双葉社web文芸マガジン[カラフル]

週末、死にたくなるあなたへ。(蝶々)

アルフォンス・ミュシャ 1897

第1回

<はじめに>

 最近、死にたくなっていませんか?

 仕事もある。家もある。スマホもパソコンも持っている。そんな贅沢なものじゃなくても、トレンドを押さえた服も一通りは持っている。日々食べるものに困っているわけじゃない。
 そう私、生活していくためのものなら、一応何でも持っているはずなのに……なぜだろう? 人には言えないどうしようもない孤独や不安、焦りや絶望に押しつぶされて、なぜだか死にたくなっちゃうような夜がある。

 たとえばこんな時。
 アラサーでもアラフォーでもアラフィフでも、女なら誰だってある、こんな時。
 誰とも約束もなく、かといって積極的に会いたいような人もおらず、ネットサーフィンをして、食べて寝るしかない週末の夜。
 道行くカップルや家族連れが、何の屈託も不安もなく<普通に>幸せそうに見えまくる天気のいい休日。
 ああ、今日も今日とて、あの満員電車でまた出かけて行かなくちゃなんだわ……と、疲れの抜けない体にムチうつ月曜日の朝。電車の窓に映った自分の疲れ切った顔を見て、余計疲れる金曜日の夜。
 もはやスターも一般人も猫も杓子しやくしもやってるようなインスタやブログで、いわゆるリア充全開の女たちの発信をついつい見続けちゃった後。
 相次ぐ地震や天災ラッシュの日本で、備えたり守る準備をしようにも、ふと冷静に考えたら、自分には守りたいもの、いざという時つながりたい人が誰もいない? そんな気がしてしまう時。
 さみしい、つらい、いい加減嫌になる。私だって誰かに抱きしめてほしい。

 いいんです。

 女ならだれでも、自分が持たない何かを持っているように見える人をまぶしく感じ、<私の人生って、何?>つい、言いようもないむなしさや焦りに襲われる。ふてくされたくなる、やさぐれたくなる。それがあんまり続いたら、なんだか生きる気力まで失せてくる……それって、普通だと思うんです。

 ――何それ。私は超幸せで、日々も人生も充実してます♪
 素晴らしい。あなたはとってもラッキー×シンプルな人。
 これからもどんどんわき目もふらず、幸せな人生を追求していきましょう。時々はSNSで友人知人や世間様にもおすそ分け♪ 周りで起きてることにも目をくれず、自らの幸せをひたすら追求していける……それも才能の一つですから。私もそういうお仕事なので、時々はしているしね。

 でも一方で。「華やかで幸せそうな人々とは違う。キラキラした希望もなく、特に生産性もなく、私はただ、食べて寝て、生きているだけ……」。
 公ではなかなか声を上げたり、すくいとられることのない、こんな女たちの嘆きや絶望も、水面下やネット、つまり女たちの本音・現状においては、どんどん増えているのがこの現代。
 しかも、アラサー、アラフォーと年を重ねるほどに、心ときめくような出会いも、うつうつとした日々からぐいっと引き上げてくれるような救いの手も、どこにも見つからないような気がしてしまう。

 事実現実、私には彼氏や夫もいない(もう、ずっと一人で頑張ってる)。
 婚活したって、疲れるだけ(その市場、30すぎたらいきなり条件が悪くなる)。
 夫や子供はいるけれど、家庭は決して私をいやしたり救うものではない(むしろ重圧で責め苦)。
 いちおう働いてはいるけれど、特に楽しいわけでも展望があるわけでもない(でも生きるためには、辞められない!)。
 当たり前だけど、年々年もとってきた(増えてく白髪、崩れてく体形、ほうれい線にあらがう気力も失せてきた)。
 カラダもあちこちガタがきて、恋愛やセックスどころか、暇があるなら寝ていたい(ついでに言わせてもらうなら、親も具合が悪そうだ)。
 パーッと気晴らしや旅をするにも、お金も希望も元気もない(景気がいいってホントですか?)
 思わず、引き寄せやスピリチュアル・ブームにすがってみたけど、気がつけばなぜかローンや怪しい本が増えただけ(なんだったのあれ?)。
 どこもかしこも地震や天災、ネットをひらけば悲惨なニュースだらけだけど、世の中って、本当によくなってくの?(何を希望に思えばいい?)
 そして、そんな今の私に、現実いつも寄り添って、呼びかければ必ず答えてくれるのは……(もしかして、スマホだけ?)。

