双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第28回 アセンテッドシティでポジティブマインドに 後半

 メルボルンは地名もおしゃれだし、州の名前はVictoria(勝利の女神)。この街に到着した瞬間、ここは人生の成功者が多く住んでいる、と、直感しました。
 空港から車でホテルに向かうと、夜中の暗い風景しか見えませんでしたが、道は整備され、建物は整然として、とにかく経済的に豊かな都市であるのが伝わってきます。ホテルのあるコリンズストリートは、教会や市庁舎、ブランドショップなど荘厳でクラシカルな建物が並んでいました。この通りの美しさ、波動の高さは、東京だと丸の内のあたりがちょっと似ている感じでしょうか。
 翌朝から街を取材したのですが、初日の朝食に行ったカフェでは、現地の人がタンクトップとかキャミソール、Tシャツといった軽装にビーサンというこなれ感を漂わせていて圧倒されました。気温が予測できず、ヒートテックを何枚も持ってきてしまいましたが、滞在中は必要なさそうです。人気の店らしく活気しかありません。カフェの店員さんに注文したら、受け答えが「Perfect!」「Fantastic!」など、ポジティブなワードなことにも驚きました。他の店もそんな感じで「Lovely!」「Great!」「Cool!」と、チョイスをホメられているようです。日本の店員の応答「はい喜んで!」とはちょっとニュアンスが違いますよね……。「Everyone happy?」と店長さんが幸せか確認してきたこともありました。
 メルボルンはカフェ文化が盛り上がっていて、レベルの高いおしゃれカフェがいたる所にあります。これだけでも十分テンションが上がります。カフェではリコッタパンケーキが人気だったりして、ベリーや種、ナッツや食べられる花がトッピングされていて、見た目も多幸感が。オーガニック食材が豊富で、グルテンフリー、MSGフリーなど食への意識も高いです。波動高い系の街、メルボルン。南半球で太陽の光が強いということもあるかもしれませんが、滞在して2日くらいで自分の中のポジティブなスイッチがonになったのを感じました。日本よりも笑顔が自然に出ている気がします。
 メルボルンの多幸感についてまとめると……
・気候が良い
一日の中の気温の変化はありますが、冬はそんなに寒くならないそうで冷え性にはありがたいです。
・街がきれいすぎる
海外の都市に行くと、ときどきゴミ臭がしますが、メルボルンでは全然臭気を感じませんでした。川原で自発的にゴミ拾いしている市民もいました。
・アート関係が充実している
 美術館や劇場だけでなく、レベルの高いストリートアートが所せましと描かれた通りも。若者のエネルギーはアートで発散されるようです。
・カフェがたくさんある
 カフェ好きの女性なら毎日何軒もハシゴできて心ゆくまでおしゃれ空間に浸れます。あと、昼からお酒を飲んでいる人もたくさんいます。チルアウトヴァイブスが漂っています。
・庭園が美しい
あちこちに自然豊かな公園があり、美しい花や噴水など眺めていると死後の世界に来たのかと思うくらいです。
・人々がフレンドリーでポジティブ
 目が合うと笑いかけてくれます。ポジティブなのは生命力の強さを先祖から受け継いでいるからでしょうか? イギリスから遠路はるばる船で渡ってきた、生命力と運の強さを感じます。
・民度が高い
 ちょっとぶつかったり、進路をふさいだりしただけで「ソーリー」と向こうから謝られます。東京だと睨まれるところですが……。
・イケメンがたくさんいる
 都市部は美男美女が多くて、スタイルも良くて圧倒されます。成田発のJAL直行便の時点から日本人が少なくてイケメン率が高いです。ただ観賞するだけですが……。
・一挙一動に余裕がある
 現地在住の方が「こっちの人は走らないでゆっくり歩く」と言っていました。たしかに走っている人はほとんど見なかったです。東京のノリでトラムに駆け込み乗車した自分が恥ずかしいです。
・17時には店が閉まり、仕事が終わる
 残業とかはなく、夕方には帰宅して充実した家族との時間を過ごせます。家族がいない人は……? とちょっと思ったのですが、出身国のコミュニティーがあってそこで家族的な付き合いができるそうでした。
 日本では店が遅くまで開いているので、仕事帰りに物欲が止まらず、お金を浪費してまたそのためにたくさん働いて……というループにハマっているように思います。最初は物足りなかったのですがメルボルンのように夕方では店が閉まって、半強制的に物欲が抑えられるのは良い面もあります。
 
 数日間の滞在でしたが、メルボルンはすでにアセンションしている天国に近いアセンテッド・シティでは? と思えてきました。虹まで目撃して、祝福されているような気持ちになりました。
 しかしそのアセンテッドシティに、自分がふさわしいかというと……。経済力と英語力の問題がありました。富裕都市なので物価も高めで、服が足りなくなったら現地で調達すればいいと思っていたのですが、おしゃれっぽい店に入ったらワンピやスカートなど大体4~5万円しました。Tシャツでも1万円以上です。服が買えなかったのが心残りです。
 そして英語力に関しては、ポジティブで幸せな現地の人々を前に圧倒されて、いつもより声が小さくなり「このカンガルーの種類は?」「フライドポテトはありますか?」といった簡単なセリフも三回くらい繰り返して通じたり通じなかったりというレベル……。
 でも滞在中はだいたいポジティブでいられて、他の都市では得られない高揚感がありました。経済力と英語力を高めていつかまた訪問したいです。
 約10時間のフライトで日本に帰国し、電車に乗って途中の駅でちょっとぶつかったサラリーマンに舌打され、東京に戻ってきたな、と実感しました。メルボルンでチャージしたポジティブエネルギーで乗り切っていきたいです。
(第29回へつづく)

バックナンバー

辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

  • 双葉社
  • 小説推理
pagetop