双葉社web文芸マガジン[カラフル]

週末、死にたくなるあなたへ。(蝶々)

アルフォンス・ミュシャ 1897

第3回

 いつも気の早い繁華街やデパートのあちこちでは、X‘masイルミネーションがキラキラ輝いているこの季節。そう、もう師走しわすなんですね。
 お互いに慌ただしい日々の中だけど。今日も元気に、もしくは、なんとか生きてますね?(ともかく、これを読んでくださってるってことは)

 そういう私も、今はまだ、生きています。
 夕方から、クリーム・シチューを煮込みながら、子供といっしょにリビングのフロアをぐちゃぐちゃにして、空段ボール箱での人形のおうち製作。日中、外で拾ってきた紅葉や葉っぱで飾りつけをしたりして、毎度、後の掃除が大変なんだけど!
 そして、フローリングに掃除機をかけたり、はいつくばって床をふいたりしながらも、私はやっぱり、ずっと心のどこかで、あなたのことを考えている。<生きてることそのものが、なんだかしんどいし、空しいし、さみしい>。
 たった今も、そんな思いにとらわれたり、もがいている女性たちのことを考えながら、その後、夜更けにそっとベッドを抜け出して、この原稿を書いている、というわけ。

 それにしても、一年は、年々、本当にあっという間で。母や年配の方々がぼやくように言っていたように、私も最近、しみじみそう感じる。
 遠い昔、特に学校に通っていたころは、ともかく一時間、一時間が過ぎるのが遅くって。「まだ、こんな時間かぁ……」「あと4限もあるの! 退屈で退屈で死にそう」小さな私は、何度もため息をつきながら、教室の時計を仰ぎ眺めたり、こっそり漫画を読んだり落書きをしたり、先生の目を盗んでは友達に手紙をしたためたりしていたなぁ………あなたにも覚えがあるでしょう?
 そして、なんとかかんとか、命を落とさず無事にオトナ女性となり、社会に出たあなたと私。
 出てみてびっくり、そこは東京砂漠をはじめとする、企業利権と効率第一主義の金権ワールド(そうじゃない世界があっても、それらは、わかりやすく幅をきかせたりメディアに登場することは少なく、ひっそりと存在している)。
 小泉政権のころから急増し、責任も軽くフレキシブルに働けるようでいて、結局は企業側のいいように使われる側面の多い派遣社員システムが代表するように、けなげで責任感も誠意もある女子ほど、真面目に働けば働くほどに、気が付くとなぜかもろもろ吸い上げられっぱなしのこの世界。
(でも、これが普通だもんね?)
(でも、これが社会人ってことだよね?)
 と根性入れるところを間違えて、妙にまじめにやっているうちに、(あれ、私、ちょっとの対価や、いかにももろそうな保障とひきかえに、心身の健康や若さや希望やうるおいを思いっきりとられていたのかもしれない…………?)と、ようやっとみんなが気づいてくる。
 でも、気づいたころには、すでに疲れ切って死にたくなってたり。若いのにガンやらひどい病気になっている人も、すでに異常なくらいに多発。若くても、有り余ってるくらいにイキイキ☆元気な人なんて、もはや希少珍種レベル。それも、この現代の倦怠感けんたいかんとやる気ないムードの一因かもしれないな、と私は感じてる。
 一方で、ちょっとでも儲かる話、お金があればなんとかなるからSNSでとにかく稼ごう! パパ活しよう! お金の神様に愛されるために(!?)など、普通に考えたらバカみたいな話が横行していたりする。バカみたい、なんて言葉が悪いか。いいかえれば、女たちも、それほど、追い詰められていたり、まともに生きるのが大変になっちゃっている、ということよね。そんなニュースやサイトなどをふとかいま見てしまうたび、私は物悲しい気分になる。

