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FP(ファイナンシャル・プランナー)住職の丸もうけ人生相談(高橋 泰源)

第11回

 こんにちは。好きなボーカリストは石川智晶さん、FP住職の泰源です。
 では、例によって、ご相談をお聞きしましょう。


31.82歳の父親が、ガンで余命6か月と宣告を受けました。本人もショックを受けており、私も何をどうしたらいいか考えがまとまらず、仕事も手につきません。今後父とどのように接するのがよいのでしょうか。(40代・男性)

 一昨年に旅立った私の母も、その少し前に余命宣告を受けていました。お気持ち、お察しいたします。

#病はいかなる諸々もろもろ仏神に祈るとも、それによるまじきことなり (法然ほうねん 浄土宗略抄)

 浄土宗の開祖、法然上人しようにんもあっさりと、「病には理由があるのだから、仏や神に祈ってもどうにもならない」とおっしゃっています。諦観ていかん。余命宣告を受けた方は、この境地に達することを求められているのかもしれません。

 しかしながら、余命とは正確に推定できるような性質のものでなく、あくまで統計的な目安を伝えているに過ぎません。実際に旅立った日が告知した余命の前でも後でも、ご遺族からいろいろと言われることがあるので、「絶対に余命を告げない」という医師もいるそうです。末期ガンで余命宣告され絶望の淵に立たされながら生還した患者さんもおられます。ですので、痛みを伴うかもしれませんが、望みを捨てることなく治療を続ける、そういった道もあります。

 これを踏まえると、相談者さんが「ほどなく別れの日がやってくる」と決め打ちをすることは必ずしも得策であるとは言い切れない気がします。穏やかならざるお気持ちであるところまことに恐縮ですが、まずはゆっくり深呼吸して、お父様と会話の時間をとることから始めましょう。一時退院ができるようなら、主治医の許可を得て温泉に行くのもよいかもしれません。そこで、
「がんばるか(きつい治療を受けても病気と闘うか)」
「受け入れるか(天命と考えて静かに時を過ごすか)」
 の基本的な方向性をしっかり話し合いましょう。言うまでもなく、ここが一番大事です。

 こころの治療
 詳しくは主治医にご相談いただきたいのですが、強い痛みなどを伴うつらい治療を回避し、おだやかにその日を迎えるために、「緩和ケア病棟」とか「ホスピス」とか呼ばれる科に移るという選択があります。
 これらの施設ではガンの進行に伴って生じる痛みや吐き気、息苦しさなどの体のつらさ、心のつらさをやわらげる治療を主に行います。患者さんご本人、およびご家族の了承が大前提となりますが、正面から病気と闘うことなく、心乱れることなくおだやかに日々を過ごせることを一義的に考える病棟です。病院によってはカウンセラーやセラピスト、臨床宗教師などの宗教者(僧侶、牧師など)もケアに参加し、心の安寧あんねいを得ていただくためにお話をお聞きすることもあります。
 私も臨床宗教師の資格を持っており、何度も緩和ケア病棟にお邪魔し、傾聴けいちよう活動をさせていただいています。私がうかがった病院では、入院されている方はみな落ち着いて生活をされており、自暴自棄になったり取り乱したりといったご様子はまったく見られませんでした。
 ある方は日本の古きロックや映画にたいへん造詣が深く、私もそのあたりの話は大好きなので、四人囃子ばやしという伝説のロックバンドの楽曲のクオリティや小津安二郎おづやすじろう監督の数々の名画のカット割りについて1時間近く語り合い、たいへん楽しい時間を過ごさせていただきました。1週間後の再訪の時はお元気がなく心配していたのですが、その2週間後に旅立たれました。後刻ご遺族からは「故人はあなたと話したあと、とても嬉しそうな顔をしていました」と言っていただき、ささやかながらその方の心の安寧に寄与できたのかと思うと、多少は宗教者としてお役に立てたかと安堵あんどしました。
 もちろん、緩和ケア病棟に入るが宗教者の関与は必要としない、という選択もありです。冒頭の法然上人の言葉もありますし、宗教がすべての人の福音ふくいんになるとは私もまったく思っておりません。選択肢の一つとしておぼえておいていただければと思います。

