双葉社web文芸マガジン[カラフル]

大人を自由にする!プラトン恋愛名言~蝶々×米田郷之 往復書簡~ / 蝶々 × 米田郷之・著

ヴィーナス、アドニス、クピド (アンニーバレ・カラッチ 1590)

1通目 蝶々より、米田郷之様へ

本質と存在の融合が最高度に実現されるのは、
まさに愛を通してのみである。

 米田さん、ご無沙汰しております。2018年もあっという間にもう2月。もうすぐ、St.バレンタインデーですね♡
 大人の男性も、チョコレートってやっぱりちょっと嬉しいものなのかしら。
 

 さて、<大人を自由にする!プラトン恋愛名言>、記念すべき最初のお便りは、まず私から!
「って、プラトンって何だっけ。そして、米田さんって誰!?」と思われる読者の方々もいらっしゃるかも。だから、私から少しご紹介させていただいていいでしょうか?

♥ ♥ ♥  プラトン(紀元前427年~紀元前347年)は、古代ギリシアの哲学者。かのソクラテスの弟子にして、アリストテレスの師。人間の「心の動き」について初めて考えようとした哲学者であり、作家であり、教育者。その思想は、西洋哲学の源流とされる。一方、恋愛について非常に突っ込んだ思索をしたほぼ唯一の哲学者でもあり、『饗宴きようえん』『パイドロス』はその代表作。
♥ ♥ ♥

 なんて。担当さんがくださった公式プロフィールをもっともらしく挙げるより、「プラトニック・ラブ」の語源となった超有名哲学者! といったほうが、多くの方にイメージしてもらえやすいのかな。
 誰でも一度はありますよね? セックスなど肉体的な接触をともなわない、心の恋愛「プラトニック・ラブ」。あれって、つまりは「プラトン的な恋愛」という意味だったんですね~。恥ずかしながら私、44歳、モノカキ歴15年にして、この企画をいただいて初めて知りました。勉強♡
 

 そして、私や米田さんの学生時代や、もしかしたら戦時中(!)より、現代のほうがプラトニック・ラブ率は高まっているのかも。年齢≒異性とつきあった経験のない年数、のほうが、男女とも激増しているというデータがあったり、ちょっと前なら草食男子だの腐女子、そしてアイドルおたくなど、以前なら考えられないようなネーミングでくくられる男女が激増していますもんね。私自身も、ここ10年以上、サイン会や講演会などで、多くの女性たちと毎年たくさん会わせてもらっているのですが、本当にそういうお悩みも少なくないのです! パッと見は何の問題もないような、可愛い大人女性たちが!
 そんな現代の恋愛事情について、米田さんも思うところ、ありますか?

 時代のせい、忙しい社会のせい、男が弱くなったせい、女が自立しすぎたせい、
文明やSNSが発達しすぎたために、人間男女の野性や本能が薄まっているせい……
 いろんな分析や原因があるでしょうし、全部複合的にからみあっているのでしょうが。
<生涯プラトニック・ラブ>って!
 率直に、さみしいことだな、と思うのです。おせっかいだけど、男も女も命がもったいなさすぎる。こんなにも、あなたも私もいま、女として生きているのに……誰かと触れ合わないの? 愛し合わないの? 何を待ってるの? 何を恐れているの? 時間はどんどん過ぎていくよ? って。

 おおげさでおせっかいでしょうか。でもプラトンも、やっぱりこう言っています。

 本質と存在の融合が最高度に実現されるのは、まさに愛を通してのみである。

 そう、誰かを愛したり愛し合うことでこそ、この世の真理と本当の自分が見えてくる。
 そのことに本能的に気づいていて、しかも、シンデレラタイムや何かのリミットを、いつもどこかで意識している女性たちのほうが、愛されたい、愛したい想いに真摯しんしだと思うんです。だから、プラトニックすぎる自分の恋愛人生に対する焦燥も年を重ねるほど高まり、逆に「どうせ私なんか」と、ひねくれたりこじらせた風にもなっちゃいがちで。
 私も、そんな女性たちのお悩みを聞いたあとほど、世の、仕事や自分のことだけに追われてる(ように見える)男子に、なんだか腹立ってくるんですね~。まだまだ若いのに、いやおじさんでも、男同士でつるんでばかりいたり、電車や街角で背中丸めて、スマホやゲーム、ビジネスばかりに没頭してるだなんて!
「本筋はずして代償行為にはげんでんじゃねーよ! 現役なら目についた女にあたってくだけまくってこい! そんなんじゃ、イザというとき男が立たない! 長いこと使ってなかったら、肉体の機能や感受性もさびちゃうよ!」って、無駄に目力めぢからを入れて<恋愛市場にでてかんかい>ビームを飛ばしたりします。    米田さん、怖いですか(笑)?

