鼻腔をくすぐる香ばしい匂い。吸い寄せられるように向かった先は、小さな商店の屋外に設けられたハンバーガー屋だった。
 バーベキューグリルの上で焼かれたボリュームたっぷりのパテが、ジューッと音を立てる。ああ、たまらん!
 久しぶりに、ハワイを訪れた。
 ハワイに来たら、絶対に食べたいもののひとつがハンバーガー。有名店はもちろんだけれど、名もないようなローカルな店で、意外な逸品に出会ったりするから楽しい。その昔、マウイ島の田舎のデコボコ1本道をドライブしていたところ、ポツンとたたずむトレーラーハウスのハンバーガー屋に出くわしたことがある。
「うちのハンバーガーは、マクドナルドやそこらの店とは違うからね!」
 そういって店の太っちょのオバサンがつくってくれた、ハンバーガーの美味しかったこと! 以来、ローカルな味を探すのが、ハワイの旅の楽しみのひとつになった。
 今回吸い寄せられたオアフ島・カイルアのハンバーガー屋もビンゴ! シンプルなだけに、肉の香ばしさとジューシーさが際立つ秀逸な味わいだった。
 そしてもうひとつ、外せないのがハワイの伝統料理。オアフ島を訪れたら、ホノルルにある有名なハワイアンフードの店に足を運ぶのがお約束。ここの味なくしては、ワタシのハワイは始まらないのだ!
 小ぢんまりとした食堂のようなこの店で食べられるのは、ポイ、ポケ(ポキ)、ロミロミサーモン、ラウラウ、カルアピッグなどなど。かわいらしい名前がずらりと並ぶが、いずれもネイティブ・ハワイアンの食文化を伝える伝統食だ。
 例えば、ポイは蒸したタロイモをペースト状にして発酵させたもの。かつては、主食として食されていたという。カルアピッグは、丸ごとの豚をティリーフという葉で包み、土中につくられたイムというかまどで蒸し焼きにしたもの。結婚式やお祝いの際につくられる。いずれも素材を生かしたシンプルな味付けのものが多く、しみじみほのぼのしてしまう。

 さて、日本もいよいよ夏本番! 今回は、おうちでハワイしてしまう企画。盛夏を満喫しましょう。
 まず、再現してみたのはポケ(ポキ)。マグロ(アヒ)やタコのぶつ切りに玉ねぎのみじん切りや海藻など加え、ハワイアンソルト(天然塩)などで味付けしたものだ。よく“ハワイ風の刺身”と紹介されているように、日本人好みの味だと思う。今回は、安めのキハダマグロを使い、しょう油テイストに仕上げてみた。
 そしてもうひと品が、フレンチテイストに独自にアレンジしてみたポケ。こうなるともうポケとはいえないかもしれない。けれど、そもそもハワイ料理には各国の調理法が採り入れられ、さらにはそれらがミックスしたものも多い。だから、ハワイ料理を厳密に定義するのは難しいのだとか。
 というわけで、細かいことは気にせず、こちらのフレンチポケは、白ワインと一緒に召し上がれ! 爽やかな味わいなので、暑いこの時期にもおすすめです。

【つくり方】
■ポケ(ポキ)
(1) 玉ねぎをみじん切りにして水にさらし、水気を切っておく。
(2) 食べやすい大きさに切ったマグロ、(1)の玉ねぎ、お好みの海藻、塩、レモン汁、ニンニクしょう油、ゴマ油少々、白ゴマ、お好みでチリペッパーや赤唐辛子を合わせる。
(3) 冷蔵庫で冷やし、万能ねぎを散らして出来上がり。
■フレンチポケ
(1) 魚を粗めにたたく。
(2) ボウルに(1)、みじん切りにしたエストラゴン、ケイパー、オリーブ、オリーブオイル、レモン汁、塩、コショウを入れて混ぜ合わせる。
※今回はイサキを使用。魚はお好みで。アジなどでも美味しいですよ。


 さて、お次はロミロミサーモン(ロミサーモン)。これまた、ハワイの代表的な料理です。サーモンとトマト、玉ねぎなどを和えたさっぱりとした味わいだ。
 和えるだけの超カンタン料理なので、ささっとつくって出せば“デキる”感が演出できるかも。キュウリやアボカドを加えても美味。
 ところで、ロミとはハワイ語で「揉む」の意。お馴染みのロミロミ(マッサージ)は、ハワイに古くから伝わる癒しの技術で、自然のエネルギーがセラピストに宿り、それが受け手に伝わり癒していくという概念だ。かつては、王族だけしか受けることが許されず、その手法もまた、長い間限られた家系内でのみ口承されてきたという。ロミロミは、神聖で奥深い技術なのである。
 選ばれし手は持っていなくても、気持ちを込めてロミロミすれば、料理も一層おいしくなるかも。そう、料理はココロよっ!

