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FP(ファイナンシャル・プランナー)住職の丸もうけ人生相談(高橋 泰源)

第19回

 こんにちは。好きな担々麵は渋谷「香家こうや」の“姫”、FP住職の泰源です。
 では、例によって、ご相談をお聞きしましょう。

57.主人が健康を害しており、いつ「その日」が来てもおかしくない状態です。主人は優しい人ですが、義父母や義姉がなかなかに性格が悪く、私とは絶対に合わないので、葬儀と納骨が終わったら彼らとは縁を切りたいと思います。気を付けるべき点がありましたら教えてください。子供は息子ひとりで独身です。(50代・女性)

 これはいわゆる「死後離婚」ですね。

 配偶者が死去した後に「離婚」する。どういうことでしょうか。
 夫婦の片方が亡くなると婚姻関係が終了することは、民法で定められています。したがって、当然のことながら離婚届は必要ありません。しかし、配偶者の親族との関係( 姻族関係)は継続されることになります。「姻族関係終了届」を役所に提出することにより、この関係を切ることを一般的に「死後離婚」と呼んでいます。実態を正確に表しているとは言い難い言葉なのですが、メディアでも頻繁ひんぱんに目にするようになりました。

 さて、ご主人の家とのお付き合いが継続されると、義理の両親や兄弟姉妹との関係が続きます。この関係を切ることにより、配偶者の両親、つまり義父母については、身辺の世話や介護の義務から解放されます。

 簡単に言うと、

旦那の両親の面倒を見なくていい

 という話です。
 義父母さんに可愛がってもらえなかった、最後まで気持ちが通じなかったということであれば、この選択もありかな、と思います。

 一方、お墓に関しては、ちょっと面倒です。
 まず、ご主人がご長男で、そのご両親、つまり義父母さんと同じお墓に入ることになっている。そしてご主人が義父母さんより早く亡くなる可能性が高い。

 こうなると、ご主人が旅立たれた後、
「あなたたちと同じお墓に入りたくない」
 と義理のご両親に宣言するか、もしくはご主人の生前に、
「悪いけど、義父母さんと同じ墓には入れないから、私は別のお墓を探します。ごめん」
 と伝えることになります。

 私の寺にはまだ、檀家さんからこのような相談は来ておりません。ただ、世帯主の方が亡くなり、四十九日法要や納骨を終えると、途端に音信が途切れる檀信徒さんはおられます。
 墓地管理者の立場で申せば、墓地を継承される方さえしっかり決めてご連絡をいただき、年間の管理料を納めたうえでご法事(年回法要)を行っていただければ問題ありません。むしろ、菩提寺の住職として、檀信徒さんのご家族の問題に必要以上に立ち入ることにも重々配慮が必要です。

 しかしながら、仏教の基本である慈悲、いつくしみの心に立ち返り、有縁無縁一切の精霊を供養する、という精神を思う時、亡くなった配偶者、あるいはその親族の方へのお気持ちを断ち切ることには、慎重なうえにも慎重であっていただきたいものだと感じます。お互いを思いやり、気を配り、世話をする。そしてそのことに互いに見返りを求めない。多くを望まない。ほどほどのところ、「いい加減」で関係を保つ。そんな状態を模索してみては、と考えます。

 次に、FP的見地から、お金の問題を考えます。

相続も年金も無問題モーマンタイ

 仮に今の状態のままでご主人が亡くなることになれば、法的にはあくまで「死別」ですので、遺産や遺族年金は受け取れます。相談者さんとご主人の関係は良好なのですから、最期まで丁寧にケアをし、満足のいく形で送って差し上げれば、相続や遺族年金を手にするのは当然の流れです。遺産に関しては、法定相続分通りに分けると仮定すると、相談者さんと息子さんが2分の1ずつ相続します。
 そして、息子さんと「相談者さんの義父母さん」の関係は継続しますので、義父母さんが亡くなった時には(ご主人が亡くなっているとすれば)、息子さんに相続権が生じます。
 ただしこれはあくまで法律上の解釈で、義父母さんのお子さん、つまりご主人のお姉さまが心情的にどう思うかはわかりません。わかるけど、わかりません。

再婚リスク

 今回の相談者さんには関係ないと信じてますが、念のため。
 相談者さんが亡くなると、息子さんが母親の財産をすべて相続することになります。ですが、万が一、万万が一、相談者さんが再婚し、再婚相手より先に亡くなった場合には、相談者さんの財産の2分の1を再婚相手に持っていかれることになります。

