双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第40回 海からの伝言 後半

 インドア派の私でも、海の浄化力は無視できません。生命の源である大海原。そして海の中は潜在意識とつながっていると言われています。地球の約70%は海ですが、人間の体も70%が水分。人間も海から生まれてきたという説があります。人間の体は自然と同じ素材でできているのでしょうか。前述のマーメイドについての本にも「海に入りそのエネルギーを感じるとき、わたしたちは無意識のうちに、地球の古代の記憶、地球が成し遂げた進化のエネルギーに触れることになります」と書かれていました。生き物として進化した姿がこんな自分ですみません……という気持ちにもなりますが、母のような海のエネルギーが全て受け止め、浄化してくれます。
 この前、江ノ島の海岸でゴミ拾いをした時にSUP(スタンドアップパドル)というボードに立ってゆったりと漕ぐスポーツをしている一群が目に入りました。楽しそうだし、そんなに漕ぐのに技術はいらなさそうに見えたのでいつかやってみたいと思っていました。そして先日、葉山に行く流れになりSUPのレンタルに申し込んでみました。最初に見つけた初心者教室に電話して詳細を聞いたところ、「SUPは50mくらい沖に出た水深2〜3mのところで体験してもらいます」とのこと。完全にかなづちなので難易度が高いと思い「沖までは船とかに乗って行けるんですか? 途中で怖くなったら船に乗せてもらえたり……」と聞いたら「船はないので自力で漕いで自力で戻ってくることになります」そうで、いきなり足のつかない場所まで自力で漕いで行けそうにないので、その会社の体験コースは断念しました。それとは別にSUPをレンタルして簡単にレクチャーしてくれる会社を見つけたので予約。とくに沖に連れて行かれることもなく、波打ち際で自由に乗れそうな気配です。
 そして当日、一色海岸のSUPレンタルショップへ行き、ライフジャケットやウェットスーツ、パラソルなどを借りました。諸々で5000円くらいです。タトゥーが入った日焼けした青年(ふだん全く接点がなさそうな)に、立ち方や漕ぎ方などを教えてもらいました。パドルという長い棒を操ってこいでいきます。砂浜の上でシミュレーションして、海にボードを持って入るのですが、いきなり関門が。ボードが重くて持てません。だいたい15キロ位あるみたいですが、それを片手で持って海に入るのが、文字通り老体に鞭打つ感じでキツいです。引きずるようにしてやって海面へ。海に入ったら入ったで、なかなか怖くて沖に出られず、波打ち際に近い所で乗ろうとしたら、砂浜に近いほど波が粗くて立ち上がれません。そんな感じで数十分ほど、波打ち際で荒波に揺られていました。時々ひとりで落下して、またボードによじ登ったり。時々少し立ち上がってはまた膝立ちになるという繰り返しです。前に見た、ラクにSUPをやっていた人たちとは全然違う現実が。やってみないとわかりません。運動神経? 勇気?何かが足りないようです。しかし、波に揺られるうちに、海への恐怖心は次第に畏怖心へと変化していきました。海の波と一体化し、波長をシンクロさせることで、深い癒しが得られました。ただ、SUPがちゃんとできていなかったのに、次の日全身筋肉痛に……。何か乗り越えて心身共に強くなれた気がします。
(第41回へつづく)

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辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

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