おしゃ修行 第37回





 モテファッションは永遠の命題。男性は視覚に影響されやすい生き物だと言われています。しかし私に関して言えば、モテファッションとはずっと無縁でした。女子校で男性の目を意識してこなかったからでしょうか、20代の時は、パンツにリュックといった格好が多くて、アクセサリーの意味もわかりませんでした。また美大出身のプライドが邪魔をして、きれいめの赤文字雑誌のファッションはしたくないと思い、今思うと黒歴史的な不思議な格好をしていたのですが(銀色のパンツとか、象柄の服とか)、初対面の人に「不思議ちゃん」とバカにされたり、一抹の生きづらさを禁じ得ませんでした。30代にさしかかった頃から、攻撃的な精神が軟化し、スカートやワンピースが増えて、やっとフェミニンに目覚めてきたという次第です。ファッションには潜在的な力があり、それまで仕事関係の男性にもおざなりに扱われていたのが、スカートなど女性らしい服装だと若干ていねいに扱われるような気がしました。
 もはや、モテとか気にしていられる年齢感ではないのですが、最低限の、人間として扱われるファッションを心がけたいと思っています。いい大人になってから、モテファッションと同時に萎えファッションというものがあるのに気付きました。前に男性に「キュロットは詐欺」と言われたことがあり、スカートと思わせて実は二股にわかれたパンツというのがそんなに不評を買っていたとは、と意表を突かれましたが、他にも萎えファッションはたくさんあるようです。
 例えば、五本指ソックス。冷え性としてはたまに家ではいて癒されているのですが、外ではちょっと着用ははばかられます。自分で見てもゾクっとするくらいです。ダサさが臨界点を超えることにより、マニア心を刺激しそうな気もしますが、一般男性には受けがいまいちです。
 また、アニマル柄のファッションもセクシーで良いかと思いきや、実は男性受けが悪いようです。遊び人やビッチのイメージを与えてしまうのでしょうか。個人的にはヒョウ柄やゼブラ柄が、別の配色でさり気ない感じにプリントされている服が好きで、最近もゼブラ柄のニットを愛用しているのですが、言われてみればその間に仕事で会った男性がひき気味だったような気も。ちなみにZOZOTOWNの調査によると「日本一ヒョウ柄アイテムを買っている都道府県」の1位はなんと埼玉県で、埼玉出身として妙に納得してしまいました。アニマル柄は、強くなった気分が得られるという心理効果があるようです。その威圧感が保守的な男性を萎えさせるのでしょう。威圧感でいうと、やたらモードな服も男性を萎えさせる危険が。アグレッシブにモードを追求しすぎた女性には孤独の影がつきまといます。
 サロペットやムートンブーツ、柄タイツなど女性の間で流行っていても男性には不人気のアイテムがあります。子どもっぽくなったり、スタイルが悪く見えてしまいがちな、難易度の高いアイテムです。
 そして、もう流行は終息してしまいましたが(男性の念によって?)、長い間不評が噴出していたのが、レギンスやトレンカです。ちょっと前に久しぶりにトレンカの人を見かけましたが、流行が終わってから冷静になって見ると、中途半端なデザインが意味不明です。トレンカは、男性には野球部を連想させるそうです。レギンスも、脚の露出度が減る上に、スタイルが悪く見えるとか、夏は暑苦しいとかで、「レギンスは男の敵」という意見までありました。女性としては黒いレギンスの引き締め効果で脚が細く見えると思い込んでいましたが、男性目線だと微妙だったようです。私としてはレギンスをはくことで夏場、脚に塗る日焼け止めを節約しようというケチくさい思惑があったことを告白&反省いたします。やはり男性的には生脚がマストなんですね。
 などの例から考えると、ここ最近女性に大人気で定番化しつつあるガウチョパンツは、やはり男性受けは……もちろん悪いですよね。でも、女性としては、ガウチョは安心感があるし、仕事ができる都会人になった気分で颯爽と歩けるのですが……。男受けファッションについて考えると、男女の間に流れる川の存在を感じます。


 

辛酸なめ子
(しんさん・なめこ)

漫画家、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す。著書に『女子の国はいつも内戦 (14歳の世渡り術) 』(河出書房新社)『皇室へのソボクな疑問』(竹田恒泰氏と共著/扶桑社)『アイドル処世術』(コアマガジン)『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)など多数。










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