じすぎたり焦ったり、不安や不満に思うことも、多々出てくるもの。私にも覚えはある。
 かといって、たとえば結婚して子供がいて、40超えてたって………女である限り、やっぱりいろいろあるものだけど(責任は増え、体や美貌も老化してきたり。良くも悪くも、現実や自分というものが、よりハッキリと見えてきたりね)。
 でも、こわがらなくても大丈夫。どんな女も、年を重ねるごとに、生きる知恵だったり開き直りもついてくるもの。どんなに不器用な女にだって年の功ってものはあって、生きれば生きるほど、自分自身の感情や肉体システムや取説(トリセツ)も、なんとなくわかってくる。ひろこママも、すでに40代の時に、医師にはペースメーカーをすすめられる心臓の疾患がありながら、“私の場合はね、入れるとかえって死ぬ気がするわけ!”“死ぬときは蝶々さんのマッサージしてる時かもしれないから、よろしくね”と、キレキレの(?)軽口を立て続けに放ちながら、何十年とそのまま生き、今のところ、ひとまずあと数か月の引退の日に向かって、より精力的に熱く働かれている。

 だから、あなたが今20代でも30代でも40代でも、ピンチだったりビンビンに辛い時を、なんとかかんとか乗り越えられれば――それが人生というものかもしれないし――ごほうびやおまけは、後からついてくるから。つまり、女人生後になるほど、いたしかたのない人生の諸事情や脂肪はついてきたって、本体の自分自身は、不思議と、ラクに楽しく生きやすくなるものです。石にかじりついてでも、そこの境地までは生きないと!
 毎日ただ、風に吹かれて季節のめぐりを感じつつ、様々を味わい、自分の内でも外でも、日々何かと出会ったり別れたり。めまぐるしく、何かが死んだり生まれたりしつつ、世の中のカテゴリー的には、女として生きていること。
 それだけで、なんかしあわせで気持ちよく、かつ面白くって、それこそはしが転がるだけで笑えたあの日々が再び! という感じ。
 実際、私は、ひろこママにお世話になるようになって10年以上たつんだけど………最近は、彼女のサロンのドアをあけて、お互い顔を合わせるだけで、「ぷぷっ」と笑いあっている。年齢や立場や関係やキャラを超えて、互いがその境地にある、ことがわかるからだと思う。
「なに能天気なこと言ってんだ、このばばあ!」とかイラっとしないでね。してもいいけど。
 あなたが今、落ち込んでても、死にたくなってても、連載読んでイラっときても、気持ちは自由。感じることは仕方ない、それはそれでいい。
 でも、自分から死んだらダメ。ソンしかない。とにかく何があろうと生き抜く気持ちで。女人生、この先が面白いんだから! ってことが言いたいだけ。この境地になったら、絶対、死にたくなんかなくなるし。今、あなたが死にたくなるほど悩んだり落ちていた意味のナンセンスさも、その時やっとわかると思う。

女の現世利益は、手に届く「嬉しい」「おいしい」「気持ちいい」から。

 さてさて、いきなりだけど、あなたのおうちは片付いている?
 めんどくさいお片付け。忙しくなるとついつい後回しにするお片付け。
 これ、日ごろから、時間や余力あるとき、お部屋の整理整頓や粗大ごみの集配依頼など、1つずつでいいので<確実に>すすめておくといいですよ。年末の大掃除シーズンに限らず、ふだんから余力ある日などあれば、気になる個所をエイヤッと大掃除! するのも、やってみちゃえば、じつに気分がサッパリするもの。
 私は深夜に時々します。
 ええい、どうせ今夜は眠れないなら、インナー×靴下類をぜんぶひっぱり出しての整理整頓! それから、床と洗面台を磨き上げとくー! とかね。それで、気分は超スッキリ。からだも適度に動かすおかげでぐっすり眠れる。ま、やりすぎると翌日寝不足になっちゃうけれど、はかどらない仕事や勉強などを、もちゃもちゃこねくりまわして、夜中にお菓子とか食べて胃もたれしてるより、よほどいい。女は切り替えが大事。
 だいたい、深夜にモンモンとネット・サーフィンとか考え事とか夜の街徘徊(←これは若いころの私の場合)とかしてて、ろくなことになったためしはないのでね。あなたも思い当たることない?
 ネット通販で思わずポチッとしまくってみたり、どこまでも人や世界に疑心暗鬼になりそうなアングラ・ニュースを拾ってみたり、実際、やばいコミュニティだったり男とつながってしまったり、ね。
 座間事件の“首吊り士”じゃないけれど、ネットという隠れみのを使って顔や正体を隠して女性をだまそうとしてるようなサイトやツイッターなど見ると、私はこう思ってしまう。(こいつら~………学生時代に同じクラスだったら女子たちに相手にもされないような、ダサいやつだったんだろうな~。女子、騙されないでね)と。
 とはいえ、身を隠さず、ホストでもなく、経歴も見た目も一見立派な人で、悩める女の子につけこんで、ウソをついては性的な関係を持ちまくっていた有名精神科医などもいましたね。有名週刊誌の記事になる前後、私の会員制サイトのメンバーの方でも、じつは2名ほど同様の被害にあった方からダイレクト・メールでのご報告があった。
 まず、「蝶々さんはこんな先生を知っていますか? 本もいっぱい出している人なんです。彼に誘われて………でもその後はつれなくて」みたいなご報告を読んで、(誰それ?)とぼんやり気になっていたところ、事件が発覚し、「ざまあみろ! やっぱり! と思いました! 私も同じ被害にあってます!」という妙に明るいメールをくださった別の被害女性が一人。
 私は、そいつがどうこうというよりも、「うちのサイト内でも2名。。報道されてるどころじゃなさそう、どんだけの性的被害者が」というのと、「現代女子たち、悩んでるなぁ………。悩み深かったり若い子ほど、本当に見抜く目やガイドラインがないと、危ないのかも」と暗澹あんたんとした(子宮しきゆうを過剰に神聖化し、下腹部にパワーストーンを入れてみたりの子宮系が流行った? 時も、もちろん同じような遠い目になっていた)。

