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大人を自由にする!プラトン恋愛名言~蝶々×米田郷之 往復書簡~ / 蝶々 × 米田郷之・著

ヴィーナス、アドニス、クピド (アンニーバレ・カラッチ 1590)

9通目 蝶々より米田さんへ 最終回その1

エロスとは自分に欠けている美への欲求である。
愛とは欲望であり、欲望とは欠如である。

 米田さん、こんにちは。
 先日は都内でのランチ会、ありがとうございました。
 相変わらず、まるで書生さんのように(!)小ざっぱりとしたたたずまいの米田さんに久々にお目にかかれ、仕事についてはもちろん、人生や大人の恋愛についても、ざっくばらんにお話しさせていただけて、楽しかったです。
 でも、お別れ間際に、米田さんが突然「ちょっと視界が……変なものがよぎるんです」と言われたので……。「ナニゴト!?」とちょっと青ざめてしまいました。(世相のせいもあるのでしょうか、最近、公私、老若男女問わず、あちこちで思わぬ病気になられたり体調を崩されてらっしゃる方が多い気がしていて)。  

 幸い、米田さんはあの後すぐに病院に行かれて大事ではなかった、とのことですが。その後、お加減はいかがでしょうか?
 私も、ようやくというか、年々しみじみ痛感中なのですが、守りたいものや叶えたいビジョンを持っているほど、まずは自らの心身の健康が第一、なんですよね。米田さんも、ご定年後、いよいよ第二の人生をはじめられたところ。今後のさらなるご活躍のためにも、お体、何とぞお大事になさってくださいませ。  

♥ ♥ ♥

 さてさて。
 米田さん、直接お目にかかってお話ししてると、知的でデリケートかつ、さまざまな立場の方々への深い思いやりに満ちたお優しい人柄がビシバシと伝わるのに……その直後にいただいた前回のお便りを拝読して、びっくり!
「コラ~・・・」すみません、ちょっと、以前の男子コラ~・モードにタイムスリップしそうになってしまいました。  

 GW最中、深夜の失礼で迷惑な出来事も日大アメフトの件も、大変不快なことだと私もお察しできるのですが、米田さんたら、プラトンのお便りの冒頭にてそんなにお怒りにならないでくださいまし!
 だって、ただでさえ世知辛せちがらくつまらないニュースあふれる世の中で、日々頑張っていらっしゃる読者の大人女性たちの恋愛意欲、盛り上がらないじゃないですか~。お話しされていた奥様との恋愛エピソードなど書いてくださったほうが、どれだけリアルに詩的で(?)、大人女性たちの恋愛本能も刺激されることでしょう!
 さらには、「僕は元ショッカー」ときた。うう。
 米田さんがそう思われているなら、私ももちろん異議なく構わないんですが。元ショッカーと名乗られちゃっては、米田さんをご存じなくて、知的な大人男性と思われていた読者さんたち、頭が急に混乱しちゃう(笑)。そして、米田さんのいいところや熟考された素敵なメッセージも、ちゃんと伝わりづらくなっちゃうのでは? と私、編集者でもないのに、気をもんでしまいました。柄にもなく。  

 米田さんのおっしゃられるように、米田さんには、本当に子供っぽさが残っていらっしゃるのかもしれませんね。  

 ただ、私、世の男性というものは、だいたいそういうところがあるんじゃないのかな? と思ってはいるのです。世間的な肩書やら社会用の仮面やら、いろいろを取り除いてみれば。おそらく、プラトンしかり。
 もちろん、女性にも女性だからこそまぬがれられない業みたいなものはあると思いますし、それを言ったら野暮やぼだから、真の大人の女は言わないだけで(ごめんなさい、私は野暮な物書きということで!)。  

 特に、いわゆる権力者や立場のある人ほどそのようなふるまいを隠さなかったりするのは、すなわち男というものの自然が、もともとそうなんだろう。
 俗にいう偉い人ほど、そのことを隠さなくても、世の中で自分を通せるからだわ……と私は思っているんです。男として自信満々な業界や会社の人ほど、好みの女性以外には一瞥いちべつもくれない、気遣いさえしない、それが何か? みたいな態度、ずっとよく見てきたので。
 でもだからこそ、女性的だったり中性的な人にはできない、突破できる壁だったり実現力があったりもする。これはいい例じゃないのかもしれませんが、たとえば故・三島由紀夫さんなども、いろんな意味で男性として去勢されていなかったからこそ、公開切腹自殺までいってしまった、という見方もあるかもしれません。  

 そして……子供の頃の立ち位置やその人の原型って、確かに、コアなところは大人になっても同じかもしれないですね。
 これは、会社員時代にある日、しみじみ思いました。(この人もこの人も、もし小学校や中学時代のあの頃、同じクラスだったら、どういうポジションやグループの人だろう?)と。そうして、肩書や会社的関係性をすべてとっぱらってから、上司や年下の新人くんに限らず、一人一人の方をそういう視点で見なおしてみると……その人のリアルな人物像や良き対し方、落ち着く関係性が見えやすい気がしたのです。  