 相続のこと
 人が亡くなると、亡くなった人の財産を配偶者さんやお子さんたちで分けます。これが相続です。余命宣告された時期に亡くなると完全に決まったわけでもないのに「縁起でもない」と言われそうですが、いやしくもファイナンシャル・プランナーとしてこの場をお借りしている以上、触れないわけにはいきません。恐縮ですが、お付き合いください。
「葬式が済んでから考えたんでは遅いのか」
 はい、遅いです。俺はこの国が大好きだ、いくらでも税金は払える、国家のために俺は生きている、好きなように使ってくれ、という方は別として、生前、それも早いうちからの工夫で納税額は抑えられる可能性があるのです。
「うちの親に限ってそんなに財産はない」
 本当に「そんなに財産はない」のか、確かめておきましょう、という意味です。あと借金があるかどうかも生前に確認しておくべきです。

 まず相続税がかかるか・かからないか、ですが、この連載の第4回で詳しくご説明していますのでそちらをご参照ください。

 相続税の基礎控除(相続税が課税されない財産の範囲)は、

 3000万円+法定相続人の数×600万円

 これが基本です。この財産には土地や建物も含まれます。で、この基礎控除枠を超過した分に相続税がかかってきます。例えば財産が4500万円、相続人が奥様とお子さん一人の合計2名だとしたら、4500万円から4200万円を引いた300万円に相続税がかかり、10%、つまり30万円の税金を国に納めることになります。

 よって、相続税額の計算に当たっては、

・財産はどのくらいあるか
・法定相続人は何人か

 がポイントとなります。というか、すべてです。

 確かに面倒なのですが、これを面倒がらずにやっておくと対策がとりやすいのです。自分で全部やるのは相当しんどいので、専門家の力を借りて財産の算定、相続税額の試算、必要に応じて生前贈与等による節税対策を行ってください。
「法定相続人の人数って、見ればわかるやん、調べるまでもないやん」
 それがそうでもないのです。亡くなられた方の遺産をご遺族が分ける際に「遺産分割協議書」を作成し、金融機関に提出することが求められますが、この時に、「故人が生まれてから亡くなるまでのつながっている戸籍謄本」を合わせて提示する必要があります。
 これは、あとから「俺も相続人だ、俺にも遺産をよこせ」という人(つまり「隠し子」です)が出てきて揉め事になり、金融機関がそれに巻き込まれることを回避するための対策です。つまり、どのみちあとから「相続人を特定すること」が求められるので、先にやっておいて損はないのです。
「うちの親父は堅物だから隠し子なんて絶対にいない」
 お気持ちはわかりますが、相談者さんのお父様の人となりについて税務署や金融機関はなんの興味も持っていませんので、そのような理屈は通りません。ご本人でなくても配偶者さんや直系血族の方であれば戸籍は取り寄せられますし、行政書士さんに委任することもできます。ぜひご検討を。

 そして、財産の総額と法定相続人が確定し、税額もざっくり算定出来たら、生前贈与などの相続税対策を考えます。これに関してはまた回を改めて、別のご相談にお答えするかたちで説明いたします。

 遺言のこと
 遺産は基本的に法定相続人が法定相続分にしたがって分割します。例えば妻と子供ふたりなら妻に半分、残りを子供が半分ずつ、という具合です。
 しかしながら、ご自分の財産なわけですから、どのように分け与えるかを決めて伝えておきたい、と思うのも道理です。遺言には拘束力はありませんが(相続人が話し合って自分たちの好きなように分割することもできます)、自分の気持ちをしっかりしたため、ご家族それぞれへの感謝の言葉も添えて(付言ふげん事項と言います)、「妻○○には○○銀行の預金を、長男Aには家を、次男Bには△△銀行の預金を相続させる」などのかたちで遺言を書くことを、お父様にお勧めしてみてはいかがでしょうか。

 ご葬儀のこと
 まだ早いかとは思いますが、できれば病状が深刻になる前に、ご葬儀はどのように行いたいか、家族葬か、親戚に声をかけるか、仕事をしておられた時代の同僚や後輩さんは呼ぶか、菩提寺ぼだいじがない方なら僧侶をどうするか、等を話し合っておくと、万一の際に遺志を反映したご葬儀が行えます。