 そいつがどうこうというよりも、というのは、私も、ともかく様々な女の人たちのお悩みや生の声を常時聞く仕事をしているので、「悩める女につけこむ男。悩める人につけこみすぎる悪魔や金の亡者もうじや。それって、定番」、「もともとはいい人であっても、相手があんまり無防備でゆるいと、男はオトコだけに、魔がさすことがある」、「痛い目にあって、自分の見る目や、生きることについての認識の甘さを学ぶしかない………」というあきらめの気持ちも、冷たいようだけど、多少あるから。
 他にも、スケールの小さいところでは、社内不倫から婚活詐欺さぎ。代々で折り重なってきている深刻でこんがらがったお悩みの多い、新興宗教にまつわる懊悩おうのうまで。
 お寺さんに<私も解脱げだつしたい(!?)>と修行に行ったら、尊敬していたお坊さんに「おまえは俺のものだからな」と長年大事にしていた処女を奪われた、なんて、母親気分で聞くには、切なすぎる話もあった。「どんな寺だよ!」と本当は血管ぶちぎれそうだったけど、それでも、自分の現状や本当にすべきことを無視して、変なところに突っ込んでしまった彼女自身がいた種であり、学びだ、ともいえる。

 あのね、蝶々母さん、悪いこと言わない。
 あなたもどうしても眠れない夜! つらくて寂しくて悩んで、いても立ってもいられないとき。
 つまんないこと言うようだけど、そんな時ほど、身の回りから。
 お部屋や気になってたクローゼットのお掃除や整理整頓したり、冬服のコーディネートをあれこれ試してみたり、明日のごはんの下準備とかしてたほうが、なんぼかトクだしスッキリするよ。現世利益満載げんぜりやくまんさいだよ!
 煮込み系の料理をつくるのもおすすめ。私はよく、野菜コーナーの整理整頓も兼ねて、あまり野菜の切れハシを煮込んだデトックス・スープや、鶏ガラのスープ・ストックなんかをとってます。夜のキッチンに充満するおいしい香りでいやされるし、<これ食べて(食べさせて!)明日もがんばろう!>という気分になれる、しんから力のわくゴハンができる。自分でつくるほかほかスープは、一見おしゃれなスープ屋さんでチンされてるスープなんかより、鮮度もパワーもメじゃないです。ホントに。
 そんなふうに、日ごろから、ちょっとおいしいものを食べたり、自分が心地よく過ごせるようマメに工夫してみたり、まずは自分で自分をいたわり、癒してあげる意識をもってみて。もちろんボーナスなど奮発ふんぱつして、あこがれていた美しいものを買ってみたり、温泉旅行やエステなどに行くのもいいと思う。そんな予算がなければ、冬の鮮やかな花束やバスアイテムを自分に買ってみるのもいい。できるだけ目に見えて味わえて感じられる、<実のあるもの>がいい。
 要は、物のパワーを借りながらでも、あなたがちょっといい気分だったり元気になれればいいわけで。そういう満ちてる………までいかずとも、女として健全な状態だったら、そうそうホストクラブに通ったり、怪しい精神科医やカウンセラーに大金や体をささげたり、変な師匠や先生や、離婚するする詐欺みたいな上司や男に騙されたりは、しない(私は経験ない)。
 少しくらい贅沢ぜいたくしちゃったとしても、「ああ、おいしかった」「ああ、気持ちいい」と、あなたが地に足のついた確かな喜びを得られ、日々を回していく気力が充電されればいい。女も、長い人生を楽しんで過ごしていくためには、そんなことって、案外大事なことなのよね。