【つくり方】
■ロミロミサーモン
(1) 刺身用サーモン(またはスモークサーモン)、トマト、玉ねぎを1センチ角に切る。
(2) (1)をボウルに入れ、塩、コショウ、レモン汁、お好みでチリペッパーや赤唐辛子を加えて和える。
(3) 冷やして、万能ねぎを散らす。

 今回のハワイで、初めて口にした料理がある。名前は不明。店のお母さんが、「塩豚、セリ、おいしい」と日本語で勧めてくれたものだ。
 運ばれてきたのは、じっくり煮込んだ豚肉にたっぷりのクレソンがのった料理。かなりダイナミックで、豪快なひと皿だ。が、ひと口食べてビックリ。おそらく塩だけのシンプルな味付けにもかかわらず、極上の味わいなのだ。ふるふるの豚バラ肉に、濃厚なスープ。ほのかな苦みがあるクレソンが、実によく合う。これは、早速つくらねば!
 同じく豚バラ肉を使って、もうひと品。こちらもまたハワイ料理の代表格、ラウラウに挑戦してみた。
 ラウラウは、豚肉(魚を使うことも)をタロの葉で包み、さらにティリーフでくるんで蒸した料理で、日本の家庭でつくるのは難しそうだ。と、弱気になったものの、ダメもとでつくってみたら、意外とあっさり出来ちゃいました。
 タロの葉は、ホウレンソウで代用。ティリーフの代わりに、ちまきやおにぎりを包む竹皮を使った。
 もちろん、本場のラウラウと同じ味、とはいきません。でも、かなりハワイの香りがすると思うな。少なくとも、食べたことがないヤツは騙せそうだ。ふふふっ。

【つくり方】
■豚肉とセリ
(1) 鍋に豚バラ肉、水、日本酒、塩、あればネギの青い部分、赤唐辛子を入れ、弱火で肉が柔らかくなるまでコトコト煮る。
(2) 味を見て、塩を加える。
(3) 食べやすい大きさに切った豚肉とスープを器に盛り、クレソンをのせる。
■おうち酒場流ラウラウ
(1) 豚バラ肉を適当な大きさに切って塩をする。
(2) 竹皮2枚を中心部分を少し重ねるようにして広げる。
(3) (2)の上にホウレンソウの葉(茎は切る)を敷き、(1)の肉をのせる。
(4) 肉の上、横にもホウレンソウをのせ、肉全体をホウレンソウで覆い尽くすようにする。
(5) 竹皮をしっかり巻く。
(6) 別の竹皮を90度の角度から巻く(開いた両脇を包むように)。
(7) 竹串で端をとめる。
(8) 1時間程度、じっくり蒸し上げる。

 ハワイのローカル料理はシンプルなものが多い、と書いたけれど、これほど素朴なものはあるまい! その名は、チキンロングライス。
 ロングライスとは春雨のことで、塩で味付けしただけのチキンスープに、このロングライスを加えただけという驚くほどのシンプルさ。麺にスープをたっぷり吸わせるので、スープヌードルとはひと味違った味わいに。ご飯にのせて食べるのも、ハワイ風かも。
 淡く優しい味なので、二日酔いの日にもおすすめ。ってワタシって、呑むための料理と二日酔いのための料理ばっかりつくってる気がする。ま、ある意味、自分に対して至れり尽くせり。

【つくり方】
■チキンロングライス
(1) 骨付きの鶏肉、水、日本酒、スライスしたショウガ、塩、赤唐辛子を入れて、弱火でコトコト。チキンスープをつくる(顆粒の鶏ガラスープでも)。
(2) (1)の鶏肉を取り出し、骨を外して細かく裂く。
(3) スープの味を見て塩を加え、春雨(マロニー)を加えて、少し煮込む。
(4) 器に盛り、(2)の鶏肉、刻んだ万能ネギをトッピングする。


 


福田素子(ふくだ・もとこ)
国内外の旅行記事、ガイドブック、エッセイなどを手がけるフリーライター。大の食いしん坊で旅行が好き、かつ大酒飲み。









 
 
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