 いまだ<幼稚>がご自身の中心にある、と堂々おっしゃられる米田さんじゃないですが、私自身も、自分について時々似たようなことを感じることはあるんです。
 社会人になっても、物書きになっても、ママになっても、結局、本質的な自分って、子供のころと、何か変わったんだろうか?と。
 しかも、私の中心にいつもあるのは、<異物感・異星人感>なんですよね。
 中2病風で、私もいつまでも言いたくないのですが、この感覚、それこそ幼稚園時代くらいから、ハッキリと自分の意識の中にあって。
 親やみんなは何を言っているのかな? ほんとに? 本気で? どうしよう、私ホントによくわからない…………? と、家族の中でさえ戸惑い続け、(お口にチャックしていなくては。人を動揺させてしまう!)と、自分自身の肝心なことについては、箝口令かんこうれいい続けていたかんじ。これは4、5歳からの度重たびかさなる記憶なので、けっこう筋金入すじがねいりかもしれません。  

 近年では、ママ業界に張り切って(地味にして・高齢母さんらしくして)なじんでいたつもりだったんですが、最近も、「ナニモノかと思ってました」とやっと打ち解けてきたママ友たちに口々に言われてしまい、公園で自分を笑ったばかり。(私もいい大人なんだし、意味ない努力はやめとこうか)って。
 どこにいっても、いっぱしの母さん風にふるまっているつもりでも、結局は子供のころの現象と同じように、浮いたりズレてしまっているのですね☆そういうむなしさやあきらめの境地みたいなものは、多かれ少なかれ、誰にでもあるのではないかしら。そして、そこからが、本当に自分を生きる醍醐味であり、じつは本当に恋愛の意味を分かった上で楽しめる……というか。  

♥ ♥ ♥

 続けて、思わず笑ってしまったのが、「暴走してフラれる」というフレーズです。
 この笑いも、米田さんを笑っているわけではなく、男性性に対する切なさの笑いです。
「男の子全開の人!」って、特に大人女性にとっては、魅力的なんだと思うんですよ。米田さんも、ずっと年下より年上派だったとおっしゃられてましたね。
 で、本当にそうなんですが、いざ、Mr.男の子全開くん! と、本気でつきあったりともに生きようか、となると……いや、ちょっといちいち興奮しすぎだし、困るわけよね。女はどうしても現実的なので、そうガンガン一方的にこられると、どうしても心身が離れていっちゃうな。って、そんな恋愛は、私にも過去あった気がします。  

 ところが、男と女や人間関係というものは、米田さんの憤慨ふんがいされてらっしゃるように(?)そう簡単に、一方の都合や事情で割り切れるものでもなく。  

エロスとは自分に欠けている美への欲求である。
愛とは欲望であり、欲望とは欠如である。
 

 というプラトンの言葉を引用するまでもなく、自分にできない暴走ができるような子供じみた・やっかいな存在だからこそ、女性として、本能的には不思議とひかれてしまうことも、女をしていると、なぜか時々あるわけなんです。
 青い時代の米田さんも、ちゃんとおモテになってきたように、「暴走」も、ある種の女にとっては、プラトンのいうところの美なんですよね、きっと。  

 私も年を重ね、子を産み、若いころに比べ、<老いていく肉体>という決定的な現実に左右されることも増えてきて。
 すると、不思議なことに、恋愛ざかりの若い時期よりももっと、「ああ、自分は女性という性なんだなぁ、現実」ということを、痛感させられるんです。
 生理は毎月あるし、それによってやっぱり、微妙に心の感じや物の感じ方も変わる。本当にお腹に子供が宿ってふくらんで、そういえば痛い思いして産み出したような気がするし、まさかのおっぱいも出た。目じりにしわが増えてきて、子供はすくすく大きくなっていって、とてもうれしいけれど、なぜかちょっぴり寂しい……(これは、女心ってより母心かな)。
 そんな風に、年を重ねるほど、単純に、冷静に自分という生物を、ありのまま見られ、感じられるようになる。  

 すると、自分に欠けている美や欲望も、よりシンプルにクッキリとわかるようになりますよね。だから、大人になってからの恋愛の方が、やっぱり深いところまでいけて面白おもしろい! と私は思うんです。
 読者のあなたも、アラフォーだから、生理あがっちゃったし、疲れるし、出会いも早々あるわけでもないし、もう恋愛とかいい! なんて勝手に店じまいしてしまうのは、本当にもったいないこと。女性のみなさん、せめて女のお店は、通年ちゃんとOPENしておきましょう!
 そして、米田さんのおっしゃられるように、プラトンのアカデミズムや前提が男色の世界であったとしたら。女という超現実を無視して、自分の世界を成立させられるのだから、氏も、男ではなく永遠の男の子だったのかしら? って思うかなぁ。  