 というのも、「セルフネグレクト」という言葉をあなたはご存じ?
 これ、今や都会の男性を中心に急増しており、ぷち社会問題化しているという<孤独死>のキーワードで。その多くが30代以降の男性らしいんだけど、彼らは公私とも、他者や世界とのコミュニケーションがほとんどなく、会社勤務以外は、誰かと会ったり会話することもないライフスタイルを送る。そして、食事も当然のように孤食こしよくで、コンビニや外食一辺倒。趣味のDVDや雑誌などに埋もれ、部屋は散乱し、最期は、ゴミのような部屋の中で、病死や急死などで1人で亡くなってしまう。しかも他者とのネットワークやコミュニケーションがないため、死後もしばらく発見されない。。。
 このケース、ニュースなどで騒がれるようになる前から………じつは、私の知り合いや仕事相手が多い大手出版社界隈かいわいでも、ここ数年で時折聞くようになっていて。
 もちろん、兆候ちようこうはあるようなのです。
 まずは、身なりに構わなくなって、言葉や会話が少なくなっていること。さらに、一時うつ病などで通院していたり若くして大病やガンをわずらったりして、会社を欠勤しがちになっていること。はたまた、仕事の失敗や離婚などを機に精神不安定になっていたり………そして共通するのは、上司や会社とのコミュニケーションもとりづらくなっていたこと。だから、死の知らせも、周りはショックながら、どこか「ああ………」という空気だったり。そしてSNS上ではどうだか知らないけれど、ふだんからつながっている現実のコミュニティや人間関係がないため、発見も、死後一週間など遅れてしまい、現場は悲惨なことになっているそう。
 スピリチュアルな世界では、自己肯定感♡自分を愛する♡などよく聞くと思うし、私も言っているけれど、あれはバカにしたものではなく、実際、その対極にある<セルフネグレクト>は、ゆるやかな死のはじまりで、その兆候である、と。さらに、人と話さなくなったり、周りと断絶しはじめると、かなり危険信号。あなたは大丈夫、だよね?

 忙しさや失敗や失意や折り重なった疲れなどで、しだいにすべてがどうでもよくなってくると………女も部屋は荒れ、自分に構わなくなる。ガサガサのかかと、パサパサのつやのない髪や乾いて荒れた肌、実年齢よりうんと老けたように見える顔。
 それらは、鏡を見るたび自分を落ち込ませると同時に、「自分はそもそも、大切にされるようなものではない」と、自分自身の潜在意識に悪い信号を送ってしまう、と私は思う。
 そんなことはないんだから。そんな女はいないのだから、しっかりして、まずは大事な自分を<当たり前に>ケアしよう。
 冷たい水で顔を洗って、化粧水つけて、パックでもする(肌はささやかでも手をかけるほど、いくつからでも状態はよくなる)。そのへんのドラッグストアで買ってきた保湿クリームでいいから、かかとやひじにクリームぬって。できたら、美容院でヘアカットやトリートメントして。時間できたら、お部屋の片付けも、少しずつ。そして、忙しければ週に1回からでいいから、自分でつくったのでもごはん屋さんのでもいいから、ちゃんとダシからとったような、季節を感じるきちんとしたごはんを食べること。どうしても疲れてそれができないのであれば、会社なんて1日くらい休んで、まずは眠りこける日があったっていいじゃない?
「そんなこと」って思うかもしれないけれど、そんな基本的な日々の充実や自分をケアすることが、多くの女や人々の元気や命や明るさをつないできたベースだと、私は年々感じているよ。
 寒くなってきて、最近、子供の足の親指の爪がちょこっと割れて痛がっていた。私は、意識して油分やたんぱく質の豊富な料理を増やしたり、お風呂上がりに毎晩つま先にワセリンを塗りこむようにした。1本1本。すると一週間後くらいには、もうすっかり健康な欠けのない爪になっていた。「若いっていいね!」と思いつつ、自分もそうして、あらゆる手当てあてや思いやりをかけられつつ、育てられたんだな~としみじみと思った。育児の日々はそんなことばかり。子供がいようがいなかろうが、あなただって、そうなのよ。
 私を含め多くの大人たちは、一人で大きくなったように錯覚さつかくしているけれど、違う。少なくとも親や先祖から肉体をもらったし、それを手をかけて育んでもらったし、そこをさしおいても、一人一人が、いろいろつまった超大切な体!
 だから、大人になった私たちは、自分で自分を大事にしなくちゃ。セルフネグレクトなし! セルフラバー一択いつたくで。
 あなたも私も、どこにも代わりなどいない、世界でたった一人の、誰かの大切な娘さん。何歳とか過去とか、うるさい全然関係ない。あなたも大切なお嬢さん。こんな世の中でも頑張っている自分をいたわり、受け入れ、どうかまずあなた自身から、大切にしてあげてください。2019年も、あまり無理せず、心地よくいきましょうね。
(第5回へつづく)

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蝶々Chocho

作家・エッセイスト。コピーライター兼銀座ホステス時代に綴っていたブログが人気を呼び、2002年『銀座小悪魔日記』(宙出版)でデビュー。『小悪魔な女になる方法』(大和出版)がベストセラーとなり、幅広い世代の女性から絶大な支持を得る。単なるモテ指南とは一線を画した、真に幸福で自由な人生を送るためのテクニックを、聖俗両面から愛をもって発信中。著書多数。
公式ブログ;chochoママしぼり
http://blog.goo.ne.jp/chochochan
会員サイト;chocho女神クラブ
https://chocho-u.com/megamiclub2018

 

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