 しかも、日本の男女の恋愛シーンが少しでも健全に(?)活性化するよう、日々仕事相手のシングル男子たちや通りすがりの男子たちにまで、草の根活動もしちゃうんです。
 そういえば去年も、ハワイのホテル前で、血迷って私をナンパしてきたバンダナ男がいたので(友人の式のためにハワイにきた31歳だそう)、思わずハッパかけました。
「あのね、声かける相手から間違ってる。私、2歳の子の母。それより、今夜から毎晩ストリート・ファイトしてきなよ! 昨夜ゆうべもおとといの夜も、可愛い女の子同士歩いてる子がゾロゾロぞろぞろいっぱいいたよ。旅先で女の子もリラックス! あなたさえ勇気をだせば、知り合うチャンスいっぱいだよ」と。
 バンダナくんは、げ、俺、とんでもないオカンに声かけちゃったなぁ。。とすぐに青ざめ、しだいにうなだれてきて、最後のほうは「……おねえさん、俺、いけますかね?今時、忙しくてもうからない部品づくりの自営なんですけど、ついてきてくれる女の子いるかなぁ」。ハワイの突き抜けるような青空のもと、俺で恋愛大丈夫かな相談になっていました。
「大丈夫。けっこうかっこいいし。飲みかごはんくらいつきあってくれる子いるって。1回で決めようとしない! 男は数打ってかないと! くだけてもくだけても立ち上がれ! 傷はハワイの海で泳いで寝れば治る!」

 もう、むちゃくちゃ言っときました。彼がその後どうなったかは知らないですけど、ハワイ旅行中、誰かに声くらいはかけたんじゃないかな。私の親せきや友人にも、旅先のナンパや出会いから結婚して今も幸せに暮らしていたり、たくさんの子供に恵まれてるご夫婦もいますしね。米田さんも旅先や酔った勢いなどで、女性をナンパしたことありますか?

 リアルな恋を本当に求めているのなら、行動は早いほうがいいし、チャンスは多いほうがいいと思いません? たとえ99回失敗しても、1回本当にラブラブ♡になれたら、傷ついた99回も必ずやがて色あせた過去になる。
 恋がしづらい世の中だとか再生が厳しい社会だとかいうけれど、実際そうなのかもしれないけれど。だからって、それに呑まれて、自分が大恋愛や本当にしたいと思ってるコトを成し遂げずに生きるのか?と。
 思いきりつれなかった堀北真希さんと、ストーカーばりの猛攻撃で見事ご結婚された俳優の山本耕史さんみたいに、人生ってそれくらい本気の覚悟であたってくと、難しいと思われていた厚い扉が開く(こともある!)気がするんだけどなぁ。。

 それに、それくらい必死に、触れたい、関わりたい、欲しい、得たい! と命がけくらいに真剣になっている時こそが、本当に生きてる時間、みたいに私は感じるのです。それこそ、いつか死んで肉体が朽ち果てたとしても、自分の永久の魂にキチンと刻まれて消えない、ぶかっこうでもいとおしい時間、というか。
 憧れのアイドルや同性同士の楽しみ、そしてプラトニック・ラブもいいけれど、肉体の動きを伴わない概念や妄想や二次元やSNSは、どこまで突き詰めても、好きな人とのキスやハグやセックスの、あのめくるめくような喜びや安堵感、ぬくもりにはたどりつけないし。そして子供も生まれない。

 私は自著でも「遠くの王子より近くの団子だんご」とデビュー当時から言ってるくらい、女の子らしい妄想(?)やドリーミーなところがない現実派・現場主義なんです。恋愛においても、たぶん人生全般においても、自らの肉体感覚を伴わない知識や体験に、価値をあまり置いてこなかった。学校の勉強も、(何のためにするんだろう~?親や先生を満足させるため?)意味がわからなかったんです。アンポンタンでしたね。今は、お料理でも語学でも恋愛でも(?)なんでも基礎や方法論は大事だな~と学ぶ意味もわかりますけど。
 10代20代くらいまでは、それより、自分の心のアンテナがビビッときたりときめくままに、恋や、様々な世界への冒険や読書やおしゃれをしていたかった。

 でもね、恋愛に限らず、さまざま自分が気になることを体当たりで体験してきたからこそ、今、プラトンだったり、世の歴史書や大人の書籍を読むととても面白いんです。
 なるほどね、このことを言っていたのか! と深く納得したり、自分の中でとっちらかっていたり忘れていた体験たちが、もう一段深いところでつながり、整理され、新たに熟成された知識になる感覚があるんですね。読書も勉強も、もしかしたら大人になるほど、血肉と響いたり溶け合う喜びがあって、味わい深いことなのかしら。もしかしたら恋愛もそうでしょうか? どうですか、米田さん!
 