 そんな風に、今の世に言いたいことなら、書いていいなら、私だっていくらでもあるわけで。
 能天気に明るい未来を信じて、れっつら・ゴー☆って………自分でいうけど、私くらい長年、あたりを気にせず超マイペースで生きてる天然の変な人(?)じゃないと、なかなか無理な相談かもしれない、と正直思ったりする日もある。
 頻発ひんぱつする家族間やら通りすがりの殺人事件に、いまだ記憶に新しい電通の新人女子社員の自殺ニュース。バカすぎるMr.東大やらMr.慶応などの有名大学生たちの性的犯罪。突然キレたりおかしくなって女子供を襲う人々の続出。若く可愛いアイドルたちの情け容赦ようしやない消費と消耗しようもうのスピード感。日々のニュースを見ていてもわかるように、私たちの生きてるこの世界、なかなかに、世紀末感あるよねえ。
 そして、こんな金権&世紀末ワールドだって、それでもいわゆる“うまいことやれる人”。それは、ごく一部の超特権階級に所属している人か超特殊な才能の持ち主か。多くは、それにいまだかまされてる超鈍感か夢の中の人。それに真面目にハァハァ興奮できちゃう超強欲な人なだけでは? と、にらんでる。
 というわけで、ほとんどの人には、今の社会やシステムは、そもそもそんなには優しくない。特にやわらかでデリケートな物性の私たち女性には。
 だったらせめて、景色や空気のいいとこで、女性らしく人間らしく、季節や日々を味わえるくらいには余裕をもって暮らしたい、と私は長年感じ、人生のさまざまを選択してきた(そう気づいた数多くの出来事や自分の変遷については、『小悪魔卒業宣言!』(小学館)という本に詳しいので、ご興味あれば)。
 今の多くの若者や普通の人々のように、高級車だったりタワマンだったり三ツ星レストランでの接待ディナーなんて、本気でまったくいらないので。ご近所を自転車でまわって旬の野菜や魚とか買って、毎日のように神社や公園にお散歩にいって、家族と紅葉やどんぐりをポケットにいっぱい詰めて家路につくような暮らしが、本当に良いし、しあわせだ。

不安で、むなしくて、愛がほしくて、孤独。

 そんな私のイメージや願いとは、完全に対極にあるような、かの有名な新宿歌舞伎町。
 みなさんもご存じですよね?
 飲み屋街やラブホテル、ホストクラブも軒を連ねるあのエリアには、私が銀座OLだったころにも、彼氏にごくたまに連れていかれるくらいで、めったに足を踏み入れることはなかった。猥雑わいざつな空気や匂いが、当時から私はひどく苦手だったので。
 そして、この10月………その新宿歌舞伎町では、少なくとも7人が飛び降り自殺や未遂をしたそうな。女性はそのうち5名。1人が30代、残り4人は全員20代だという。
 毎日新聞の記者さんが、その中の二十歳はたちそこそこの女性を追って、<ホストの街に散る命>というルポタージュをされているので、ご興味のある方は検索して読んでみてください。

 かいつまんで言うと、まだ若い彼女は、現代なのか都会生活の寂しさからか、あるホストにはまり、200万円の借金を負っていたという。
「優しくしてくれる」「話を聞いてくれる」という理由から、やがて風俗に身を落としてでも、ホストクラブに通うようになる。そして、<愛>のカタチとして、女は彼に、一生懸命お金を貢ぐ。そうこうするうちに、支払いは追いつかなくなり、店側の本気の取り立てが始まるころ………ホストの彼は、自分を<金>としか見ていないとようやく気づき、絶望する。そのころには、もう首が回らず、何より頑張る気力そのものが失せている。
 歌舞伎町では、今やそのようにホストにはまり、風俗に飛び込んでいく若い女の人など、掃いて捨てるほどいるのだという。

 この話も、あなたはホストにはまった、若くて愚かな女の子の話、と思うだろうか?
 ちょっと考えてみれば、歌舞伎町を丸の内に変えてみても、ホスト業界を大学の奨学金制度や金融業界に変えてみても………似たような仕組みの話は、この現代、いくらでもあるのでは。
 少し前なら、高額なブランド・ショッピングやネットや通販番組での買い物にはまる人。怪しい高額セミナーや新興宗教などに大金をつぎ込み、当たり前の日々や普通の人間関係、社会生活が破綻していく人。最近では、ツイッターで自殺仲間をつのる人から不倫ブームまで。
 カタチは違えど、そんな人々は、すでに珍しくもなんともない世の中じゃないの。

 あらわれはいろいろであっても、真ん中に共通しているのは、みんなどうしようもなく、不安で、むなしくて、愛がほしくて、孤独である、ということ。だけど、SNSばかりが発達し、人々同士の生身のコミュニケーションや助け合うネットワークの少ない社会では、真に温かいコミュニケーションが得られにくい。

