双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第22回 腸内細菌の力で心を整える 後半

 健康状態やアンチエイジング、もしかしたら性格にも関わっているかもしれない腸内細菌。「腹黒い」というのは腸からきている言葉なのかもしれません。昔の人は体感的に腸の重要性を知っていたのでしょう。人間の内臓は腸からできると言われています。
 ちょっと前に、女性誌の企画で「マイキンソー」を試す機会がありました。腸内フローラの状態を調べられる検査キットです。採血なのかそれとも唾液か……と思いきや、便そのものを送るという検査法で、キットの中には水洗便器の水に浮かべて便を採取しやすくする「らくとりシート」まで入っていました。水に浮かぶか心配だったので、シートは使わずになんとか採取し、厳重にチューブとビニール袋に入れて郵送しました。
 さらにウェブ上で、自分の便の形態を候補の図から選ぶアンケートに答えたりするうちに、羞恥心とか理性が外れていき、楽しい気分になってきました。「硬くてコロコロの兔糞状」「ソーセージ状であるがでこぼこした塊状」「表面にひび割れがあるソーセージ状」「蛇のようなとぐろを巻く便」「水様で、固形物を含まない液状の便」……便の形態を説明するのにこれほどのバリエーションがあるとは。だんだん便を知らない人に見られることへの抵抗も薄らいでいきました。ちなみにPRの仕事をしている美女の友人もマイキンソーで検査していて、彼女と便の採取法について語り合って距離が縮まった感がありました。
 約一ヶ月後、楽しみにしていた結果が出ました。専用のサイトにログインして見られるようになっています。送った便がショボい感じだったので結果もそれなりだろうと思っていました。
 まず出てきたのは「あなたの腸内細菌タイプ B 型」という表示。血液型のようですが、タイプはB、P、R、混合型があるようです。B型の特徴は「動物性タンパク質や脂質を摂取する食習慣との関連が報告されています」と、食生活が便でバレバレです。腸からの通知表のよう。
 また、腸内細菌の割合で太りやすさもわかります。デブ菌であるファーミキューテスとやせ菌であるバクテロイデーテスの割合は、私の場合デブ菌がやせ菌の3倍の61.68%もあり、「太りやすい体質」と出てしまいました。「FB比が正常上限より高い傾向があり、太りやすい体質と言えます。肉や動物性脂肪の多い食事に注意し、和食中心の食習慣や間食を控えるなど、食事内容や食事量の見直しをしてみましょう」というアドバイスが。腸内にうごめくデブ菌たち……。消化・吸収を促進する乳酸産生菌が少ないのは、ヨーグルトを食べる習慣がないせいでしょうか。
 でも、ポジティブな結果もありました。ビフィズス菌、酪酸産生菌、エクオール産生菌は、基準値より多めでした。ビフィズス菌は腸内環境を整えたり、免疫力を高めます。酪酸産生菌は腸管内の細胞のエネルギー源となるそうです。エクオール産生菌は、イソフラボンからエクオールを作ることができる菌で、エクオールは女性ホルモンに似た働きをするそうです。若さを保つ菌なので別名「美魔女菌」と呼ばれているとか。こちらの菌を持っている人は日本人では5割ほど。何も高価な物は持っていませんが、このエクオール産生菌を持っていることだけで、ちょっと自信が持てそうです。ちなみにビフィズス菌を増やすにはやはりヨーグルトや納豆が良くて、酪酸産生菌はぬか漬けに、乳酸産生菌は発酵食物に含まれているとか。最終手段として、腸内環境が良い状態の人の便を移植(カプセルや浣腸で)という方法があるそうです……。もしかしたら自分の便、お金になるかも、と邪な心が芽生えました。
  「階層ごとの菌組成」というページを見たら、Clostridia、Firmicutecs、Proteobacteriaなど、菌の学術表記が並んでいました。形や性質など調べると、なんとなく陰キャと陽キャにわかれてそうで、腸内の菌関係が気になります。平和を保っていてほしいです。
 健康食品を扱うアンファーの研究者の知人に結果を見てもらったら「悪性に属す菌叢はほとんど見られません」とのことで、腸内細菌はまじめ系のようでした。本体の人間よりも、腸内細菌の方が立派な気がしてきました。そんな彼らを養うためだと思うと、仕事へのモチベーションが高まります。もはや腸内細菌は私にとって扶養家族のような存在です。もう淋しくありません……。
(第21回へつづく)

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辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

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