 お墓のこと
 以前にも書いたかもしれませんが、念のため。入るお墓が決まっている方はよいのですが、そうでない方は「どんなお墓に入りたいか(個人墓、永代供養墓えいたいくようぼ、海洋散骨)、寺墓地と霊園とならどちらがいいか」等についての考え方も、可能な範囲で聞いておきたいですね。天気のいい日に散歩でもしながら。

 エンディングノートのこと
 遺言は法律で定められた書式がありますが、それ以外のここまでご説明したことを、ご本人がエンディングノートに書いてくださると、ご家族は後々助かります。ただ、くれぐれも無理強いすることなく、余命宣告されて一番メンタルがきついのはご本人だということを忘れずに。エンディングノートは書店に行けばたくさんの種類が並んでいます。手に取ってみて、しっくりくるものを選んでください。ご家族が代理で書くタイプのものもあります。

*がんばろう余命宣告跳ね返せば有名ブロガーになれるかもだぜ

32.容姿に自信がないこともあり、マスクで顔を半分隠して街を歩くのが習慣になって、気が付けば人前でマスクを外すことに恐怖を感じるようになってきました。まだまだ人生の先は長いのに、この先マスクなしで世の中を渡っていける自信がまったくありません。どのようにしてこの状況を克服すればよいでしょうか。(20代・女性)

 多いですね。マスクマン、マスクウーマン。かく言う私も夏以外のスリーシーズンは家を一歩出るとマスク着用です。春秋は花粉症の予防、冬は防寒のためです。
 しかしそんなのんきな話ではなさそうですね、相談者さんの場合は。

 子供の時から容姿を誉められたことがなく、人前に素顔をさらすのが好きではない。マスクという不自然でない防具が都合よく普及しているから、それを利用している。仕事中でも内勤なら外す必要もないし、装着したままでいたら、いかなる状況においても外すのが怖くなった、といったところでしょうか。
 私も、お母様の葬儀で最初から最後までマスクを外さなかった女性(20代前半)を存じ上げています。ご病気だったのかもしれませんが、正直、お焼香しようこうの時とか最後に導師どうし(私でした)を見送る時くらいは外してほしかったなあ、と思います。なぜそう思ったかというと、やはり「マスクをつけたまま人と接触するのは礼儀的によろしくない」という固定観念が私の心の中にあったのだと思います。
 ただ、その固定観念自体が未来永劫えいごうにわたって不朽ふきゆうのテーゼである保証はどこにもなく、もしかしたら近い将来、大気汚染の問題等により「屋外でのマスク着用」が法律で義務付けられるかもしれません。そうなれば相談者さんは大手を振ってマスクウーマンライフをエンジョイできようというものです。
 仏教的にも「顔をきちんと見せて歩きなさい」などという戒律は存在しません。ちなみにイスラム教では皆様ご存じのように「成人に達した女性は、ここを除きどの部分も見られてはならない、と言って預言者は顔と手を示された」など、経典の中に服装への言及がなされています。例のヒジャブ(体や頭部を覆う布)はこの戒律に基づいて着用されているわけです。
 ということで、仏教的には、MNP(マスク、ノープロブレム)ということになります。
 
 ただし、上でも述べたように、(未来永劫かは別として)「公的な場所ではマスクはまずいんじゃね?」というモラル的なものを相談者さんは気にされていますし、加えて一般的なビジネスの世界においても、あるいは異性等との交際においても、「オールタイムマスク」は厳しいよね、という懸念は理解できます。
 
 では、なぜ相談者さんはマスクをしないと外に出られなくなったのか。容姿に自信がないから、なのですね。けれども世の中で容姿に自信がある人はどれほどいるのでしょうか。この連載の第1回で「美人は得なのか」という相談にお答えしましたが、その時の私の答えは「美人は得することが多いかもしれないが、それがすべてではない。過度に見た目にこだわることをせず、美しい人を目指すより、笑顔と優しい言葉を忘れない女性になることを目指したらいかがでしょう」というものでした。

