双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第37回 教会ヒーリング 前半

 教会に行くと心が落ち着き、サンクチュアリのパワーで清められる感じがします。ただ、神社やお寺は万人にオープンでも、教会の場合は若干、素人には入りづらい雰囲気が。でも大きな教会なら信徒でない一般人がまぎれこんでも大丈夫かもしれません。都内で大きな教会といえば、四谷に鎮座する聖イグナチオ麹町教会です。調べたら、ある平日の夕方、イエズス会創立者、聖イグナチオ・デ・ロヨラ司祭(イエズス会創始者)のミサがあることを知りました。イエズス会総会長、アルトゥーロ・ソーサ神父もお出ましになるとのこと。完全部外者ですが、何か霊験を授かりそうです。ちなみに私が通っていた中高もキリスト教でしたがプロテスタントなので、カトリックとはしきたりなども違う感じです。
 聖イグナチオ麹町教会に到着したのはギリギリの時間帯。急いで向かう二人連れのシスターのあとをついて聖堂へ。広場には白装束の厳かな佇まいの聖職者の集団がいて、聖なる結界に一瞬ひるみました。外国人の聖職者も結構いらっしゃいます。そちらを通り抜けて中に入ると、特別なミサなので座席が全て埋まっていました。まじめで良識的な人々しかいなそうな客層です。先程のシスターたちは係員がうやうやしく座席に案内していて、ここではセレブのようです。後ろの方に立って約二時間のミサを見学。外はわりと猛暑ですが内部は涼しく、こんなに空間が広いのにどうやって室温を下げているのか見当もつきません。神風的な神様の恩恵を感じます。
 最初、モーゼのように人の波がかきわけられ、聖職者の方々が入場。最後にイエズス会総会長が歩いていてかなり貫禄がありますが、こんなに近くで拝見して良いのかと思う距離感。荷物チェックとかなくて大丈夫だったのでしょうか? ダライ・ラマ法王の来日講演も厳重な荷物チェックがありましたが……。イエズス会総会長は日本の性善説を信じてくださっているのなら嬉しいです。入際の歌、回心の祈りなどに続いて聖書の箇所「エレミヤ書」が朗読されました。その一節「恥とそしりを受けねばなりません」というフレーズが心に残りました。聖書の表現、文学性には心惹かれるものがあります。賛歌(プロテスタントでは「讃美歌」でカトリックでは「賛歌」と表現)に関しては、人が多く来すぎてパンフが品切れになってしまい、歌詞がわからず参加できないのが残念でした。歌に関しては不完全燃焼です。
 VIPを招いての特別なミサなので、ソプラノ歌手の女性の独唱タイムなどあって、無料で聞けて感無量です。総会長のありがたい説教もありました。聖イグナチオや聖フランシスコ・ザビエルが神様の愛を体感したエピソードについて。聖イグナチオの弟子としての使命感。弟子として、イエズス会会員としての心構えについて、ストイックで敬虔なお話でした。一瞬いかついルックスの総会長ですが、実際は献身的なお方のようです。
 その後、祈りに続いて「感謝の典礼」があり、司祭が何か液体を入れた銀色の器をひもで吊るし、ブラブラさせていました。場を浄化する力があるのでしょうか。そして参列者が聖職者のもとに並んで、白い丸いせんべい状のものを受け取ったり口に入れてもらっていました。全員並んでいたので私も受け取り、白いせんべいを眺めていたら、メガネの男性が近づいてきて「カトリックの信者ではないですよね? それは聖体拝領といって信者だけが受け取れるものです」と注意されたので、せんべい的な物体をそのまま手渡しました。この場になじんでいたつもりでしたが、異端というか異分子オーラが出てしまっていたのでしょうか……。プロテスタントとは全然違う儀式の進行に戸惑います。「主の祈り」を唱えたあとに、周りの知らない人同士で「主の平和」と唱え合うという暗黙のルールがあったり、十字を切るタイミングなども難しく、やはり挙動不審になってしまいました。にじみ出る不審者感が……。心の癒やし的にはカトリックのしきたりについて予習してきた方が心安らかにミサを体験できた気がします。今回はあやまちを犯してしまい、罪人として神に救いを求めたくなりました。罪を自覚するのが第一歩かもしれません……。
 
(第38回へつづく)

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辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

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