 どうしてこの話をしたかというと、相談者さんの事例とは真逆ですが、
「夫との関係が冷え込んでいるが、離婚しないでずーっと待ち続け、夫が逝ったら死後離婚して相続財産や年金をゲットする」
 という戦略が流行はやりつつあるのです。これはまた別のご相談の時に詳しくご説明します。

#柔軟心 〈浄土論〉

「にゅうなんしん」と読みます。柔軟に対応する心、あるいは物事にとらわれない心を意味します。

「性格が悪い」「縁を切りたい」なかなかに強烈な言葉ですが、相談者さんはもしかして、周囲の人たちを分類する箱を、「好きな人」と「嫌いな人」の二つしか持っておられないのではないか、と言う気がします。

 そもそも仏教の根本は「中道」。「どっちでもない」「どっちでもいい」「どうでもいい」的な思想です。気が合う人、合わない人、もちろん世の中にはいると思いますが、すべての人を、「自分以外の人」という箱におさめておく。これだけでいいと思うのです。ことさらに別の箱を作ることなく、自然に任せる、ということでいかがでしょうか。

*切る時は痛みが走るものだけど自然に切れるものは痛くない


58.2年間、半同棲している彼氏はひと回り年下の26歳で、私は38歳です。楽しく毎日を過ごしていますが、結婚の話にはなりません。年齢差のこともあり、友人たちは彼との関係を見直したらと忠告してきます。将来、彼が若い女性に乗り換えるかもしれないことを思うと、別れたほうがいいのでしょうか。子供は欲しいです。(30代・女性)

「結婚の話にはなりません」「子供は欲しいです」ということは、相談者さんは結婚なさりたい、ということですよね。女性の場合、年齢的にある程度の制約が課される「出産」という大イベントがあり、これを考慮せずして人生のロードマップを描きづらいことは確かですね。

 これはもう、「今の楽しい日々」と「中長期的な人生設計」のどちらを優先するか、という話にほかなりません。年齢差は記号みたいなものですから、当事者が気にしないなら周囲が何を言おうが知ったこっちゃないです。

 と、これでは何のお助けにもなってませんので、もう少し考えましょう。
 個人的には「周りが見えなくなるほどの恋愛」という感覚を体感することなく馬齢を重ねてしまいましたので、なかなか感情移入できなくて申し訳ないのですが、逆のベクトル、年下男性が年上女性に惹かれる要素について、分析しましょうか。最大公約数は以下のようなところでしょうか。

・話題が幅広く、話していて楽しい
・常識的でマナーを心得ている
・包容力がある
・経済的にゆとりがある
・守ってくれそう

 かつて芸人の有吉弘行さんがバラエティ番組で「50で30に見えるんだったら、(男は)30の女でいいんだよ。50の女がいいやつは、50のババアが好きなんだから!」という、身もふたもない発言をしていました。

 有吉さんが思い浮かべているのは、時折メディアで見かける「力業ちからわざで強引に若作りしている女性」で、これはこれでその努力に敬服しますし、立派ではあると思うのですが、個人的にはその「無理している感」がどこかで風船のように割れないかと、心配になります。

 しかしながら今回は「結婚前提でないとはいえ半同棲」状態であるということですから、彼氏さんは上に挙げたような「相談者さんの人間としての魅力」に高評価を与えている一方で、「女性としての魅力」もきちんと感じている。
 相談者さんがそう確信できるのであれば、「どこかの時点で若い女に乗り換えられるかも」なんていう懸念は杞憂きゆうにすぎませんし、まさに余計なお世話でしょう。

 仮に私が「人間的魅力」のみで大幅に年上の女性を好きになったとしたら、街で食事するだけで楽しい時間を過ごせますから、そこで「楽しかった、ありがとう」で終わりで、半同棲まではいかないと思います。

#落花有意随流水、流水無心送落花  〈従容録しようようろく

「らっかはいありてりゅうすいにしたがい、りゅうすいはこころなくしてらっかをおくる」と読みます。

 木から落ちた花びらはひらひらと川を流れていく。花はもちろん、川もまた淡々と、流れていく。
 不倫でもなく、略奪でもない。特段、周囲の誰かに迷惑をかけているわけでもない。純粋な恋愛感情で結ばれているふたりであれば、他人に何を言われようと気にすることはありません。相談者さんが花で、お相手が川。あるいは逆でも構いませんが、ともに自然に身を任せ、体の力を抜き、ふたりで行きつくとこまで行ってみる、これはこれで結構だと思います。

*年齢を気にする唯一の生き物にたまたま生まれ落ちただけだから


59.消費増税がいよいよ近づいてきましたね。増税前に買っておいたほうがよいもの、増税後でもよいものを教えてもらえますか。(40代・男性)

 これは完全にFPマターのご相談ですね。なにしろ3か月先のことなので、「リーマンショック並みの出来事」が起きたらまたしても先送りされる可能性もありますが、一応実施する前提で考えて、経済初心者の方にもわかるようにご説明いたします。

使途は?