 今回はその続きのお話をしてみようと思います。

#花無心にして蝶を招き、蝶無心にして花をたずぬ。
 花開くとき蝶きたり、 蝶来るとき花開く。
 吾もまた人を知らず。 人もまた吾を知らず。
 知らずして 帝則に従う(良寛りようかん


 花は、ただ咲いて、結果、蝶を招いている。蝶も花の気持ちとは関係なく花を訪ねる。
 自分も、他の人々のことは知らず、他の人々も自分のことを知らない。互いに知らないながらも、天地の道理に従って(会ったり別れたりして)生きている。

 あなたがどこぞのアニメの主役のようにこの地球上に一人で生きているなら、容姿に自信があるとかないとか、そもそも考えないですよね。つまり相談者さんは他者との関係性のみを意識して「自信がない」とか「マスクをする」とか言っているわけです。

 良寛さんは花と蝶の関係にたとえて、人と人もことさらに意識し合っているのではなく、勝手に動いていて、結果、天の摂理に従っているのだ、と説いています。もうおわかりでしょう。他者のことを考えずに生きても、あなたが蝶なら花と、あなたが花なら蝶と、必要に応じてめぐりあうようにできているのです。人からどう見られるか、など気にしないで、例えばですが、寒けりゃマスク、花粉症ならマスク。まずは自分の健康のことを考えて判断しましょう。寒くもなく花粉も飛んでない平常時においては、自分は透明人間で誰からも見えないんだ、くらいに考えて、自分の思うがままにふるまいましょうよ。もちろん、法律とモラルの許す範囲で。

*大丈夫あなたがそこにいることを気にしてるのはたぶんあなただけ

33.3歳下の彼女と交際5年を超えましたが、どうにも結婚するモチベーションが湧きません。このままの状態でいいのかどうかもわからなくなってきました。これからどう動けばよいでしょうか。(30代・男性)
34.3歳上の彼と交際5年を越えましたが、いっこうにプロポーズしてくれる気配がありません。自分から頼んでもいい気もしますが、今のゆるい関係を気に入っていそうで、押したら逃げられるかもしれません。静かに待っているしかないでしょうか。(30代・女性)


 なぜかセットで質問が来ましたので、まとめて考えます。まず、第2回で「好きになるのは全員既婚者」という女性の相談を一度取り上げています。その際に、女性から見た「結婚することの得点失点」を列挙しました。再掲します。

 【得点】
・仕事に穴さえ開けなければ、好きな時に起きて好きな時に寝られる
・好きなものだけ好きな時に好きなだけ食べられる
・休みもカネも全部自分のために使い放題
・趣味を途中で放り出したって誰からも非難されない
・特定の相手に縛られない人生って最高。別れたら次の人
・旦那の実家に帰省とか、義父母との家族づきあいとか、想像しただけで蕁麻疹じんましん

 【失点】
・なんだかんだ言って、最愛の相手と同じ姓を名乗っている相手には勝てない
・子供はカワイイ。自分の子供ならなおさらカワイくて仕方ないだろうと思う
・旦那の収入があれば、ワークライフバランスを考えて無理なく仕事ができる
・実家の両親に孫を見せる。何よりの親孝行だと思う
・ゴキブリとか、電球の交換とか、固いジャムのふた開けとか、全部旦那が対応してくれる
・単身赴任大いに結構。亭主元気で留守がいい
・最終的に自分の骨を拾ってくれる人がいる安心感

 これ、男から見た結婚の得点失点にもほぼほぼ使えそうですね。では、今回33の相談者さんは、
(A)誰とも結婚する気がない
(B)今の彼女さんと結婚する気がない
 どちらなのでしょうか。

 前者ならこれは仕方ない、個人のライフスタイルの問題です。ただし、これは彼女さんにきちんと言うべきですね、「俺は誰とも結婚できない男なのさ、ふっ」と。
 個人的には私、この手の男は正直、好きではありません。女性に気を持たせつつ、ずるずると関係を保つ。この手の男にとって、彼女さんはまさに「都合のいい女」なのでしょうね。普段に比べて筆が荒れているように思えるかもしれませんが、気のせいです、気のせい。

