双葉社web文芸マガジン[カラフル]

無心セラピー(辛酸なめ子)

第21回 腸内細菌の力で心を整える 前半

 何も食べないで、プラーナ(光のエネルギー)だけを吸収して生きられる、という特殊な方々がいます。不食者(ブレサリアン)と呼ばれ、ベジタリアン→フルータリアン(果物のみ)→リキッダリアン(液体のみ)の、さらに上の存在。(個人的にはその間に、土を食べて生きる土タリアンも入る気がしますが……) 先日、オーストラリア人の不食のカリスマ、ジャスムヒーンさんの講演に行ってまいりました。60代とは思えない美貌と肌の張り、そしてテンションの高さはとても何も食べていない人には見えず、驚異的です。
「不食の人が増えれば、地球の飢餓問題も解消されます。世界中の人が違った次元に移行してパーマネントハーモニーが実現します」
確かに……。飢餓もなくなり、必死で働かなくても良くなります。ブレサリアンになると、「今生最高の自分」になれて「量子的なネバーランド」で生きられるそうです。精神的にも学術的にもレベルが高すぎです。不食は、デトックスして健康になれる、インスピレーションが高まる、老化がスローダウンする、そして地球にも優しいなど、素晴らしい効果があるそうです。
 何か普通に食べていて申し訳なくなってきましたが、セミナー中のお昼休みはガッツリ、ソーセージのパスタを食べてしまいました。他の参加者のおじさんたちは、お昼を食べなかったとかジュースだけにしたとか言っていて意識が高いです。日本人の不食の有名人、2008年から食べ物を食べていない弁護士の秋山佳胤さんや、一日青汁一杯しか飲まない森美千代さんもいらして、不食セレブたちがまぶしかったです。二年ほど前、秋山弁護士を取材した時は、取材スタッフにコーヒーを出してくださり、ご自分は一切水分もとらずに数時間話し続けていて、やはり普通の人ではありませんでした。飲まず食わずで普通の格好で北アルプスに登頂してきたという話におののきました。以前、森さんを取材させていただいたこともありましたが、「食べる量を徐々に減らした方がいいですよ」とアドバイスいただいたのに、実行できていない不甲斐なさ……。ちなみに森さんは特殊な腸内細菌が持っていて、植物を分解してアミノ酸になる仕組みだそうです。精神的に高まり悟りに近づくことで、腸内の組成も人間離れしていったのでしょうか。
 不食に憧れつつも、私の体はまだ全然そのレベルではないようです。このところ風邪にかかる回数が多く、ちょっと前もハードな風邪で数日間食べることができませんでした。気分が悪く、水くらいしか飲めない日々で一時的に不食状態になったのですが、如実に体にダメージが出てしまい、頻繁に足がつって仕事の打ち合わせでもなかなか目的地にたどりつけない状態に。この時、私にはまだ不食はムリで、体が栄養素を欲していると実感しました。ベジタリアンですらハードルが高いです。好物の餃子などがやっと食べられるようになって、少しずつ回復していきました。不食の人は風邪すらもひかないそうなので、肉体をまとっていても半分エネルギー体のような状況なのかもしれません。
 聖人レベルでないとできない不食ですが、一般人向けの本には、日本人の粗食信仰に警鐘を鳴らす内容も書かれています。『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』(藤田紘一郎著)には、肉や卵を控えた粗食の生活で、血清アルブミンが減ってしまい、新型栄養失調になって命が縮む危険性について書かれていました。普通の人は肉や卵も食べた方が良いみたいです。
 また、「炭水化物抜き」などやっている人も多いですが「腸内細菌の餌になる炭水化物は食べてよい」とありました。そしてやっぱり体に良いのは野菜や果物、豆類。多く摂取すれば腸内環境が整って免疫力が上がります。「免疫力の70%は腸内細菌が作ります」と書かれていました。逆に腸内細菌を減らしてしまうのは、スナック菓子、ファストフード、レトルト食品など……。忙しくてつい食べてしまいますが、フライドポテト食べ過ぎだったのが免疫力を下げて、結果として風邪にかかりやすい状態になってしまったのかもしれません。
 調べれば調べるほど、重要そうな腸内細菌。腸は第二の脳、とも言われます。性格にも影響を与えているという説やサイコ・バイオティクスという腸内細菌が、性格の良し悪しを決めている、という説もあります。腸内会議で悪玉菌と善玉菌が激論していたりするのでしょうか。腸内への妄想が膨らみます。そんな折、腸内細菌を調べる機会に恵まれました。
 
(第22回へつづく)

バックナンバー

辛酸 なめ子Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。『辛酸なめ子の現代社会学』『大人のコミュケーション術』『おしゃ修行』『魂活道場』など著書多数。

  • 双葉社
  • 小説推理
pagetop