 消費税率10%への引き上げは当初、2015年10月に予定されていましたが、安倍内閣はこれまで二度にわたり延期してきました。当初は増税分の8割を国の借金を減らすことに使い、残りを社会保障の充実に充てるとしていたのですが、昨年首相はこの使い道を変更、一部を教育無償化などに使うことを決め、この結果、借金減らしに充てられる額は増収分の半分程度になりました。

 幼児教育・保育の無償化は今年10月から実施予定で、幼稚園や認可保育所、認定こども園に通う3~5歳児の利用料が原則無料、0~2歳児は一定の所得以下で住民税非課税となっている世帯が無償化の対象になります。

 大学など高等教育の無償化は来年4月から実施されます。主な内容は、授業料・入学金の減免と返済不要の給付型奨学金の拡充です。ただし、こちらは住民税非課税や年収380万円未満(減額なしの支援は年収270万円未満)の低所得世帯に対象が限定されます。

景気対策は?

 消費税率が10%に引き上げられると、過去の増税時と同じように、消費者の買い控えなどが起きるおそれがあります。そこで政府は、クレジットカードやスマホなどのキャッシュレス決済で買い物をした人にポイントを還元して、「お得感」を感じてもらうという、なんとも、なんだかなあ、な、施策を打ち出しました。

 具体的には、2020年6月末まで、キャッシュレス決済で中小店舗で買い物をした消費者に、5%(コンビニなどチェーン店は2%)分のポイントを還元します。なんでもこの還元策に政府は4000億円の予算をつぎ込むらしく、景気の冷え込みを回避したいと躍起やつきになっている様子がうかがえます。

 おかげで、なかなかにややこしい税率になっています。たとえば、軽減税率対象の飲食料品を、中小店舗で買うと、軽減税率8%にポイント還元5%があるので実質3%となります。同じものを大企業のスーパーで買って店内で飲食すると税率10%です。

 ところで、キャッシュレスで買い物、ということは、多くの場合「後払い」となります。つまり、手持ちの資産以上の買い物ができてしまう、ということで、社会人経験の豊富な方には釈迦しやかに説法でありましょうが、若い方、散財にご注意。ポイント還元と言っても、買った分全額が戻ってくるわけでもなんでもありませんので、要らぬものを買う意味はありません。

自動車は?

 消費税率引き上げに伴い、自動車税の体系が大きく変わります。

 まず、取得税が廃止され、「自動車税(環境性能割)」ができます。環境性能割はエコカー減税の代わりに、車の環境性能に応じて取得価格の0~3%の税率でかかってきますが、2019年10月から20年9月末までに自動車を取得すれば税率が1%軽減されます。

 自動車税は「自動車税(種別割)」に名称変更され、税額は排気量1000cc以下なら、現行の2万9500円から2万5000円と1年で4500円、10年で4万5000円の負担減となります。一方、車の取得価格が200万円の場合、消費税率が2%上がると単純計算で4万円の負担増です。

 まとめると、「基本的には増税前の購入が望ましいが、排気量が小さい低価格の車種なら、増税後の購入を検討してもいい」といったところでしょうか。

住宅は?

 生涯で最も高い買い物と言われますので、少し詳しく説明します。
 一言で言うと、「国民の住宅購入ムードに冷や水を浴びせないよう、国はいろいろ考えている」ということです。

 住宅ローン控除は、年末ローン残高の1%を入居の年以降10年間の所得税額から差し引ける、おなじみの制度です。今回、差し引ける期間が13年間に延びます。11~13年目までの3年間は、
「借入金年末残高(一般住宅の場合上限4000万円)の1%」
「建物購入価格(同上)の2%を3等分した額」のいずれか低いほうが控除額となります。

 具体例がないとわかりにくいですね。
 4400万円の住宅を購入し、11年目の住宅ローン控除を申請する時点で、借入金年末残高が3000万円あった場合には、3000万円の1%の額である30万円か、建物購入金額の上限の4000万円の2%を3等分した約26万円のいずれか低いほうが控除額となります。この場合、控除額は約26万円となります。

 ローン残高は毎年減少していくため、12年目、13年目と少しずつ控除額が減少。仮に、借入金年末残高が12年目に2800万円、13年目に2600万円となった場合、12年目は28万円、13年目は26万円で3年間の控除額の合計は約80万円となります。
 この金額が、「消費税率アップのバーター的に戻ってくる金額」ということになります。