「あー、もー、なんか死にたくなってくる……」

「すべての女性が輝く社会づくり」を推奨すいしようしている(らしい)安倍政権には恐縮ですが、そんな女性は、今、日本中に増えています。
 いえ、隠したり遠慮しなくても、いいんです。
 はたからみたら、一見何の不自由もないような大人の女性に見えたとしても、いえ、大人の女だからこそ、そんな孤独や焦燥、絶望感におびえていたり、押しつぶされそうになっている人は、もはや、特殊な人じゃないんです。
 最近は、<病んでる>って誰しも気軽にいうけれど、もしかしたら、病んでるほうが、当たり前の感性、健全な感覚の持ち主かもしれないよ? って私は思う。それくらい、ただ普通に働いて、真面目にやってきた女たちがのほほんと幸せに生きづらい、シビアでおかしな世の中になってきている。違います?

 事実、ネットを検索すれば、女たちのそんな嘆きはいくらでも出てくる。
 ざっくりYAHOO!検索でも、何だか不穏なかんじは漂う。

 <旦那>→<デスノート><ストレス>
 <人生>→<ゲーム><相談><疲れた>
 <将来>→<夢><夢がない><不安で仕方ない>

 私の知ってる限りでも、会社員の方々に限らず、うつ病や心身を病む人は年々増えている。
 人身事故で電車が止まることなんて、ここ数年、珍しくもないニュース。
 先日も、某都内企業の取締役の方がいみじくも言っていた、「週明けと週末、東京の電車は、たいていどこかの沿線が止まってる。金曜日はオンナ、月曜日はオトコが多いそうだ」。
 さらに、「もっと怖いのは、都内ではそのことにみながすっかり慣れきっていることだよね」と。私も、特にあの3.11の震災後くらいから、都内で電車に乗るたび、ずっとそう思ってるよ。
 さらには、近年都内でタクシーに乗ると、運転手さんから「お姉さん知ってる? 有名な精神病院と火葬場が、最近、すぐには予約がとれないくらいいっぱいなんだよ」という話題をふられたことも何度もある。高齢化社会だから、かもしれない。
 ただ、自殺者に関する、厚生労働省によるこういうデータがある。

 <自殺対策白書~自殺者数の推移>
 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-01.pdf

 自殺者自体はじつは年々減少しているとされる。でも、私たち女性の自殺は減っていない。
 女が、自ら死ななきゃならないほどつらくなる世の中って?
 そんな世の中で、私たち感じやすい女たちが、ただご機嫌に生きてられるか?
 そんなわけはないじゃない? この国中に蔓延まんえんしている不安もイライラも絶望も、みんなホントは感じてる。能天気バカと呼ばれる私だって、ニュースから、街ゆく人々から、仕事の世界においてまで、いたるところで感じずにいられない。

 ――もう、これ以上、スマホと不安を一人で抱えて苦しくなっていっても、仕方がないと思うんです。それは、あなたも気づいているはず。
 <こうすれば、楽になる!>なんて魔法の言葉はどこにもないかもしれない。
 だけど誰でも、深い気持ちや痛みを分かち合ったりいたわりあうことで、今日と自分を生きる気力は、なんとかつなぐことができる。心や日々に風穴を開ける、いいアイデアも浮かぶかもしれない。
 だから、まずはここらで、女同士、腹をわって話しませんか? 私もできるだけそうしますから。
「あなたに何がわかる!」って、読む前に突き放さないで。私だって、私だけの孤独や死にたい気持ちを抱えて生きてた時代を経て、今なんとか生きている。
 そう、ここでつながるのも何かのご縁。立場やキャラは違っても、同じ時代をなんとか生きてる・生きてきた仲間同士として、<女が死にたくなっちまう時>、何でも話し合っていきましょう。