 まだ若すぎるほど若い彼女は、飛び降り自殺をする少し前、知り合いの子に、「人生詰んだ」と言っていたらしい。人生詰んだ、って………胸が張り裂けそうになる。詰んでなんかいないのに!!
 これから女として黄金期を迎えていくはずの彼女がそう思ってしまうほどの、救いのない都会のシステムや魔の吸引のようなものが、やはり私たちの生きてる社会のどこかにも、確実に渦巻うずまいているんだと思う。心身健康な女の子ならば、社会見学や好奇心で、ならまだしも、ホストクラブにも、そうそうは通わない。だけど、若くて世の中を知らなかったり、不器用でうっかり弱りすぎていたり、頼れる大人や救済の場所やネットワークとつながっていないと………ふとよろめいて、そんなぬかるみに思わず深く足をとられてしまう。
 さらに、「救いのないシステム」というのは、一見搾取さくしゆしている側にみえるホストたちも、じつはその多くは売り上げやノルマに追われ、決して安定しているわけでも豊かに暮らせているわけでもなく、彼らも病んで破綻はたんしていく人が多い、という現実。
 どうしようもない寂しさと、毎月の売り上げ高を交換するだけで、本当には誰も幸せになっていないのに、回る回る、から回る都会のメリーゴーランド。誰一人、本当に満たされるものなど口にしていないのに、どんどん変わるきらびやかなネタを載せて、ぐるぐる回る都会の回転ずし。

 私も、足かけ5年ほど銀座クラブにいたから、わからなくはない。
 義理人情があるようでいて、ハッキリと弱肉強食と売り上げ至上主義の世界。
 しかも、女は綺麗で色っぽく、集客(金)力があること。男は、金を持っていて、さらに気前がいいこと。誰がどう言おうが、それだけが、そこでの一番の価値。夜の世界は、今の資本主義社会や人々の煩悩ぼんのうが、超デフォルメされて、きらびやかにデコレーションされたような世界だ。
 向いている人には向いている、のかもしれない。芸能界と同じで、そこで生きるために生まれてきたような、そこでしか生きられないような人種もいるのかもしれない。だけど、普通の家や環境で育てられていたり、繊細な人には、長い勤務はきついと思う。私は最初からココで生きることは無理、と判断しつつも、社会勉強と小遣い稼ぎ気分で働いていた、食えない女だった。

 実際、同僚のヘルプの女の子で、成績も伸びず睡眠不足続きからうつになり、自殺してしまった若い女の子もいた。絵描きを目指して、可愛い猫のイラストを描いていたゆうこちゃん。変な表現だけど、ある日、あまりにもふっと、いなくなっていた。
「ゆうこちゃん、睡眠薬を大量に飲んで、死んでしまったんだって」と彼女を気にかけていた優しい客が、そのニュースをポツリと伝え、私をはじめ、店でホステス同士として交流のあった同僚が「最近確かに青ざめて痩せていたけど、そんなに悩んでいたんだ」とショックを受けたくらいで………かといって、一介のヘルプの彼女の自宅や状況の詳しいことを知る人など誰もおらず、店からは、きっと誰も焼香しようこうにさえ出向いていない。
 そして、華やかなシャンデリアと高級酒と男と女の世界は、何もなかったかのように、その日以降も続いていった。私も一瞬、その現実に救いようのない空虚感を覚えたけれど、昼の会社と夜のクラブ生活をかけもちする自分の日々や心境も、毎日落ち着かず慌ただしかった。
 彼女のように自殺ではなくとも、心を病んだり体を壊して消えていくホステスももちろん多い。運が悪かったのか、顧客こきやくに対する見抜きと管理能力が甘かったのか、売掛うりかけが回収できず、吉原なのかどこか風俗の店へ流れていった、と噂になっていたお姉さんもいた。ゆうこちゃんと同じように、あまりにもさりげなく、ふと消えていた。
 ちょっと浮世離れしたような人生ながらも、私も45年間は、この世界で生きているので………道の途中には、若くして、突然の事故や突然死などで死んでしまった友達ももちろんいる。読者の方々にもいる。9か月の赤ちゃんがおなかにいながら、原因不明で、その子と共に空に還ってしまったファンの方の旦那様からご連絡をいただき、せめてもと、お花を贈らせていただいたこともある。白いお花のような存在感の方で、今も、時々思い出す。彼女と、宿りつつもこの世に誕生することができなかった子供も無念だったと思うけれど、残された彼も、どんなにつらかったことか、はかりしれない。
 それでも世界と彼の時間は進んでいき、その後、再婚された、と聞き、私は少しほっとした。誰しも命ある限り、自らの命をこの世にとどめてくれる愛や幸せや希望を求めて生き抜いてほしい、と思うから。