 後者、これは「うーん、いい子なんだけど、75点くらいの彼女だから、生涯愛し続ける自信はない。これからもっといい女性との縁があるかもしれないし、踏み切れないんだよねー」くらいの感想ですかね。だとしたら、結婚相手としてのハードル(許容限度)を下げるか、彼女さんに「80点の女」になってもらうか、別れて次なる出会いを求めるか、のどちらかしかないわけです。どれを選ぶかはもちろんあなた次第ですが、相手(彼女さん)にとってあなたが合格点の相手かどうか、は、誰もわかりません。今は90点の男であっても、1か月先に75点の男になっているかもしれない。尊大にふるまうことなく、謙虚に丁寧に交際を続けてください。いやまじで。

 では次に、34の相談者さん、「プロポーズしてほしい女子」の目線で考えましょう。
 こちらも現在の心持としては、
(C)誰でもいいから結婚したい
(D)彼と結婚したい
 のどちらかですよね。

 先ほどの男性の心持ABと組み合わせてみましょう。

男性A×女性C:さっさと撤退、他の相手を見つけたほうがよい
男性A×女性D:つらいでしょうが上と同じ、もしくは覚悟を決めて告白
男性B×女性C:ある程度頑張って、彼をその気にさせる、だめなら撤退
男性B×女性D:相当頑張って、彼をその気にさせるしかない


 ということで、ポーカーみたいになってきましたが、相手の手札がわからない以上、手っ取り早いのは、
・彼にプロポーズさせるべく、ひたすら自分磨き
・自らプロポーズ
 あたりの手ですよね。
 もちろん前者には「あっさり無視される」、後者には「きっぱり断られる」というリスクもありますが、フラれたところで命まで取られるわけじゃなし、その瞬間に彼のことを嫌いになれるかもしれません。
 失礼な言い方かもしれませんが、婚活市場における女性の価値は、加齢に伴って低下していきます。あなたの目標が「彼との結婚」でなく「結婚」なのだとしたら、脈のない相手にいつまでも気を取られ、消耗戦しようもうせんを続けるより、退却して他の異性に転進したほうがよいでしょう。正面からぶつかって思わしくない結果が返ってきた時は、やがてやってくるであろう「結婚前提リアルガチ恋愛」の壮大なる予行演習だったと割り切って、気持ちを切り替えればよろしい。というわけで、早めに仕掛けることをお勧めします。

 最後に、おふたりの相談者さんにひとこと。

千手観音せんじゆかんのんとて手が千御入おはいそうらわば、弓を取る手に心が止まらば、九百九十の手は皆、用に立ち申すまじく。一所に心を止めぬにより、手がみな用に立つなり (不動智神妙録ふどうちしんみようろく

 千手観音を思い浮かべて。弓を持つ千の手の中の一本に集中してしまうと、ほかの手はまったく役に立つことをしない。野球ならキャッチャー、オーケストラなら指揮者。まず、全体をしっかり見たうえで、その後、個々に目を向けなさい、という教えです。
 人生も同様。社会という舞台においてあなたの台詞せりふの脚本を書き、あなたの行動の演出をするのはあなた自身にほかなりません。今の彼女さん、彼氏さんとのお付き合いはもちろん大切ですが、その方との恋愛や結婚が人生のすべてではありません。今の関係が壊れた時に抜け殻になって何も残らず、仕事にまで影響が出てしまうなら、社会人としては失格です。仕事やSNS、異業種交流会等を通して(未婚・既婚を問わず)多くの社会人と出会い、話をすることによって、今の相手を俯瞰的に分析、評価し、より冷静な判断ができるようになるかもしれません。
 その意味でも、今のパートナーを尊重し、丁寧につきあいつつも、のめりこみすぎないようにしてください。あなたが世間から評価されるポイントは、仕事、社会性、そして人間性だと思います。

*恋愛は将棋と同じだどっちかが投了するまでエンドレスで続く

 では今回はこのへんで。また15日後にお会いしましょう。
(第12回へつづく)

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高橋 泰源Taigen Takahashi

密教系寺院の住職、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP ®認定者。大学在学中に僧侶資格を取得。専門分野は宗教法人の税務・資産運用。宗教法人経営者としては「寺院の真摯な運営」、宗教者としては「人々の心身の安寧」を志向し、埋葬と瞑想と妄想の日々を送っている。

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