双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第39回 海からの伝言 前半

 人生の節目にイルカの存在に助けられています。好きな動物の絵を描こうとして自然と手が動くのはイルカだったり、宇宙から来た高次元のイルカのスピリットがついていると言われたり、イルカとのふれあいスポットや水族館、イルカウォッチングに参加したり……。
 時々、まぶたを閉じると、イルカのビジョンが浮かんだり、守護霊のイルカのささやきを感じることがあります。そしてやはり実体を持ったイルカとの邂逅はインパクトが大きいです。イルカが視界に入っただけで心が癒されるようですが、それは美しい流線型の体や泳ぎのもたらす視覚効果だけではないのかもしれません。「マーメイド・マジック」(ルーシー・キャベンディッシュ/ セレーン・コネリー著)によると「イルカのパワフルなソナー(音波探知機)は、楽器を奏でる時に出る波動と同じで、振動によって癒しを提供すると信じられている」そうです。イギリスのドブス博士(名前が気になりますが……)がドルフィン・ヒーリングについて研究していて、野生のイルカと泳ぐことで自閉症やうつ病、多発性硬化症、ストレス、依存症などにポジティブな効果があることを実証。さらに別の研究では、イルカがソナーで人間の体をスキャンして、治療が必要な箇所を見つけ出し、それに対してエコロケーションエネルギーを生成。超音波を当てて体の不調調整してくれるそうです。さらにイルカの発する鳴き声が人間の脳波を修正し、免疫システムを強化。ストレスを感じている脳波であるベータ波が、イルカとのふれあいでアルファー波やシータ波に変化したりする説もあります。まるで泳ぐ医者のよう……しかも無償で縁もゆかりもない人間をヒーリングしてくれるんでしょうか。病院代わりにイルカウォッチングに行くことで健康を保てそうです。
 以前、天草のシークルーズ船に乗ってイルカウォッチングする機会に恵まれました。港は激しい雨でしたが、不思議なことに海に出ると雨はやんで、100頭以上のイルカの群れと遭遇。背びれがシンクロして水面を上り下がりする見事なフォーメーションに目を奪われました。子イルカもいて、好奇心旺盛な感じで横向きに泳いでこっちを見てきてかわいかったです。ジャンプしたり尾びれを水面に叩き付けたりしてアクティブでした。数十分の間でイルカのヒーリング効果で、かなり心が軽くなった感が。その時撮った動画を見返すと、イルカの動きに波長を合わせることで脳波が整う体感があるので、ユーチューブのイルカ動画でも効果があるかもしれません。
 それでも時々は生身のイルカに会いたくなるので、人間として申し訳ない気持ちになりながらもイルカのいる水族館へ。イルカショーのイルカたちは、自由がない環境で、疲れた人間たちを癒そうという使命感を持ってくれているように見えて、感謝の念にたえません。以前、マーメイドのボディワークを実践している、人魚や海の生き物とテレパシーできるという先生に、水族館のイルカについて聞いたら「イルカは非常にポジティブな性格なので、水族館のショーを通じてメッセージを送ってくれていることがあります」とのことでした。
 先日久しぶりに訪れたのはしながわ水族館です。バンドウイルカの赤ちゃんが生まれたばかりで、育休明けにショーが再開されたとのこと。イルカの赤ちゃんをぜひ拝見したくて、イルカプールへ。約3ヶ月前に生まれたという赤ちゃんはサイズ感が小さくてかわいいです。母イルカにじゃれついたり、並んで泳いだりしていました。赤ちゃんイルカは、大人のイルカが泳いで発生させた水流に乗ることで、泳ぐ練習をするのだそうです。水の上ではアシカショーが行われていましたが水中のイルカに目が釘付けでした。イルカの泳ぐ姿なら何時間でも見ていられます。イルカの前から離れられないのは、それくらい癒しが必要ということかもしれません。イルカは狭いプールの中でも泡を発生させて遊んだり、二頭で絡み合ったりしてプロレスに興じているようでした。クリエイティビティあふれるイルカを眺めている間は、こちらもスマホ依存から少し離れられます。水面のキラキラした反射がイルカの体にプロジェクションマッピングのように投影されていました。服も何も持っていなくても反射で好きな色をまとえます。逆さまに泳ぐイルカに「重力がないのはこんなに自由なんだよ〜。人間はいろいろなものに囚われているね」とメッセージを送られているようでした。今回のショーは育休明けということで穏やかでしたが、その分チルアウトできたようです。イルカショーの間、眠気に襲われたのは体を調整してもらっていたのかもしれません。鳴き声も聞けました。
 ショーのあとは、隣の水槽でジャンプしたり、垂直に水から出てきたり、胸びれを振って挨拶する練習に励むイルカたち。そのプロ意識に頭が下がります。仕事の鋭気までわけてもらえました。また、水に対しての恐怖が強いのですが、泳ぐイルカを見ている時は恐怖心が和らぎます。「よく水の中で平気ですね」とイルカに心の中で聞いたら「人間の方こそよくそんな汚い空気の中で生活できるよね」と心の中で受信したような……。高速沿いの帰り道を歩きながら、水中の方が平和かもしれないと思いを馳せました。
 
(第40回へつづく)

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辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

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