あがき続けているのは、あなただけじゃない。

 私の話を少しします。
 私は29歳のOL兼銀座ホステス時代に、銀座小悪魔作家として、チャラいかんじで作家デビュー。当時、自分自身の毎日が、面白おかしくも苦しくて、書くことでその状況や心境を整理せずにはいられなかったブログ発の出版。今なら絶対出さないと思う。若気の至りと時代の産物かもしれない。
 そして実際、若いころの私、かなり長い間、仁義なき恋愛×快楽史上生活を送ってました。それゆえ、自分の男関係も日々もしっちゃかめっちゃかになりすぎて、自分の身辺と爆発する男子たちの後始末で、毎日が精いっぱい。薬を飲んでもちっとも効かない重度の不眠症に胃潰瘍。銀座ホステスをする前から、連日、ワイン1本くらい朝飯前のアル中寸前OL。当然、他人様ひとさまのことなど何も考えていない、そんな余裕があるわけもなく。
 ところが、作家デビュー後、しだいに、多くの読者の女性たちとサイン会などで実際に会ったり、ミニ講演をする時間を持つようになって。
 正直言って、当時はそんなことを望んでいたわけではなく、読者や版元からの多くの希望やリクエストをいただくうちに、自然の流れでそうなりました。
 そして、気がつけば、出会う女の人たちに、情が思いきりうつりはじめ……ここ10年近く、毎年1000人以上の女性たちへの講演をしたり、数百名の方々と一人一人お話しする握手会などを重ねるように。現在は、数千人の会員の集まる女神クラブというファンサイトも運営し、会員制サイト内だからこそやりとりできる、様々な立場の女性たちの本音や生の声とずっとあゆみ続けてる。
 って、もちろん、くだらない自慢をしたいわけじゃないですよ(だから、私だっていい年なんです)。
 言いたいのは、いわゆる普通のOLさん、医師、主婦、お母さんたちをはじめ、風俗嬢から霞が関の役人さんまで、全国のありとあらゆる立場の女性たちと面会したり、ともに時間を過ごしつつ、ディープなお悩み相談などを受け続けてきたからこそ、ハッキリ言えることがある、ということ。
 それは、<女たちは、この出口の見えないような時代と自分の女人生に、みな不安や焦燥、痛みを抱えている>ということ。
 年収1000万だろうが100万以下だろうが、子があろうがなかろうが、みな同じ。
 つまり、生きていることがなんだか年々苦しいのは、日々やノルマをやり過ごすだけ、のむなしい気持ちと戦いながら生きているのは、寝ても寝ても抜けない蓄積疲労に戸惑い、あがき続けているのは…………あなただけじゃない、ということ。

この世に、ダメな女なんていない。

 ところで私は、年に2、3度、お伊勢さんこと、伊勢神宮を訪れている。個人的にとても好きで。自分の人生転換のきっかけの場所でもあって。
 そう公言していることも手伝ってか、ここ数年は、行くたびにどなたか読者の方々に声をかけていただく。内宮ないくうさん、外宮げくうさんで、月讀つきよみさんや倭姫宮やまとひめのみやの参道で、遠慮がちに「蝶々さんですよね?」と。そのほとんどが、1人旅をされているらしき、可愛い女の人たち。
 私もプライベートなので、子連れだったり同行者がいたりして、長々話し込むことはないのですが、たいていは「はい、そうです」とお答えし、そのまま少し立ち話をさせていただくことが多い。
 だけど、それぞれお話を伺っているうちに…………多くの女の人たちは、涙を流しているんです。派遣OLだという人も薬剤師の女性も、婚活や夫婦仲、はたまた長引くうつに悩んでいたり、子宮しきゆうの疾患を抱えている、という人も、キラキラに澄み渡る空気のお伊勢さんで、なぜか、みんな、泣いている。
 そんな時、私は怪しいオバサンと化し、よしよしと頭をなでたり肩や背中をはらうようにポンポンと叩いてみたり、手を握ったりする。そうせずにはいられないように、可愛い女の人たちが、押しつぶされそうな気持ちを抱えて、ポロポロと私の前で泣いている!