 さて、最後まで引っ張っちゃいましたが、そろそろ、米田さんのことなどを。
 とはいえ、私は米田さんと会ったことは一度きり。去年の夏、知人編集者の紹介で、帝国ホテルのランデブー・ラウンジでお目にかかりました。
 初対面の印象ですか? 米田さんにも思わず直接お伝えしてしまいましたが、「あれ? 普通っぽいのに、オトナなのに、いたんでいない。ちゃんと綺麗な大人の男性だ。東京にもいた」と驚きました。
 一応、男女ともあらゆるタイプの方々には人一倍会ってきているはずの私。なぜそんなに驚いてしまったか。まず私、米田さんのことを女性か男性かも存じ上げないまま、その席に向かっていたのです(私はどんな方でも、相手に手垢てあかのついた先入観を持ちたくないので、事前にあまり調べたり詮索せんさくしたりしない主義です)。某出版社の偉い人だよ、とだけ知人に聞いていて。
 その場に行って対面してみて、あ、男の人だったの、しかも、おいくつでしょう? 責任抱えてるはずの大人男子なのに、なんでそんなに雰囲気やオーラや表情が澄んでいらっしゃる?
 さまざまな意外性を感じたんですよね。
 ついでに余計なことを言うと、帝国ホテルのラウンジでは(銀座クラブ時代からも長年使わせてもらっていますが)、あまり見たことがないタイプの大人の男性にも思えたんです。ちなみに、伝統がありゴージャスな帝国ホテルの薬局のレジ前には、赤まむしドリンクが並べられています。東京風にさりげなく、しかし推しアイテム☆的に。

 その後、仕事の話があらかた済んだあとの雑談で、米田さんが、就職の決まられた娘さんのお話などされはじめて、またびっくり!「えー、ストレート男子、しかもお父さんだったんですか!?」失礼です。が、それも直接お伝えしちゃった。
 あまりに米田さんの雰囲気の粒子が細やかで、口調も優しくて機微も細やか、フェミニンにさえ感じられたので、無意識に、うーん、もしやゲイなのか、そうか、それでね♪、と心の中で勝手に結論付けていたんでしょう。

「私、銀座クラブにもどっぷりしてたし、男の人けっこう詳しいんだよね、見た目ですぐわかる。このタイプはこうでこう」と自分でもすっかり男性プロファイリングには自信をもっていたので、米田さんには久々に(本当に)予想を裏切られ、私としては、新鮮で楽しい出会いと時間だったのです。
 東京の出版社にいながら、ありがちな業界風になるでもなく、東京の街でそこらじゅうで見かけるような倦怠けんたい灰色オーラやブヨっとおじさんになられるでもなく、綺麗なお肌と柔和にゆうわな表情で、お仕事のこと、出版への想いや情熱、ご家庭や娘さんのことを、すべて丁寧ていねいに折り目正しく、語られる。公私の責任を持ちずっと継続しているからって、汚れたりくたびれたり重い男にならないんだなぁ。ああそうか、芯の強い方なんだ、と思いました。どんな恋愛やご経験を経てきて、今の米田さんになられたんでしょうね。

 ――そんな米田さんとのWEB連載<大人を自由にする!プラトン恋愛名言>。出版界の大先輩であり、東京で働く大人であり、お年頃の女性の父であり、一人の男性でもある米田さんと私・蝶々との、恋愛&プラトンにまつわる往復書簡。
 何が出るかな? 2018年は、大人こそ恋愛しましょう~!


バックナンバー

蝶々Chocho

作家・エッセイスト。コピーライター兼銀座ホステス時代に綴っていたブログが人気を呼び、2002年『銀座小悪魔日記』(宙出版)でデビュー。『小悪魔な女になる方法』(大和出版)がベストセラーとなり、幅広い世代の女性から絶大な支持を得る。単なるモテ指南とは一線を画した、真に幸福で自由な人生を送るためのテクニックを、聖俗両面から愛をもって発信中。著書多数。
公式ブログ;chochoママしぼり
http://blog.goo.ne.jp/chochochan
会員サイト;chocho女神クラブ
https://chocho-u.com/megamiclub2018

 

米田郷之Satoshi Yoneda

1958年鳥取県出身。慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、出版社に勤務。以降、ずっと編集の仕事に携わるも、原稿を依頼されることが増え、音楽雑誌を中心に署名記事・評論を多数執筆。2017年、蝶々さんにお会いした少し後に取締役を退任。2018年2月に還暦を迎え、今後のことは未定。

  • 双葉社
  • 小説推理
pagetop