双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第27回 アセンテッドシティでポジティブマインドに 前半

 笑顔の足りない人生を送ってまいりました。
 高校時代はマクドナルドでバイトしていたのですが、笑顔が足りないと言われてあまりレジには立たせてもらえなかったとです……(ヒロシ調)。トイレ掃除と灰皿洗いばかり命ぜられていた記憶です。友だちもできませんでした。
 大人になってから、女性誌の合同取材でヨン様に話を聞く機会がありました。インタビュー中、ヨン様が何か言って皆笑い、その時に突然「この中に、ひとりだけ笑っていない人がいます!」と指摘され気まずかったです。微笑みの貴公子に、笑顔じゃないと責められました。ヨン様の完璧なインプラントスマイルの前では何も言えません。
 自分では笑顔のつもりでも、周りには全く伝わっていないようです。出版関係のパーティで、同じテーブルの女性に「本当に笑わないんですね」と言われたこともありました。
 先日も、スピリチュアルカウンセラーに「どうしてそうなっちゃったの? 子どもの時はもっと笑っていたのに……」と不憫がられました。私としては愛想よく談笑していたつもりだったのですが……。
 仏教の教えに「和顔施」という言葉があります。相手に笑顔を見せることは、善行の一つであるそうです。私は今まで全然できていなかったかもしれません。もし無表情で周りの人を不安がらせていたとしたら、逆に負のカルマを積んでいた可能性が……。
 笑顔について考えるきっかけになったのは、最近インドやオーストラリアを旅して、それぞれの国の人の笑顔に感銘を受けたことです。
 インドでは貧しくて窓ガラスも電気もないような家が並んでいる村を通りかかりましたが、ツアーバスが通ると、裸足で走り出てきた子どもたちや親御さんたちが、屈託なく笑いかけてくれました。思わずこちらも笑顔で手を振ったりしました。インドの人たちは神や聖者への信仰心が熱くて、不安感もそんなにないと聞きました。神様に全てを委ねているからこそ、ピュアな笑顔を見せられるのでしょう。
 オーストラリアのメルボルンは、完璧に整備された美しい都市で、気候も良く、民度と経済力の高さに驚きました。「世界の住みやすい都市ランキング」では上位 (2018年は2位)ということもあり、幸せそうな住人ばかりで、目が合うとポジティブに笑いかけてくれました。
 これらの国々での体験から、良い笑顔は、
・無邪気な笑顔
・満ち足りた人の笑顔
・ポジティブシンキングの笑顔
・慈愛の笑顔
などがあるように思いました。
 逆に波動が低い笑顔は、媚びへつらう笑顔、下卑た笑顔、下心満載の笑顔、片側の口が鋭角に釣り上がった見下し笑顔、威圧笑顔、などが浮かびますが、ここでは良い笑顔についてフィーチャーしたいです。
 オーストラリアのメルボルンでは、聞くとマクドナルドのバイトでも時給3000円くらいもらえるそうです。(私は当時590円でした……)初任給も700万円くらいだと聞きました。もちろん物価も高いですが、所得が高かったり、環境が良いことで自然と笑顔が浮かんでくる、というのはあると思います。実際、私もメルボルンに滞在している間、自然と口角が上がっていました。なぜか体も軽く、不思議な幸せ感に満たされていました。
 オーストラリアに移住した日本人女性が、「東京に帰ると空気が重い」「マスクをつけている人ばかりで異様」と言っていました。日本人は笑顔が少なめなのに、マスクでさらに顔の表情がわからなくなってしまっています。マスクが今や日本人の特徴の一つになってしまっています。空気が読める日本人なので、目だけで意思を通じ合わせたり、さらに高度なステージに達しようとしているのかもしれませんが……。
 そんな日本人の中でも表情が乏しかった私がオーストラリア・メルボルンで体感したことを、後半でさらにくわしく綴っていけたらと思います。
 
(第28回へつづく)

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辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

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