 それは、老若男女を思わず素直にさせてしまう、日本の聖地・伊勢神宮でだから、かもしれないけれど……。でも、私の握手会でもそんな女の人たちは年々増えているしなぁ……。
 むしろ、そうして泣いて、自分の気持ちをあらわせる人、伊勢や誰かの握手会にやってくるパワーがある人は、まだいい状態のほうなのかもしれないなぁ……。

 そんな風に、私はいつも、大好きな伊勢で、考えこまずにはいられなくて。

 そもそも、この伊勢のように柔らかくて明るい存在であるはずの女たちが、なんでこんなに緊張し、こんがらがり、不安にかられ、苦しんでいるんだろう? こんな自分に何ができる? どうしたらいい? 近年ずっと考えているし、今も考え続けているんです。

 今の私は、小さな子供をシングル・マザーとして育てているので、これまで以上に一日一日を一生懸命つむぎ、楽しんでいるけれど。同時に、今、どこかで人知れず、声に出さずに苦しんでる女の人のこと、これまで出会ったあの人、あの顔、あの涙たちのことを、忘れたことはない。忘れられないんです。

「私が弱いから?」
 いいえ、あなたはそんなに弱くない。運にも天にも見放されていない。現に、なんとかここまで生きてきているでしょう?

「私のがんばりが足りないから?」
 いいえ、まじめに死ぬほど頑張ったって、思うようにむくわれないのも人生の常。
 さらに、ネットの世界はいざ知らず、今の社会は、目に見えない存在価値や声にならない繊細な思いをすくいとりづらい。学校や会社をいったんドロップ・アウトしたり、非正規雇用の道を選んだ人などを、どんどん切り捨てて進んでいくようなシステムの不備、優しくなさも多々あるな、と感じてる。

「私がダメな女だから?」
 ダメな女なんていない。
 社会や企業が合理・効率的に運営していくための規定を勝手に設定し、それをやわらかなうちら女に対しても、少なからず強制し、蔓延まんえんさせているだけ。その価値観に準じがちなメディアも、くだらない芸能ニュースばかりを多く取り上げているのかも。

「私は生きてる資格ない?」
 ある。あるに決まってる。目だったり華やかだったり、絵に描いたような女人生を生きているから幸せなわけでもない。生きてるだけで女は凄い!

「気がつけば、スマホが友達の人生になってるけれど?」
 それは正直、少しずつでも変えてったほうがいいと思う。
 スマホは、目先の便利を上回る見えないダメージが多すぎる、と感じて、私はいまだに持ったことがない。知り尽くしたスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツにならって、自分の子にもできるだけ長く持たせないつもりでいる。


 ――ザクっとだけど、今、死にたくなってるあなたに、これが私の言いたいこと。
 かけねなしの本心から、全身全霊で伝えたいこと。具体的には、これから続けていきますね。

 でもいい? あなたは死んではいけないよ。
 死んじゃいたい! って思っても、死んだほうがマシなように思える日があったって、女は自ら死んではいけない。
 ちょっとくらい老けたって病んだって、それが何? 男や家族に縁がなくたって、ひとりぼっちに思えたって、自分は誰にも必要とされていない、何の役にも立たない存在のように思える日があったって。収拾つかない借金やヤラカシがあったって、わかりやすい希望や宝石みたいなキラキラしたものがなくたって!
 命ある限りは、堂々とでもほそぼそとでもボロボロでも、生きてたらいい。そんなあなたに救われている人、あなたが消えたら死にたくなる人も必ずいる。

 だって、生きてるだけで女は凄い。この現代で、今をなんとか、頑張って生きている、それだけでもあなたは凄い。
 誰もはっきり言わなくたって、コレ、本当のことだから。よろしくね。
(第2回へつづく)

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蝶々Chocho

作家・エッセイスト。コピーライター兼銀座ホステス時代に綴っていたブログが人気を呼び、2002年『銀座小悪魔日記』(宙出版)でデビュー。『小悪魔な女になる方法』(大和出版)がベストセラーとなり、幅広い世代の女性から絶大な支持を得る。単なるモテ指南とは一線を画した、真に幸福で自由な人生を送るためのテクニックを、聖俗両面から愛をもって発信中。著書多数。
公式ブログ;chochoママしぼり
http://blog.goo.ne.jp/chochochan
会員サイト;chocho女神クラブ
https://chocho-u.com/megamiclub2018

 

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