双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第36回 地球クリーニング 後半

 地球の怒りを鎮めるためには、街だけではなく海辺の清掃ボランティアに参加したいと思い、検索したら江ノ島で十四年もゴミ拾い活動をしている「海さくら」という団体が見つかったので参加してみました。本当は誰か誘いたかったのですが休日の朝9時半江ノ島集合というスケジュールなので誘うのが気が引けて、ひとり参加。
 待ち合わせ場所は駅から十分ほど歩いた江ノ島大橋の下の広場。数百人はいる感じで団体で来ている若いお客さんが多く、アウェイ感がありましたが、人目を気にせず下を向いてゴミだけに集中していきたいです。参加者のうちあらかじめ申し込んだ人はおそろいのブルーサンタのTシャツと帽子をもらえます。申し込みには間に合わなかったのですが、キャンセルが出たとのことで帽子だけもらいました。一体感が高まります。
 広場に立っていたら、参加者の周りを大量のトンボが飛び回っていました。勝手にゴミ拾いを応援してくれているんだと感動。最初に簡単な開会式があり、「海の日に海の恩恵に感謝してゴミ拾いしましょう」という呼びかけがされました。「海のゴミの7割は川からやってきます。街の排水溝から下水を通じて海にやってきたゴミです」という話はちょっとショックでした。チャラい海水浴客が落としたゴミが大半だと思っていましたが、実際は街のゴミがほとんどだったのです。
 この開会式くらいから自主的に広場のゴミを拾っている人がいて、すでに出遅れた感も。「海にゴミは」「行かせない!」という合言葉を全員で叫んだ後、ゴミ拾いスタートです。
 スタート直後はゴミが見つけられず、ゴミかと思って海水浴客のビーサンに近づいたり、ゴミだと思ったら泡を吹いてるカニだったり、行きてるか死んでるかわからないヒトデだったりしました。参加者が多いのでゴミを奪い合う感じです。ボディボードに乗っていた女性が、参加者の男性に拾ったゴミを渡していて羨ましいです。ゴミをもらう人が羨ましいなんて今までなかった感情です。
 それにしても一定のリズムで「ザザーン」という波音など聞こえてきて気持ちいいです。次第に海と対話している気になってきました。いつもありがごうございます、人間の愚行をお許しください……。そうして注意深く見ていたらときどき砂浜に光るものが。ガラス片が探せば結構あることに気づきました。どこから流れ着いたのかわかりませんが海水浴客にも危険です。透明なガラス、茶色いガラスなど重点的に拾いました。(あとで調べたら、角が取れてきれいなビーチグラスは湘南エリアで地域通貨として使えるそうです。拾ったのはだいたい鋭いガラス片でしたが、今後また拾いに行く楽しみができました。) そしてときどき燃えるゴミの破片も拾い、気付いたら一時間以上経過。微量のゴミしか拾えませんでしたが、海と交流できた感じで良かったです。
 参加者が戻ってきて広場に集まると、海の日の記念でレイブイベントのようになり、湘南乃風のハンクンがステージに登場。「まっすぐな気持ちあればオレに言わせれば間違いない!」と会場を盛り上げ、観衆はサンタ帽を振り回したりジャンプしたりで盛り上がっていました。健全オーラが漂っていました。しかし1人だと若干のアウェイ感が……。そんな時は海に意識を向けてつながりを感じました。
 最後、心地よい疲れとともに会場を後にしました。海水浴の帰りはぐったりしてしまいますが、ゴミ拾い帰りはただただ爽快で体が軽いです。ふと思ったのですが、ゴミを掃除しながらカルマも消していたのかもしれません。海に行く目的の一つとして、ゴミ拾い、というジャンルが確立してほしいと感じました。心の片隅ではいいことをしたから、何かご利益があることを期待しつつ、江ノ島の弁天様に一礼して帰りました。
 今回、ゴミ拾いした場所とは目に見えない絆ができて、自分にとってのパワースポットが増えたような感覚です。テリトリーにしたい街があったらゴミ拾いするのがおすすめです。
(第37回へつづく)

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辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

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