♥ ♥ ♥

エロスとは自分に欠けている美への欲求である。
愛とは欲望であり、欲望とは欠如である。
 

 ところで、とても名残惜しいのですが、今回でこの連載、私の分は最後の原稿となります。
 なので、米田さんに聞かれていないのですが、今の私の男性の好みなど書いてみてもいいでしょうか?
 最近、個人的にいいなぁ、と思う男性は、身もふたもないんですが、やっぱり元気で丈夫な男の人。
 というのも、私、気はだいぶ強い方なんですが、家系的なものなのか生まれつき骨細ほねぼそらしいのです。産後計測してみたら、骨密度もそう高くなく。最近とった歯医者の子細しさいなレントゲンでさえ、そういわれてしまって…………(歯を支えている土台の骨にも、骨が厚い・薄いがあるそうなんです)。(おばあさんになるまで持つわけ?)ガーンと落ち込んでいました。なので、もともとそのケはありましたが、ますます骨太の人が好き! うらやましい!!
 とはいえ、言葉があまり通じないのはストレスになるし悲しいので、最低限、私よりは人間的に賢くて、かつ骨太がいいな、と。  

 で、先日出会ったロケバスの運転手さんが、やけに素敵な男性だったんです。
 日焼けされていてガッシリしていて眼光鋭く、見るからに、私の生きてきた世界にあまり登場したことのないタイプの男性で。興味シンシンで、お弁当の時間にどんどんインタビューしてしまったのですが、奥さんアリの三児の父!
 もともとは、トラック運転手さんだったそうで、やたら道に詳しく臨機応援。問題があればサッとタイヤも換えられる。さらには、恋愛結婚した女性の家に入ってくれ、と言われたので、「OK」とサクッと婿養子(笑)。休日のたび、自然の多い環境でお子さんたちをキャンプや魚釣りに連れ出してアウトドアサバイバル学習をさせているそうなんです。熱く「本当に強い人間を育てるための」教育論を語られていました。
(ん~ほんと応用きく、丈夫な大人の男って感じ。こんな人に育てられたら、子もどこでも生きていけそう!)
 私の生存本能が、本気で♡になりました。
 ほかのスタッフの女子たちも、「素敵ですね……ああいうダンナさん良いですね」と口をそろえていたので、今後の社会でモテるタイプかもしれません。臨機応変、サバイバル男子。  

 米田さんの今のタイプは、どんなイメージですか?
 往復書簡最後の質問がコレってどうかなぁ………とは思いつつ、プラトンによれば、  

エロスとは自分に欠けている美への欲求である。
愛とは欲望であり、欲望とは欠如である。
 

 だそうなので。
 そうなると、今求めるタイプを聞くことって、一番、その人と今! がわかる質問なのかもしれないですよね。  

 というわけで、米田さん、短い間でしたが、こうしてギリシャの偉大なる哲学者プラトンを介したやりとりをさせていただけて、人としても物書きとしても勉強になったし、深く刺激を受けました。ありがとうございます。
 またぜひどこかでご一緒していただけるよう、今後も、一人の女性として物書きとして、ご縁に素直に体当たりしつつ深まっていけたらな、と思います。  

 そして、毎回楽しみにしてくださっていた読者のみなさんも、ありがとうございました。また、いつかどこかで♡
 あなたも私も、せっかく女性に生まれたのだから………プラトン哲学も話のタネやあなたのハッピーのもとにするくらいの要領と塩梅あんばいで。これからも、女人生四季折々の恋や恋愛、素直に楽しんでゆきましょうね。ラブ。


蝶々Chocho

作家・エッセイスト。コピーライター兼銀座ホステス時代に綴っていたブログが人気を呼び、2002年『銀座小悪魔日記』(宙出版)でデビュー。『小悪魔な女になる方法』(大和出版)がベストセラーとなり、幅広い世代の女性から絶大な支持を得る。単なるモテ指南とは一線を画した、真に幸福で自由な人生を送るためのテクニックを、聖俗両面から愛をもって発信中。著書多数。
公式ブログ;chochoママしぼり
http://blog.goo.ne.jp/chochochan
会員サイト;chocho女神クラブ
https://chocho-u.com/megamiclub2018

 

米田郷之Satoshi Yoneda

1958年鳥取県出身。慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、出版社に勤務。以降、ずっと編集の仕事に携わるも、原稿を依頼されることが増え、音楽雑誌を中心に署名記事・評論を多数執筆。2017年、蝶々さんにお会いした少し後に取締役を退任。2018年2月に還暦を迎え、今後のことは未定。

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