女なら、ケツガアオイまま死ぬな。

 あなたにも、そしてすべての女の人たちにも、さりげなく、ふと、消えないでほしい、と私は願う。死ぬのもきっと自由だし、永遠に生きろ! がんばれ! なんて言えないけれど(私もいつかは死ぬんだし)。どん詰まりにあるようなこの世界や社会において、死にたいくらいきつくても、絶望していても、恥をかいてもかっこ悪くてもみじめでも、それでも、しぶとく、ただ、生きていてほしい。
 <死にたい!>という気持ちに覆いつくされそうになってしまったら、親でも友人でも病院でもいのちの電話でも、<ホストの街に散る命>に出てくる日本駆け込み寺でも、ふと話すことになった通りすがりの誰かでも………ともかく、できるだけ信頼のできる、<顔の見える誰か>にSOSを出してみてほしい。
 そこで、救われなかったり余計寂しく裏切られたような気持になったとしても、あなたも女でしょ? 生きてる限り、あきらめちゃだめ。なるべく寝て、少しでも栄養のつくものを摂って、また希望を振り絞って、次を探してほしい。そんな元気もわいてこなければ、ただじっとしてやり過ごすように息をひそめている期間があってもいいんだし。
 だって、この世界には何でもある。生きてさえいれば、地獄に仏も、地獄に光も、必ず見つけられるはず。

 よく、<死にたい>は<生きたい>だという。
 つまり、死にたい、と強く思ってしまうのは、じつは、本能や本心が<よりよく生きたい>と願うからこそ。あなたも私も、人間みんな、本当は生きたい。生きるために頑張るのが、正しい命のしくみでプログラム。その自分自身の、ホントのホントの声を、嫌な何かや悪意や不運に巻かれて見失わないで。あなたがどんな傷を負い、今何を背負っていたとしても、<人生詰んだ>だなんていうことはない。それじゃ本当の世間知らずだと思う。女なら、ケツガアオイまま死ぬな。詰んでないから!

 以前都内のタクシーの運転手さんが、「私、こうみえて、以前は会社をやっていましてね。倒産し、3億円の負債を抱えて………死のうと思っていたんです。でも決行しようとした晩、気づいた嫁に、あんた、って声をかけられて。あのね、あんたが死んで保険が下りても1億5000万円なの。わるいけど、死んでもらっても足りないから。何もなくていいじゃない、全部捨てて、一緒にやり直そう、って言われましてね。男泣きに泣きまして。自己破産して、今、こうして生きてます。毎日がありがたくてね」という話をされたことがある。私も昼間から涙ぐんで、奥さん、いい女ですね、って言ったと思う。

 で、「私には、いい男もついていない!」と、余計落ち込まないでくださいね。
 今、孤独だったり死にたくなってるあなたに、専属パートナーだったり、熱愛してくれる男がついていなくても………冷静に考えてみて。じつは、そこはたいした問題じゃない。男はいらない、と言ってるわけじゃないんだけど、ともかく、あなたがなんとか、あなたらしく、機嫌よく生きることがまず先で。その重要性に比べたら、お金や名誉やおしゃれや男だなんて、趣味のオプション、かもしれないよ?
 その辺は、また次回くわしく続けていこうと思うんだけど、ホストから精神科医、だらだら都合よく不倫関係を続ける男まで、自分があまりにもへこんでいる状態で<下手な男>(誠意と愛のないやつ)にかかわると、本当に命とりになりかねないしね。
 だいたい、女機能や感覚が通常運行でさえあれば、世のお母さん方だって、亭主をおくった後の方が、たいていとってもイキイキと長生きするもの(笑)。それも現実。もしかしたら、楽になる方法をネットで探し回らなくても、灯台もと暗し(?)、女人生生き抜いてきた自分の母や世のお母さん方から学べること、助けられることも、じつは多いと思うなぁ。それが、たとえ反面教師的な学びだったとしても、ね。
 なにはともあれ、世界中、女の方が寿命も長いですし。せっかく女に生まれたんだもの、いろいろあっても、長生きしようよ。あなたも女なんだから、必ずできる!
(第4回へつづく)

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蝶々Chocho

作家・エッセイスト。コピーライター兼銀座ホステス時代に綴っていたブログが人気を呼び、2002年『銀座小悪魔日記』(宙出版)でデビュー。『小悪魔な女になる方法』(大和出版)がベストセラーとなり、幅広い世代の女性から絶大な支持を得る。単なるモテ指南とは一線を画した、真に幸福で自由な人生を送るためのテクニックを、聖俗両面から愛をもって発信中。著書多数。
公式ブログ;chochoママしぼり
http://blog.goo.ne.jp/chochochan
会員サイト;chocho女神クラブ
https://chocho-u.com/megamiclub2018

 

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