 すまい給付金も変わります。これは消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年4月に設けられた、年収が一定額以下の人向けの、住宅を買った人に国から現金を支給する制度です。今回この制度が拡張され、給付対象者の年収の目安の上限が510万円から775万円に、給付額の上限が30万円から50万円にそれぞれ拡がります。詳細な給付額は、

http://sumai-kyufu.jp/

 をご参照ください。

 もうひとつ。親や祖父母から住宅購入の資金援助をしてもらう際の贈与税の非課税枠が、省エネ等住宅を取得する場合、現行の最大1200万円から10月以降は最大3000万円に拡大されます。なんとまあ大盤振る舞い。両親や祖父母からガンガン贈与してもらって住宅を買いなさい、という国の誘導ですね。

 さて、住宅の取得においては、住宅価格の相場や金利動向がどうなるかによって出費は大きく変わってきますので、「消費税が上がる前に買うか、上がってから買うか」という問題を税金や給付金のベースのみ、単体で考えてもあまり意味はなく、「景気の先行きや個人消費の動向を考えた場合、住宅価格や金利は今後どうなるのか」という問題も合わせて考えるべきなのです。

 ちなみに、消費税率が5%から8%に上がった2014年4月の首都圏の新築マンション価格は、は約4800万円でしたが、その1年前の3月は約5200万円でした。あくまで平均値ですが、約400万円値下がりしたわけです。また、35年返済で4000万円の住宅ローンを借りた場合、金利が年1.5%と2%では、総返済額が約420万円違います。もちろん、未来の経済市況を完全に予測することは不可能ですが、メディアで積極的に情報を集めることくらいはしておきたいものです。

増税前に買っておくべきもの

 普通に考えれば、「使用期限が長いもの」「比較的高いもの」が該当します。上で説明した自動車や住宅がその最たるものです。
 ほかにはたとえば、通勤・通学の定期券や、遊園地などアミューズメント施設の年間パスポートなどが該当します。宝飾品や家電など「寿命の長い品物」も、これまでの消費増税時には必ず税率改定前に駆け込みで買われていました。

あわてて買う必要のないもの

 日用品のまとめ買いを考えている方もおられるでしょうが、そうしたものの中には頻繁に安売りされるものもありますし、前回の消費税改定の時よりネットショッピング等が普及し、消費者にとって買いやすい環境になっていますので、買いだめする必要はありません。

#風吹不動天辺月 〈普灯録ふとうろく〉 

「かぜふけどもどうぜず てんぺんのつき」と読みます。
 天上に輝く月は、いくら風が強く吹いても動じることなく、悠々と輝いています。
 確固たる信念を持って生活することの大切さを説く禅語です。

 考えてみると、消費税が上がることと、相談者さんの物欲には、直接的な関係はありません。
 差額の2%分によって買うのをやめるか迷うような品物は、そもそも相談者さんにとって必要のないものです。

 30年ほど前、我々が大学生のころ、「やっぱり女性と付き合うのには車がないとね」と、多くの若い男は思っていましたし、「やっぱり彼氏は車くらい持ってないとね」と多くの若い女性は思っていました。たぶん。

 運転にも車にも何の興味も持てない典型的なインドア派の自分は、よくわからないまま肩身の狭い思いをして、大学のキャンパスと図書館と雀荘を徘徊していました。周囲からの冷たい視線に押されるように仕方なく免許は取りましたが、必要に迫られないとハンドルを握ることもなく、自分が社会からドロップアウトした人間であるかのような意識を背負って日々暮らしていました。

 あの同調圧力はいったい、何だったのでしょうか。バブルの泡のような実体のない観念だったのでしょうか。それとも電通さんとマガジンハウスさんの神輿みこしに全国の若者が乗せられていたのでしょうか。

 話が逸れましたが、要るものと要らないものの判断は、社会の風潮とか消費税率とかには、基本的に関係ないのですよね。シンプルに、相談者さんにとって「それがないと暮らしていけないものか」「それがないと極端に生活が不便になるものか」という観点から、ご自身の消費行動を見つめてみてください。

*計算は確かにしやすくなりますが10で止まるとは誰も言ってない

 では今回はこのへんで。また15日後にお会いしましょう。
(第20回へつづく)

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高橋 泰源Taigen Takahashi

密教系寺院の住職、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP ®認定者。大学在学中に僧侶資格を取得。専門分野は宗教法人の税務・資産運用。宗教法人経営者としては「寺院の真摯な運営」、宗教者としては「人々の心身の安寧」を志向し、埋葬と瞑想と妄想の日々を送っている。

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